表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/47

【幕間④】バグズ・ネスト日誌 Vol.2 ~風呂は命の洗濯よ~

いつも読んでくださりありがとうございます!


今日は七夕ですね^^

みなさまの願いが叶いますように。


明日も更新予定です(*^^*)


それでは、どうぞ!




(視点:ノクテリオン)


ヴァル様が旅立たれてから、季節が一つ、巡ろうとしていた。


我らの巣、『バグズ・ネスト』は、あの日とは比べ物にならぬほど、その姿を変えつつあった。


最大の功労者は、皮肉にも、かつて我らを脅かしたゴブリンとオークの若者たち――今や、巣の誇り高き『防衛隊』となった者たちであった。


「隊長! 東の谷から、ロックリザードの群れが接近中!」


インプの斥候が、息を切らして報告する。


「よし、てめえら、準備はいいか! ノクテリオン様に、俺たちの力を見せてやんぞ!」


防衛隊の隊長に任命されたオークのグレンが、巨大な戦斧を肩に担ぎ、野太い声で檄を飛ばす。


その顔には、かつてのような卑屈な笑みはなく、仲間と巣を守るリーダーとしての自信が満ち溢れていた。


ゴブリンたちは、ヴァル様が残してくださった設計図を元に改良した、巧妙な罠で敵の足を止め、オークたちが、その屈強な肉体を盾に、最前線で敵の猛攻を受け止める。


これまで、魔物と聞けば洞窟の奥で震えているだけだった我らインプ族も、今では石つぶてを投げて援護したり、負傷者を安全な場所へ運んだりと、自分たちの役割を懸命に果たしていた。


戦いが終わると、そこには大小様々な傷を負った防衛隊の姿があった。


だが、彼らの顔に、悲壮感はない。


「へへっ、今日の晩飯は、トカゲの丸焼きだな!」

「この鱗、なかなかいい盾になりそうだぜ」


自分たちの力で、仲間と食料を守り抜いたという達成感が、彼らをさらに強く、逞しくさせていた。


そんなある日、私は、ヴァル様から託された、もう一つの置き土産のことを思い出した。


それは、彼が去り際に「巣が落ち着いたら、これに挑戦してみてくれ」と言って、私にだけ渡してくれた、数枚の粘土板だった。


私は、巣の幹部となったグレンと、手先が器用で知恵の回るインプの若者たちを集め、その設計図を広げた。


「こ、これは…?」


そこに描かれていたのは、我らの常識を遥かに超える、複雑で、しかし合理的な建築物の設計図だった。


一つは、『防御壁の強化案』。


単に石を積むだけでなく、アーチ構造を取り入れて強度を高め、狭間さまを設けて効率的な迎撃を可能にする、驚くべき設計。


そして、もう一つは、『公衆浴場の仕組み』。


「よくじょう…?」

「ヴァル様は、こう仰っていた。『病は、穢れから生まれる。体を清潔に保つことは、戦いで傷つかぬことと同じくらい重要だ』と」


最初は、その意味を理解できずにいた若者たちも、ヴァル様の言葉の重みを、これまでの経験から知っていた。


我らの、新たな共同プロジェクトが始まった。


用水路建設で培った技術を応用し、水を温めるためのかまどを作り、清潔な湯を溜めるための大きな湯船を石と粘土で固めていく。


それは、用水路に劣らぬ、困難な事業であった。


だが、一度、完成の喜びを知った我らに、もはや迷いはなかった。


そして、さらに数週間後。

『バグズ・ネスト』に、初めて湯気が立ち上った。

完成した公衆浴場に、人々が恐る恐る足を踏み入れる。


「あったかい…」

「これが…『お風呂』…」


泥と汗にまみれた体を、温かい湯に沈める。


それは、我らが生まれて初めて経験する、魂の芯まで解きほぐされるような、至福の感覚だった。


ゴブリンも、オークも、インプも、ここでは皆、種族の垣根なく、ただの湯を楽しむ仲間として、穏やかな笑い声を上げていた。


私は、湯気の中で幸せそうに笑う民たちの顔を見ながら、改めてヴァル様という存在の偉大さを噛み締めていた。


あの方は、我らに、ただ力や食料を与えてくださったのではない。


自分たちで考え、協力し、新たなものを生み出すことの『喜び』そのものを、教えてくださったのだ。


この巣は、もっと大きくなる。もっと、豊かになる。


ヴァル様が、いつかこの場所へ帰って来た時に、「見事だ」と、そう言ってくださるような、誰もが見捨てられたとは思わぬ、誇り高き『虫の巣』を、我らの手で築き上げてみせる。


私は、熱い湯に浸かりながら、固く、そう誓ったのであった。

(ふむ…しかし、これだけ多くの民が湯を使えば、使った後の水の処理も考えねばなりますまいな…)

新たな課題に思いを馳せることもまた、巣の長としての、私の喜びの一つとなっていた。


お読みいただき、本当にありがとうございましたm(_ _)m


今後の展開に向けて、皆さまの応援が何よりの励みになります(>_<)


少しでも「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ぜひ**【ブックマーク】や【評価(★〜)】、【リアクション】、そして【感想】**で応援していただけると、作者が泣いて喜びます(そして執筆が捗ります)(#^.^#)


誤字脱字報告も大歓迎です。


皆さまの声が、皆さまが考えてる100万倍、私の創作活動の大きな原動力になります。


次回更新も頑張りますので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです(*^ω^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ