第3話:未知との遭遇
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レベル4。攻撃力15、防御力20。
数字だけ見れば、もはやそこらの雑魚モンスターに負ける気はしない。それに食事をしなくても、レベルアップすればHP・MPは全回復する仕様らしい。
「ふっふっふ…俺もついに、チュートリアルを終えたというわけか」
俺はミミズの身体をくねらせ、謎の達成感に浸っていた。もはや、強者の残飯を漁るハイエナではない。
これからは俺が強者となり、リソースを狩る側なのだ!
ハイエナ稼業、本日をもって卒業!
俺はハンターとして生まれ変わる!
…と、息巻いてみたものの、鏡(水たまり)に映る姿は、相変わらずただのミミズである。
威厳もクソもない。悲しい。
気を取り直して、俺は新天地を求めて行動範囲を広げた。湿地帯を抜け、岩と洞窟がゴロゴロしているエリアへ。
早速、洞窟の入り口で獲物を発見だ。泥でできた、ずんぐりむっくりな人型モンスター。
『《解析》』
《対象:マッドワーカー。知性はなく、縄張りに近づくものを攻撃する習性。特筆すべきスキルはなし》
「なるほど。新人研修用のエネミーだな」
俺はすっかりベテラン気分でマッドワーカーを見下す。だが、奴らは一体ではなかった。地面からボコボコと、計五体が姿を現した。
「おいおい、新人研修にしちゃ数が多くないか? ブラック企業かここは」
前世の嫌な記憶が蘇るが、今の俺は違う。
脳内で完璧な作戦を練り上げる。
まず、一体の足元に《酸液飛ばし》をピュッと飛ばして挑発。
『ゴゴゴ…ッ!?』
「かかったな、アホめ!」
案の定、マッドワーカーたちは知性を感じさせない動きで一斉に泥の腕を振り上げ、こちらに突進してくる。
連携? なにそれ美味しいの? と言わんばかりのバラバラな突撃だ。
俺は計算通りに後退し、奴らが狭い通路でぎゅうぎゅうのおしくらまんじゅう状態になった瞬間を見計らう。
「今だ! まとめて酸を浴びて溶けやがれ!」
『《酸液飛ばし》!』
先頭のマッドワーカーの顔面にクリーンヒット!
『グヂュアアア!』
断末魔にもならない音を上げ、顔が溶けたマッドワーカーが崩れ落ち、後ろの仲間たちを巻き込んでドミノ倒しになる。コントかよ。
そこからはもう一方的な展開だ。
《外殻強化》でカチカチになった俺のボディに、奴らの泥の拳は「ベチャッ!」と虚しく砕け散るだけ。
「はいはい、お疲れ様でしたー」
最後のマッドワーカーを《悪食》で平らげ、無事レベルアップ。
泥の体だからか、経験値も心なしかマズく感じた。
《レベルが5に上がりました》
「よしよし。で、新しいスキルは…っと。なしかーい! ケチくさいな、こいつら!」
経験値しかもらえない雑魚に用はない。
俺はもっとレアなスキルを求めて、奴らの発生源らしき洞窟の奥へと進んだ。その時だった。
ボッ!
「うぉっ、熱っ!?」
暗闇から火の玉が飛んできて、俺の鼻先 (たぶん)を掠めていった。壁が焦げている。
え、ブレス攻撃!? 聞いてないんですけど!?
慌てて岩陰に隠れ、震えながら《解析》を発動。
《対象:サラマンダー(幼体)。体内で生成した可燃性ガスを吐き出すスキル《火炎ブレス》を使用》
「火を吹くトカゲ! しかも、ただのブレスじゃなくて『スキル』扱いか! SR案件キタコレ!」
恐怖と同時に、抑えきれない欲望が湧き上がってくる。あれを喰らえば、俺も体の中から火を吹けるようになるのでは!?
技名叫ぶ系主人公デビュー待ったなしか!
『キュルルルッ!』
サラマンダーが威嚇するような鳴き声を上げ、再び口の中に炎を溜め始める。
その瞬間、奴の喉元がオレンジ色にボワッと光った。
「ん? なんか…来るか? 来るのか!?」
俺が内心でパニクっていると、火の玉が発射! ほぼ勘で身体をくねらせると、奇跡的に回避できた。
「危ねぇ! だが、今の喉の光が予備動作か! 見切った!」
完全に結果論だが、勝てば官軍である。
「喰らえ! 我が必殺奥義! ミミズだからできる土遁の術!」
俺は地面に潜り、サラマンダーの真下まで一直線に突き進む。上からは、獲物を見失ったサラマンダーの『キュル?』という間抜けな声が聞こえる。
「今だ、チェックメイトォ!」
サラマンダーの足元から飛び出し、ほぼ抱きつくようなゼロ距離でスキルを発射!
『《酸液飛ばし》!』
『ギイイイイイッ!?』
奇襲は大成功。
弱り切ったサラマンダーを、俺は感謝を込めて(食料的な意味ではなく)《悪食》した。
《レベルが6に上がりました》
《スキル《火炎耐性》、《火炎ブレス》をコピーします》
「よっしゃあああ! ついに俺も遠距離攻撃のバリエーションが!」
俺は早速、覚えたての《火炎ブレス》を試してみる。
腹のあたり(たぶん)に力を込めると、口先から「ボフッ…」と小さな火の粉が散った。
「…………」
威力が線香花火レベルだった。
まあ、ないよりはマシか…。
《酸液飛ばし》と使い分けだな。
しょんぼりしながらも、俺は洞窟のさらに奥へと進んだ。そこは、とんでもなく広い空間だった。
そして、俺は固まった。
目の前に、山のように巨大な、ドラゴンの骸が横たわっていたからだ。
「……マジ、か」
荘厳で、神々しい。
あまりの迫力に、俺はただただ圧倒された。
しかし、次の瞬間。俺の思考は、システムエンジニアからただの食いしん坊へと切り替わった。
(これ…全部喰ったら、どうなっちゃうんだ…?)
俺はゴクリと唾を飲む(ような感覚に陥り)、足元に落ちていた黒い鱗に、おそるおそる《解析》をかけた。
すると、視界に血の気が引くような真っ赤な警告ウィンドウがポップアップした。
《警告:情報過多により、対象の精神(魂)が崩壊する危険性(99.9%)があります。推奨アクション:即時離脱》
「きゅ、99.9%ぉ!?」
思わずミミズの身体がビクンッと跳ねる。
「あ、これアカンやつや! 前世でヤバい本番サーバーの更新ボタンを押しちゃった時と同じ警告音だ!」
指が、いや口器が、ブルブルと震える。0.1%の成功確率なんて、ガチャで言えば都市伝説レベルだ。
普通は撤退一択。
だが、しかし!
(でも…このガチャ、めちゃくちゃ引きてぇ…!)
脳裏に「一攫千金」「最強スキル」「俺TUEEEE」の文字が乱舞する。
理性が「やめろ」と叫び、本能が「喰え」と囁く。
「……落ち着け、俺。まだだ。まだその時じゃない」
俺は数歩後ずさり、自分に言い聞かせた。
そうだ、今こんなSSR級の素材を喰っても、俺の貧弱な器では処理しきれない。
まずはレベル上げだ。
もっと強くなって、もっと頑丈な精神を構築してから、このプロジェクトD――ドラゴン丸ごといただくぜ計画――を実行するのだ!
新たな、そして食い意地全開の目標を掲げた俺は、名残惜しそうにドラゴンの骸に一礼 (したつもり)し、骸に背を向けようとしたその瞬間――
かすかに聞こえた“気がした”。
それは、誰かの記憶の断片のような、悲痛な叫びのような…。
『...この世界は……囚われている』
――俺はまだ知らなかった。この出会いが俺の運命を大きく変え、やがて、この世界の神に牙を剥く者になることを。
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【種族】ワーム
【個体名】トオル ソウマ
【レベル】6
【HP】 35 / 35
【MP】 15 / 15
【攻撃力】22
【防御力】28
【素早さ】12
【魔力】8
スキル:解析(Lv.2)、悪食(Lv.2)、麻痺耐性(Lv.1)、酸耐性(Lv.1)、酸液飛ばし(Lv.2)、外殻強化(Lv.2)、火炎耐性(Lv.1) new!、火炎ブレス(Lv.1) new!
固有スキル:
称号:地を這うハイエナ
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