第30話:偽りの祝福
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魔導砲による圧倒的な一撃。
それは、戦況を覆すには十分すぎたが、戦いを終わらせるには、まだ足りなかった。
先頭集団こそ消滅したものの、後方から、第二、第三の波が、混乱しながらも街へと迫ってくる。
「…第二ラウンド、といくか」
俺は、ギアが変形した魔導剣を握りしめ、城壁の縁に立つ。
「リリアさん、ダリウスさん!」
俺は、背後で呆然としている彼らに向かって叫んだ。
「俺が先陣を切る! 皆さんは、俺が討ち漏らした奴らを頼みます!」
「なっ…ヴァルさん、無茶です! 一人で突っ込むなんて!」
リリアの制止の声も、もはや俺の耳には届かない。
俺は、城壁から、眼下に広がる魔物の大群の中へと、迷いなく飛び降りた。
着地と同時に、地面が蜘蛛の巣状に砕ける。
周囲の魔物が、突如現れた俺という異物に気づき、一斉に牙を剥いて殺到してきた。
「――遅い」
俺は、もはや目で追うことすらしなかった。《コード・アナライザー》と《古代竜の叡智》が、周囲360度の敵の動きを、完璧に予測している。
一体のアーマー・ボアが、自慢の牙で俺を串刺しにしようと突進してくる。
俺は、その突進を半身で躱し、すれ違いざまに《竜牙の剣》を振るった。
ズバッ!
音もなく、鋼鉄の如き猪の巨体が、真っ二つになって崩れ落ちる。
空からは、ストーム・イーグルの群れが、鋭い爪で俺を襲う。
「――《インフェルノ・テンペスト》」
俺が剣を振るうと、その軌跡から炎の竜巻が巻き起こり、空の魔物たちをまとめて焼き尽くした。
一振りで、数体の魔物が塵と化す。
その動きは、もはや戦闘ではない。舞踊だ。
白銀の剣が描く、優雅で、しかし絶対的な死をもたらす軌跡。
それは、かつて俺が憧れた、物語の中の英雄そのものだった。
「…すげえ」
城壁の上で、ケインが呟いた。
「なんだよ、あれ…。同じ人間か…?」
「…いや」
ダリウスさんが、ゴクリと喉を鳴らす。
「あれは、我々と同じ生き物ではない。あれこそが、『英雄』というものなのだろう…」
俺の圧倒的な戦いぶりに、冒険者たちの心に、消えかけていた希望の火が再び灯った。
「うおおおおおっ! あの英雄に続けぇ!」
「俺たちの街は、俺たちで守るんだ!」
ダリウスさんの号令を皮切りに、城門が開かれ、冒険者たちが一斉に討って出る。
リリアもまた、美しい風の魔法で、俺が討ち漏らした魔物たちを的確に仕留めていく。
戦いは、もはや一方的な蹂躙だった。
俺という絶対的な矛が敵陣を切り裂き、冒険者たちがそれに続く。
数時間後、あれほど絶望的だった魔物の大群は、一体残らず駆逐され、アルトハイムの街は、静寂を取り戻した。
《経験値を獲得しました》
《レベルが55…56…57…58…59…60に上がりました》
凄まじい量の経験値が、俺をさらなる高みへと押し上げる。
だが、俺は、目の前に広がる魔物の亡骸の山を見ても、それを《悪食》しようとは思わなかった。
これは、俺が引き起こした災厄の残骸だ。
これを自分の力に変えるなど、到底できるはずもなかった。
俺は、全ての魔石と素材を、街のために寄付することを、その場でダリウスさんに告げた。
数日後。
アルトハイムは、英雄の凱旋に沸いていた。
だが、俺の心は晴れなかった。
街の広場に設置された、臨時の救護所。
スタンピードで傷ついた冒険者や騎士たちが、次々と「祝福の泉」から汲んできた聖なる水で治療を受けていた。
ケインも、その一人だった。彼は、無茶をして負った腕の傷を癒しながら、俺に感謝しつつも、自分の無力さを悔しがっている。
「やっぱり、ヴァルさんはすげえよ。あんたがいなけりゃ、俺たち、今頃…」
「…気にするな」
俺は、泉の水で傷が癒えていく冒険者たちを、何気なく《コード・アナライザー》で見てしまう。
そして、あらためて戦慄した。
本当に傷の治癒と引き換えによって、彼らの**『魂の耐久値』**とも言うべき根源的な生命力が、僅かずつだが確実に削り取られている…!
それは、まるでバッテリーの最大容量が、少しずつ減っていくかのような現象だった。
「祝福」の裏に隠された、あまりにも残酷な「搾取」のシステム。
(やっぱり、あの泉は…!)
俺は、解析の深度をさらに上げる。
削り取られた生命力は、どこへ行く? そのエネルギーの行き先(転送先)を追跡する。
そして、俺は、信じられない情報を目の当たりにした。
【転送先座標:天頂領域『セレスティアル・スフィア』】
【ステータス:不明。高レベルの認識阻害結界により、アクセス不可】
天高く、遥か上空の、未知の座標…。
人々が「天界」と呼ぶ場所か…?
人々が「神」と信じる存在がいる、その場所へ、この街の人々の生命力が、少しずつ、しかし確実に、送られ続けている。
「…そういう、ことかよ」
俺の全身から、血の気が引いていくのが分かった。
この世界の「神」は、ただ人々を管理しているだけではない。
人々を、家畜か何かのように、その生命力を糧にしているのだ。
俺は、天を仰いだ。
そこには、ただ、どこまでも青い空が広がっているだけだった。
だが、今の俺には、その青空の向こう側に、人々を嘲笑う、冷たい機械の神の姿が、はっきりと見えているような気がした。
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