第20話:歯車の産声と新たな旅立ち
いつも読んでくださりありがとうございます!
作者のお気に入りのキャラがついに登場します^ ^
こいつ、書いてて本当に楽しい。
皆様にもお気に召していただけると嬉しいです(o^^o)
最初に感じたのは、ひんやりとした洞窟の石の感触と、規則正しく響く、小さな機械音だった。
カチリ…カチリ…。
俺は、重い瞼をゆっくりとこじ開けた。
「…ここは…」
見覚えのある、俺たちが拠点にしていた洞窟の中だった。
隣には、ミアが安らかな顔で眠っている。
俺は、慌てて自分の体とミアの状態を確認した。酷かったはずの外傷には、拙いながらも的確に薬草が塗られ、止血されている。ミアの顔色も、毒に侵されていたのが嘘のように、穏やかな色を取り戻していた。
(誰が、俺たちをここまで運んで、手当てを…?)
森の魔物が、こんな親切なことをするはずがない。
「目が覚めましたか、マスター」
無機質で、どこか澄んだ声が、すぐ近くから響いた。
声のした方へ視線を向けると、俺の胸の上で、ちょこんと小さな何かが座っていた。
全長15センチほどの人型。
まるで白磁のような滑らかな白いボディに、銀色のパーツや装飾ラインが走っている。その関節からは、小さな真鍮色の歯車が覗いていた。
そして、何より奇妙なのは、その顔だった。
顔の右半分に、**青白く光る大きな水晶の単眼**が埋め込まれている。
そして、顔の左半分には、大小様々な大きさの、精巧な歯車が、剥き出しのまま複雑に組み合わさって配置されている。
その歯車群が、まるでもう片方の目や、口の動きを表現するかのように、カチリ、カチリと微かに動いていた。
俺が体を起こすと、その小さな人形は首を傾げた。
カチリ、カタカタ…と、心地よい歯車の音を立てて。
「お前は…あのアストラル・コアか?」
「肯定。私は、マスターの魔力供給により起動した、自律型支援ユニットです。識別コード、G3-AЯ」
その小さな人形は、水晶の単眼を輝かせ、歯車をチリチリと軋ませながら、淡々と状況を説明し始めた。
俺たちが倒れた後、俺の懐で眠っていたコアが、俺とミアの生命活動の危機的状況を感知。緊急用の最低限のエネルギーで自らを起動させ、その小さな体で、俺たち二人をここまで引きずって運び、ありったけの知識で介抱してくれたのだという。
「…お前に、助けられたのか。ありがとう」
「私は、マスターの所有物。自己の存続と、マスターの生命維持を最優先に行動した結果です。感謝は非効率です」
ぶっきらぼうにそう言うと、ギアはそっぽを向くように首をカタカタと回した。どうやら、素直じゃないらしい。
「ヴァル様…?」
その時、ミアが目を覚ました。彼女は、俺の胸の上にいるギアを見て、目を丸くする。
「わあ、かわいい! お人形さん?」
「肯定しません。私は自律型支援ユニットです」
「お名前は?」
「私は名称未設定の個体です。識別コード、G3-AЯです」
「じゃあ、ギアちゃんだね!」
「『ちゃん』付けは、個体識別において不要な情報です。却下します」
「よろしくね、ギアちゃん!」
「…話を聞いてください」
ミアの天真爛漫さに、理屈っぽいギアがたじたじになっている。なんだか、賑やかな家族が一人増えたみたいで、俺は思わず笑ってしまった。
「そうだ、ギア。あいつの素材は?」
「回収済みです。サーペントの素材のうち、『魔石』と最も魔力濃度が高い『毒腺』を、マスターの指示があるまで保管していました」
有能すぎるだろ、こいつ。
俺はギアから受け取った戦利品に手を置き、《悪食》を発動させた。
《対象『アビスル・サーペント』の情報を吸収…》
《スキル《毒無効》を獲得しました》
《スキル《超再生》を獲得しました。スキル《HP自動回復》は《超再生》に統合されます》
レベル50に上がってる。
この森に来た時とは、もはや比べ物にならない力が、俺の体に満ちていた。
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【個体名】ヴァル
【種族】ヴルム・ドラコ(竜蟲)
【レベル】50
【称号】森の主を喰らう者
【HP】 4550 / 4550
【MP】 3880 / 3880
【攻撃力】2480
【防御力】2650
【素早さ】1830
【魔力】2210
固有スキル:《コード・アナライザー》、《古代竜の叡智》 new!
固有特性:《竜の因子》
スキル:悪食(Lv.7)、栄養吸収(Lv.1)、粘糸(Lv.1)、魔力感知(Lv.5)、魔力操作(Lv.5)、生態探知(Lv.1)、火魔法(Lv.MAX)、風魔法(Lv.4)、幻術(Lv.1)、隠密(Lv.5)、超再生(Lv.1) new!、俊敏強化(Lv.3)、物理抵抗(Lv.2)、魔法抵抗(Lv.1)、麻痺耐性(Lv.3)、酸耐性(Lv.3)、火炎耐性(Lv.2)、毒無効new!、電撃耐性(Lv.1)、ステータス偽装(Lv.1)、空中歩行(Lv.1)、滑空(Lv.1)、遠目(Lv.1) 、言語理解
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全ての準備は、整った。
MPも全快し、傷も癒え、頼もしい仲間も増えた。
俺は、ミアと、肩に乗ったギアに向き直る。
「さて、と。今度こそ、本当に出発だ」
俺たちは、住み慣れた洞窟を後にした。
森を抜け、青々とした草原の先に街が見えてきた。
あれが、人間界。俺たちが次に挑むべき、新しい舞台だ。
「ヴァル様、あれが…」
「ああ。どうやら間違いなさそうだ」
紫色の空の下で始まった俺の二度目の人生は、今、青い空の下で、新しい章の幕を開けようとしていた。
俺は、隣で輝くような笑顔を見せるミアと、肩の上で冷静に周囲を分析しているギアと共に、人間の街へと続く道を、確かな足取りで歩き始めた。
今回もお読みいただき、
本当にありがとうございましたm(_ _)m
今回で第一章は完結となります。
第一章、いかがだったでしょうか?
ギアはもののけ姫に出てくる『こだま』みたいなキャラに歯車と水晶レンズをつけた感じをイメージして頂ければ(・∀・)
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