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【幕間③】ギルドマスターの独白

いつも読んでくださりありがとうございます!


最新話をお届けします。

楽しんでいただけると嬉しいです。


明日も更新予定です(*^^*)


それでは、どうぞ!




(視点:ダリウス)


アルトハイムの街が、英雄の誕生に沸いている。


ギルドの酒場は、連日連夜、あの日の武勇伝を語る冒険者たちの熱気で満ちていた。誰もが、あの黒髪の青年――ヴァルの名を、賞賛と畏敬を込めて口にする。


俺もまた、祝いの酒を呷りながら、あの日の光景を思い出していた。


俺が、あのヴァルという小僧に初めて会ったのは、ギルドの魔力水晶が、けたたましい悲鳴を上げてヒビ割れた、あの騒動の日だった。


第一印象は、「底の知れん、不気味な若者」。それだけだった。


魔力量だけなら、S級にも匹敵する。だが、俺が長年培ってきた勘は、あいつの本質が、そんな単純なものではないと告げていた。


ただ立っているだけで、肌が粟立つような、圧倒的なプレッシャー。

それは、駆け出しの冒険者が放つものではない。まるで、深淵の底で永い眠りについていた、古龍と対峙しているかのような錯覚。


模擬戦での一幕は、その予感を確信へと変えた。


Cランクのエースであるケインが、まるで赤子のようにあしらわれる。いや、違うな。あれは「あしらった」のではない。ヴァルは、全力で警戒し、全力で対処した結果、あの異常なまでの実力差を見せつけてしまったのだ。


あいつは、己の物差しが、この世界の常識から、いかにかけ離れているかを理解していなかった。


それ故の、無自覚な蹂躙。あれほど恐ろしいものはない。

そして、魔物の暴走スタンピード


地平線を埋め尽くす魔物の大群を前に、俺ですら、街の終わりを覚悟した。冒険者として、数多の死線を潜り抜けてきたこの俺が、だ。


だが、あいつは違った。


絶望に染まる城壁の上で、ただ一人、静かに、しかし燃えるような覚悟の瞳で、眼前の絶望を見据えていた。


彼が、あの小さなオートマタと融合し、魔力の塊を放った瞬間、俺は、我が目を疑った。


天から降り注ぐ、神の裁きのような閃光。

魔物の軍勢が、一瞬にして蒸発していく。


あれは、人の領域の力ではない。神話か、おとぎ話の世界だ。


続く白兵戦も、常軌を逸していた。


魔物の群れに単身で飛び込み、白銀の剣で舞うように敵を切り伏せていく。その姿は、英雄譚に謳われる、剣聖そのもの。


彼の戦いぶりに、絶望していた冒険者たちが、我を忘れて雄叫びを上げ、城門から飛び出していった。


そうだ。あいつは、ただ強いだけではない。


その背中は、見る者に、希望と、立ち向かう勇気を与える。それこそが、『英雄』の資質というものなのだろう。


戦いの後、あいつは、自分が引き起こした災厄の贖罪だと言い、全ての戦利品を街に寄付した。富にも、名声にも、興味を示さない。


ただ、あの「祝福の泉」の真実を話した時の、彼の瞳の奥に宿った、冷たく、そして激しい怒りの炎だけが、俺の脳裏に焼き付いて離れない。


あいつの言葉には、何の証拠もなかった。


だが、その瞳には、嘘や、思い込みの類では決して宿らない、絶対的な確信の光があった。


あの魔力水晶を砕き、Cランクの冒険者を子供扱いし、魔物の軍勢を一人で殲滅した、規格外の男。彼が「分かる」と言うのなら、それは、俺たちの常識を超えた次元で、事実なのだろうと、なぜか、そう思わされてしまった。



◇◆◇◆◇◆◇◆


ヴァル、ミア、そしてリリア。

あいつらは、王都へ旅立った。


聖王国からの推薦状を、まるで厄介な仕事を片付けるかのように、淡々と受け取って。


俺には分かる。

あいつらがやろうとしていることは、この街を守るなどという、小さな話ではない。


あいつらは、この世界の、我々が信じてきた「神」そのものに、戦いを挑もうとしている。

俺は、もう一度、エールを呷る。


「…無茶をしおって」


口から漏れたのは、呆れと、そしてほんの少しの羨望が混じった、独り言だった。


俺にできることは、もう何もない。


ただ、このアルトハイムの街を守り、彼らがいつか帰ってくる場所を、無くさないようにするだけだ。


願わくば、あの若き英雄の旅路に、女神の祝福があらんことを。



…いや、違うな。

あいつは、その女神に喧嘩を売りに行くのだ。


「…せいぜい、派手にやってこい、小僧」

俺は、誰に聞かせるともなく、そう呟いて、空になったジョッキを、カウンターに叩きつけた。


酒場の喧騒が、やけに心地よかった。



お読みいただき、本当にありがとうございましたm(_ _)m


今後の展開に向けて、皆さまの応援が何よりの励みになります(>_<)


少しでも「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ぜひ**【ブックマーク】や【評価(★〜)】、【リアクション】、そして【感想】**で応援していただけると、作者が泣いて喜びます(そして執筆が捗ります)(#^.^#)


誤字脱字報告も大歓迎です。


皆さまの声が、皆さまが考えてる100万倍、私の創作活動の大きな原動力になります。


次回更新も頑張りますので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです(*^ω^*)

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