第38話:チカラの伸びしろ
申し訳ありません。
予約していた日付を間違えてみたようで、5日間ほど投稿できていませんでした…。
倉庫での一件を終え、翌朝、すぐにリリアとミアを集めた。
「リリア、ミア。二人にお願いしたいことがある」
俺は、昨夜戦ったカインという少年と、彼が口にした「病気の妹」について話した。
「あの闇ギルドと、その妹の病気…何か、きな臭いものを感じる。俺は、明日から騎士団の修練場に通うことになった。その間、二人には、このカインという少年と、彼の妹について、詳しく調べてほしい」
「分かりました。街の噂や、ギルドの情報網を使ってみましょう」
「わたしも、がんばる!」
リリアとミアは、俺の真剣な様子から、ただならぬ事情を察し、強く頷いてくれた。
◇
その後、俺は約束通り、王都の中枢に位置する騎士団の修練場を訪れた。
石造りの広大な敷地では、屈強な騎士たちが、汗を流し、剣を打ち合う、鋼の音と熱気が満ちている。
「来たか、ヴァル」
修練場の中心で、木剣を振っていたアレスが、俺に気づいて笑いかけた。
しかし、その歓迎ムードを、鋭い視線が切り裂いた。
「…団長。その男が、噂の…」
「ああ。紹介しよう。俺が直々に鍛えることにした、ヴァルだ。こっちは、副団長のアイゼン。騎士団一の堅物だが、剣の腕は本物だ」
副団長のアイゼンは、俺に向かって、露骨な敵意を込めて言った。
「どこの馬の骨とも知れぬ男に、団長が直々に稽古をつけるなど、騎士団の沽券に関わりますぞ」
「まあ、そう言うな、アイゼン」
さらに、修練場の隅で自主訓練をしていた、一人の若い騎士が、嫉妬と羨望の入り混じった
目で、こちらを睨みつけていた。
憧れの騎士団長に、ぽっと出の男が目をかけられているのが、面白くないのだろう。
アレスは、そんな周囲の空気を意にも介さず、俺に木剣を渡した。
「まずは、副団長がお前の力を見る。手合わせ、願えるな」
「…お手柔らかに」
アイゼンが、隙のない構えを取る。
【個体名:アイゼン】【レベル:73】
【称号:王都の守護剣】
(レベル73…! とんでもない実力者だ)
俺も、覚束ない構えで剣を握る。
次の瞬間、アイゼンの姿が消えた。
いや、違う。俺の反応速度を上回る、凄まじい踏み込みだ。
「――甘い!」
鋭い叱咤と共に、木剣が俺の胴を薙ぐ。
俺は、咄嗟に腕でガードするが、凄まじい衝撃に体ごと吹き飛ばされそうになる。
(これが、技術の差か…!)
レベル差はあれど、ステータスでは、俺が上のはずだ。
だが、アイゼンの剣は、俺の力の流れを完璧に見切り、最も効率的な一点に、その全ての技術を叩き込んでくる。
俺が力任せに振るう剣は、柳に風と受け流され、防御はことごとく崩される。
赤子の手をひねるように、俺は完全に、アイゼンに弄ばれていていた。
だが、俺は、ただやられていたわけではない。
この屈辱的な状況下で、俺の脳が、かつてないほど高速で回転を始めた。
《熟練度が一定に達しました。スキル《思考加速(Lv.1)》を獲得しました》
アイゼンの動き、筋肉の収縮、重心移動、剣の軌道、呼吸のリズム…その全てのデータが、スローモーションのように、俺の脳内にインプットされ、解析されていく。
最初は手も足も出なかった俺が、数合、十数合と打ち合ううちに、徐々に、彼の動きに「対応」し始めていた。
「なっ…!?」
アイゼンが、驚愕の声を上げる。
そして、彼が必殺のタイミングで放ったであろう、渾身の一撃。
それを、俺は、寸分違わぬ、完璧な剣技で見様見真似に受け流し、カウンターで彼の木剣を弾き飛ばした。
カラン、と。
木剣が、地面に落ちる乾いた音が、静まり返った修練場に響き渡った。
《熟練度が一定に達しました。スキル《剣術(Lv.1)》を獲得しました》
「…嘘、だろ…」
アイゼンは、自身の剣技が、わずか数分のうちに完全に模倣されたという、信じがたい事実に、呆然と立ち尽くしていた。若手の騎士も、信じられないものを見る目で、口を開けている。
アレスは「こりゃぁ、とんでもない男を拾ってしまった」と、腹を抱えて笑っている。
「今日は、ここまでだ」
アレスは、そう言うと、俺を修練場の隅にある休憩所へと連れて行った。
「どうだ、ヴァル。分かったか? お前の力は、いわば、ただの巨大な鉄塊だ。それだけでは、ただの鈍器に過ぎん。だが、技術という『炉』で熱し、知識という『槌』で叩けば、それは、どんな名剣よりも鋭い刃となる」
俺は、彼の言葉を、ただ黙って聞いていた。
「…アレスさん。今日はありがとうございます。自分に足りないものが分かった気がします。」
「いや、いいんだ。こちらこそ改めて、礼を言わないとな。」
アレスは背筋を正して、礼をする。
「カインを救ってくれてありがとう。」
「…カイン。あの狼獣人とはどんな関係なんですか?」
俺の問いに、アレスの表情が、わずかに曇った。
「…ああ。あいつは、元々、騎士団への入団を希望していた、誰よりも正義感の強い、心優しい若者だった」
アレスは、悔しそうに語り始めた。
亜人であるというだけで、貴族たちの反対に遭い、騎士への道を閉ざされたこと。
そして、追い打ちをかけるように、最愛の妹サラが、原因不明の不治の病に侵され、高額な治療費のために、やむなく『第七の鐘』に身を堕としていったこと。
「俺は、あいつを救ってやれなかった。騎士団長という立場にありながら、この国の歪みから、一人の少年の未来すら守ってやれなかったのだ。それが、今でも、俺の心残りだ」
アレスの、静かな怒りと、深い後悔。
俺は、彼の話を聞き、全てのピースが繋がった気がした。
◇
その日の夜。宿屋に戻った俺の元に、リリアが調査結果を持って、飛び込んできた。
「ヴァル、分かったわ! あのカインという子の妹さん、サラちゃんの病気のこと…!」
彼女の顔は、青ざめていた。
「あれは、普通の病気じゃない。極めて巧妙に隠蔽された、悪質な呪いの類よ。おそらく、回復魔法を阻害し、魂そのものをゆっくりと蝕んでいくタイプの…!」
『第七の鐘』、亜人差別、そして、原因不明の呪い。
全ての情報が、一つの、悍ましい結論へと収束していく。
俺は、カインとサラを巡る、教会の、そしてこの王国の、黒い陰謀を確信し、静かに拳を握りしめた。
◇
とある一室。
「おい、準備はできたか?」
「…ああ、任せておけ」
「これで私の昇進間違いなしだな。」
カシャ、カタカタカタ――。
無数の歯車を高速で回転する音に、気づく者は誰もいなかった。
ヴァルのステータスを表示しておきます。
________________________________________
【個体名】ヴァル
【種族】ヴルム・ドラコ(竜蟲)
【レベル】62
【称号】アルトハイムの英雄
【HP】 5750 / 5750
【MP】 4980 / 4980
【攻撃力】3180
【防御力】3350
【素早さ】2430
【魔力】2810
固有スキル:
《コード・アナライザー》
《古代竜の叡智》
-竜の咆哮
-インフェルノ・テンペスト
-竜牙の剣
-スケイル・アーマー
固有特性:《竜の因子》
スキル:悪食(Lv.9)、栄養吸収(Lv.1)、粘糸(Lv.1)、剣術(Lv.1) New!、魔力感知(Lv.6)、魔力操作(Lv.6)、生態探知(Lv.1)、火魔法(Lv.MAX)、風魔法(Lv.4)、幻術(Lv.1)、隠密(Lv.8)、超再生(Lv.1) 、俊敏強化(Lv.3)、物理抵抗(Lv.2)、魔法抵抗(Lv.1)、麻痺耐性(Lv.3)、酸耐性(Lv.3)、火炎耐性(Lv.2)、毒無効、電撃耐性(Lv.1)、ステータス偽装(Lv.1)、空中歩行(Lv.1)、滑空(Lv.1)、遠目(Lv.2) 、思考加速(Lv.1)New!、言語理解
________________________________________
お読みいただき、本当にありがとうございましたm(_ _)m
今後の展開に向けて、皆さまの応援が何よりの励みになります(>_<)
少しでも「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ぜひ**【ブックマーク】や【評価(★〜)】、【リアクション】、そして【感想】**で応援していただけると、作者が泣いて喜びます(そして執筆が捗ります)(#^.^#)
誤字脱字報告も大歓迎です。
皆さまの声が、皆さまが考えてる100万倍、私の創作活動の大きな原動力になります。
次回更新も頑張りますので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです(*^ω^*)




