表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/47

第36話:スラム街の狂犬

いつも読んでくださりありがとうございます!


最新話をお届けします。

楽しんでいただけると嬉しいです。


明日も更新予定です(*^^*)


それでは、どうぞ!




騎士団長アレス・ウォーカーとの、冷や汗の出るような出会いを経て、俺はリリアたちと合流した。


「どうでしたか、ヴァル? 何か分かりましたか?」


昼間、俺は一人で王都の影――スラム街の入り口まで足を運んでいた。


そこは、光の都の美しさが嘘のような、淀んだ空気が支配する場所だった。


だが、昼間のスラムは、ただ貧しい人々が息を潜めて生きているだけで、その奥深くまでは窺い知ることができなかった。本当の顔は、夜に現れるはずだ。


「…いや、とんでもない化け物がいるってことくらいだな」

「そうですか…。こちらも、ギルドで素材の換金と宿を紹介してもらいました。まずは、そこへ向かいましょう」


リリアが案内してくれたのは、『白鹿亭』という、清潔で落ち着いた雰囲気の宿だった。


冒険者御用達というよりは、旅の商人や貴族も利用するような、少し格式の高い場所らしい。


「あなたたちの実力や魔力量を考えれば、これくらいの宿の方が、余計なトラブルに巻き込まれずに済むでしょう」


リリアの気遣いが、ありがたかった。


部屋に入ると、ミアとギアは、キラキラした市場の装飾品や、珍しいお菓子に夢中だ。

リリアは、王都にしかないという、巨大な図書館の場所を調べている。


俺は、そんな和やかな雰囲気の中、一人、意識を研ぎ澄ませていた。


この街の、隅々まで張り巡らされた魔力循環システム。

その流れは、例外なく、街の中心にそびえ立つ、白亜の大聖堂へと向かっている。

(全ての道は、ローマに通ず、か。この街の欺瞞の答えも、あそこにあると考えて間違いないだろうな)


日が暮れ、俺たちは、情報収集も兼ねて夕食のために賑やかな大衆食堂に入った。


そこで、隣のテーブルに座った商人たちの会話が、俺の耳に留まった。


「おい、聞いたか? また、スラムで亜人の子供が攫われたらしいぜ」

「またか…。『第七のセブンス・ベル』の連中の仕業だろうな。衛兵も騎士団も、あの地区には手を出さねえからな」


「教会の鐘が六回鳴るこの都で、決して鳴ることのない七つ目の鐘、か…。気味が悪いぜ」


『第七のセブンス・ベル』。

その不吉な名に、俺は心をかすめるのだった。




その夜。

リリアとミアが宿屋で眠りについたのを確認すると、俺はギアを肩に乗せ、音もなく窓から抜け出した。


「マスター、これからどちらへ?」

「決まってるだろ。昼間見た、あの影の街の、本当の姿を見にさ」


俺は《隠密》スキルで気配を完全に消し、建物の屋根から屋根へと、まるで黒猫のように飛び移っていく。


目指すは、スラム街の中心部。

酒場で聞いた噂によれば、『第七のセブンス・ベル』と呼ばれる闇ギルドが、この一帯を牛耳っているらしい。


夜のスラムは、昼間とは全く違う貌を見せていた。

路地裏では、違法な薬物の取引が行われ、薄汚れた格好の男たちが、博打に興じている。

そして、時折、屈強な見張りが、鋭い視線で通りを監視していた。


俺は、彼らの会話に聞き耳を立て、情報を集める。


「おい、今日の『荷』はもう届いたのか?」

「ああ。西の倉庫に運ばれたらしいぜ。また、亜人のガキばかりだそうだ」

「ハッ、教会の旦那方も、物好きだよな。あんなガキどもを集めて、何に使うんだか」


(荷…? 亜人の子供…?)

きな臭い会話に、俺は眉をひそめた。


人身売買か、あるいは、もっと別の何かか。

俺は、彼らが話していた「西の倉庫」へと、慎重に移動を開始した。


倉庫街は、不気味なほど静まり返っていた。


だが、ひときわ大きな倉庫の一つだけ、中から微かな光と、複数の気配が漏れ出ている。


俺は、倉庫の屋根にある天窓から、中の様子を窺った。

倉庫の中には、いくつもの檻が並べられ、そこには、怯えた表情の、様々な種族の亜人の子供たちが閉じ込められていた。


そして、その檻の前で、黒いローブを着た男たちが、何かの品定めをしている。

(これが、『第七の鐘』の仕事か…!)


俺は、肩の上のギアに、小さな声で囁いた。

「ギア、ここからは別行動だ。『第七の鐘』と、教会の繋がりを調べろ。どんな些細な情報でもいい。奴らの金の流れ、人の流れ…全てだ」


「了解しました、マスター。情報収集に向かいます」




俺が、潜入の機会を窺っていると、倉庫の扉が開き、一人の少年が入ってきた。

歳の頃は、15、6といったところか。


着古した、サイズの合わない革のベスト。その顔には、泥と、そして、このスラムで生き抜くための、年不相応な険しさが浮かんでいる。


しかし、その琥珀こはく色の瞳の奥には、隠しきれない優しさと、悲しみの色が揺らめいていた。


狼の耳と、ふさふさとした尻尾。狼の獣人だ。


「おい、カイン! お前、遅かったじゃねえか!」

ローブの男の一人が、少年に向かって怒鳴る。


「…すまない。妹の様子を見てきた」


「チッ、あの病人のことなんざ、どうでもいいだろうが。それより、見張りはどうした? 今日は大事な『商品』の検分なんだ。ネズミ一匹、入れるんじゃねえぞ」


「…分かってる」


カインと呼ばれた少年は、悔しそうに唇を噛むと、何も言い返さずに、倉庫の入り口で見張りに立った。


彼は、この非道な行いに加担している。だが、その瞳は、明らかに苦痛に満ちていた。


(病気の妹…? そのために、こんな仕事をしているのか…?)


俺が、カインという少年に気を取られていた、その瞬間だった。

「――そこにいるのは、誰だ」


カインが、俺が潜む屋根の天窓を、鋭い琥珀色の瞳で、正確に睨みつけてきた。

しまった。気配は完全に消していたはずだ。


(いや、違う。こいつ、俺の魔力に反応したんじゃない。獣人ならではの、嗅覚か、あるいは聴覚か…!)


俺は、隠れている意味がないと悟り、音もなく倉庫の中に飛び降りた。

突然現れた俺に、黒いローブの男たちが、一斉に武器を構える。


「てめえ、何者だ…!」

「…俺は、ここの『荷』を、解放しに来た」


俺がそう言うと、ローブの男たちは鼻で笑った。


「ハッ、英雄気取りか? やっちまえ、カイン!」

カインは、一瞬、躊躇を見せた。

だが、すぐにその表情を消し、鋭い爪を構えて俺の前に立ちはだかった。


「…悪いが、仕事なんでな。ここを通すわけにはいかねえ」

その全身から放たれる闘気は、ただの使いっ走りとは思えない、研ぎ澄まされた刃物のような鋭さがあった。


《コード・アナライザー》が、その正体を弾き出す。

【個体名:カイン】【種族:狼獣人】

【レベル:25】【称号:スラムの狂犬】


「どけ。お前と戦う理由はない」

「俺には、あるぜ。あんたを殺せば、妹の薬が手に入るんでな…!」


次の瞬間、カインは、獣そのもののような、四つ足に近い低い姿勢から、爆発的な速度で俺に襲いかかってきた。


その爪には、赤い魔力が炎のように揺らめいている。

王都の夜の闇の中、俺たちの戦いの火蓋が、静かに切って落とされた。


お読みいただき、本当にありがとうございましたm(_ _)m


今後の展開に向けて、皆さまの応援が何よりの励みになります(>_<)


少しでも「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ぜひ**【ブックマーク】や【評価(★〜)】、【リアクション】、そして【感想】**で応援していただけると、作者が泣いて喜びます(そして執筆が捗ります)(#^.^#)


誤字脱字報告も大歓迎です。


皆さまの声が、皆さまが考えてる100万倍、私の創作活動の大きな原動力になります。


次回更新も頑張りますので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです(*^ω^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ