第2話:最初の捕食
まさか、3話目も読んでくださるなんて...(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
感激の極みです。
本当にありがとうございますm(_ _)m
だんだんと強くなる主人公を引き続き、ブクマして、成長を見守ってやってください。作者が泣いて喜びます(執筆も捗ります)
ハイエナ。不名誉だが、的確な称号だ。俺は強者の残りカスを漁って生きながらえる寄生虫。前世で、クライアントと上司の顔色をうかがいながらデスマーチを乗り切っていた俺と、何が違うというのか。
「……いや、違うな。全然違う!」
自嘲しかけた思考を、俺は全力でぶん殴って追い出す。前世と違う点、それは明確だ。
今の俺の行動は、未来への「投資」! そう、これは来るべき日のための自分磨き(物理)!
この地道なスキル収集は、俺をミミズから卒業させるための、輝かしい第一歩なのだ! そうに違いない! そう思わないとやってらんない!
精神的に無理やり折り合いがつくと、俺の探索は「その場しのぎの餌探し」から「戦略的スキル・ビルディング」へと華麗にシフトした。
まず見つけたのは、見るからに「俺、毒持ってます」と主張するド派手なカエルの死骸だった。
『《解析》』
《対象:ポイズン・フロッグの死骸》
《表示:皮膚に強力な神経毒を含む。推奨アクション:摂食は危険》
「『麻痺耐性』とは別系統の神経毒か。よし、この毒も我が血肉としよう!」
俺は覚悟を決め、《悪食》を発動。一瞬、全身の神経が引っこ抜かれてスパゲッティみたいに茹でられるかのような激痛が走ったが、即座に《解析》が情報をぶっこ抜き、新たなスキルが俺の力となった。
《条件を満たしました。スキル《毒耐性》を獲得します》
「よっしゃあ! これで毒キノコも怖くない!(うそ。まだ怖い)」
次に、ピリピリと微弱な電流を放つバッタのようなモンスターの亡骸。
《対象:ショック・ホッパーの死骸》
《スキル《電撃耐性》を獲得します》
「感電死も回避! これでうっかりコンセントを舐めても大丈夫な体になったな!」
黒曜石のように硬いカブトムシの死骸からは、スキル《物理抵抗》を獲得。《外殻強化》が『今だけ硬くなるぜ!』というアクティブスキルなのに対し、こちらは『常にちょっとだけ硬いよ』という地味に嬉しいパッシブスキルだ。ありがたい。
スキルは着実に増えていく。俺のステータスウィンドウのスキル欄は、日に日に長くなっていく。
レベルは1のまま、HPも攻撃力もミジンコ並み。だが、俺の内側は確実に、このクソゲー環境に適応しつつあった。
「いいぞ……。どんな理不尽な攻撃が来ても対応できるよう、あらゆる例外処理(耐性スキル)を揃えてやる!」
それは、システムの脆弱性を一つずつ潰し、堅牢なプログラムを構築していく感覚に酷似していた。この地道な作業が、俺の心を奇妙なほど落ち着かせ、「俺、意外とやれるのでは?」という静かな勘違いを芽生えさせていく。
そして、数日が経過した頃。俺はついに、最初の「狩り」の標的を見つけた。
目の前には、何かの獣の骨が散らばるエリア。そこに群がる、ハエ型のモンスター。
『《解析》』
《対象:ボーン・イーター(幼体)》
《表示:骨を主食とするモンスター。攻撃手段は、硬い顎による噛みつきと、牙に付着した麻痺性の唾液》
「……麻痺性の唾液」
その一文を見た瞬間、俺の中でカチリ、とパズルがはまる音がした。
こいつだ。こいつなら、俺の「万全の準備(フラグ建築)」が通用する!
焦りはない。
あるのは、ローカル環境で完璧に動作したプログラムを、本番サーバーにデプロイする時のような、緊張感を伴った確信だけだ。
「――いざ、実証実験!」
俺は一体のボーン・イーターが群れから離れるのを待ち、静かに、そして正確に《酸液飛ばし》を放った。
ビシャッ!
緑色の酸液が、見事に奴の背中に命中し、甲殻をジュワリと焼く。
『ギィ!?』
不意の一撃に驚いた奴は、怒りに満ちた複眼で俺を捉え、「このミミズ野郎が!」と言わんばかりの勢いで突進してきた。
「来るぞ……!《外殻強化》!」
カキンッ!と俺のミミズボディが鋼鉄のミミズボディになるのと、奴の牙が叩きつけられるのは、ほぼ同時だった。
ガキンッ!
凄まじい衝撃! HPが【5/5】から【4/5】に減る。痛い! 1ダメージが致命傷に感じる! だが、その直後、俺が待ち望んでいたポップアップが表示された。
《警告:麻痺毒による攻撃を検知》
《スキル《麻痺耐性》が発動。麻痺効果を95%軽減します》
「よっしゃキターーーッ!」
俺は心の中でガッツポーズした。身体の自由は奪われない。あの時、苦行の果てに手に入れたスキルが、今ここで完璧に機能した! このアドバンテージは、HP1の差よりデカい!
『ギィ!?』
噛みついた相手がピンピンしていることに、ボーン・イーターが一瞬戸惑う。そのコンマ数秒のフリーズを見逃す俺ではない!
『お返しだ! 至近距離で《酸液飛ばし》!』
ゼロ距離で放たれた酸液が、奴の顔面にクリーンヒット!
『ギイイイイイッ!』
怯んだところに、カッチカチになった身体で渾身のタックルを叩き込む!
ゴッ!
鈍い音を立てて、ボーン・イーターがよろめいた。今だ!
『喰らえ! 強制アンインストール(注釈:悪食)!』
《警告:対象は生命活動を維持しています。強制分解には多大なリソースを消費します》
「サーバーが悲鳴を上げようが構うか! やれッ!」
俺の意思に呼応し、口器が触れた部分から、ボーン・イーターの身体が光の粒子となって分解され始めた。
『ギ…ギギ…ギ…』
断末魔の叫びすら霧散させながら、ボーン・イーターは俺の経験値へと変わっていく。
そして――
《経験値を獲得しました》
《レベルが2に上がりました!》
全身が温かい光に包まれ、力がみなぎる。ああ、この感覚、徹夜明けに飲む栄養ドリンクより効く……!
その時、残りの二匹が「なんか知らんが仲間が消された!」と気づき、駆け寄ってくる。だが、レベルアップでドーパミンがドバドバ出ている俺は冷静だった。
同時に襲いかかってきた二匹目の牙が、俺の身体を捉える!
ガキンッ!
だが、ダメージは先ほどより明らかに小さい。レベルアップで、基礎防御力が底上げされたのだ!
「お前らの番だ。俺のレベル上げに付き合え」
もはや俺に迷いはない。周到な準備がもたらした精神的優位。そして、初めてのレベルアップによる確かな成長。
俺は迫りくる二匹を冷静に見据え、再び《酸液飛ばし》を放った。
戦闘は、もはや狩りだった。
一体目を倒した時とは比べ物にならない。俺の動きは、まるで最適化されたコードのように洗練されていた。
敵の攻撃を《外殻強化》と《物理抵抗》で受け止め、麻痺毒を《麻痺耐性》で無効化し、的確に《酸液飛ばし》でカウンターする。完璧なコンボだ!
数分後、そこには静寂とレベルアップ通知だけが残っていた。
《レベルが3に上がりました》
《レベルが4に上がりました》
立て続けにレベルアップのファンファーレが脳内に響く。俺は、ホクホク顔で自分のステータスウィンドウを開いたのだった。
ーーー浮かれていた俺は、まだ知る由もなかった。
すぐそこに古代竜との運命の出逢いがあるということに。
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【種族】ワーム
【個体名】トオル ソウマ
【レベル】4
【HP】 25 / 25
【MP】 10 / 10
【攻撃力】15
【防御力】20
【素早さ】8
【魔力】5
スキル:解析(Lv.2)、悪食(Lv.2)、酸液飛ばし(Lv.2)、外殻強化(Lv.2)、麻痺耐性(Lv.2)、毒耐性(Lv.1)、電撃耐性(Lv.1)、物理抵抗(Lv.1)
固有スキル:
称号:地を這うハイエナ
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