第17話:空の支配者
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それでは、どうぞ!
ミアが「自分でできるようになりたい」と宣言してから、俺たちの役割は自然と分かれた。
彼女は、狩ってきたミラージュ・バタフライの鱗粉を指先に付け、洞窟の中で自分の魔力と向き合う日々。
俺は、そんな彼女の集中を邪魔しないよう、単独での狩りに出ることにした。
「ミア、少し出かけてくる。何かあったら、すぐに合図しろよ」
「うん! ヴァル様も、気をつけてね!」
真剣な眼差しで見送るミアに背を向け、俺は森の奥深くへと足を踏み入れた。
ターゲットは決まっている。
以前、上空を旋回していた、この森の『空の支配者』――
レベル53の巨大な鷲、『ストーム・イーグル』だ。
空を飛ぶ相手は、これまでの地上戦とは全く違う。
厄介だが、その分、得られる経験値もスキルも大きいはずだ。
数時間後、俺はイーグルの巣がある、切り立った崖の下にいた。
見上げると、遥か上空を、翼を広げれば数メートルはあろうかという巨体が優雅に舞っている。
「さて、どうやって空の相手を地上に引きずり下ろすか…」
俺は《火魔法》で巨大な火球を作り出し、巣に向かって放った。挑発だ。
『キイイイイイイイッ!』
狙い通り、巣を脅かされたストーム・イーグルが、怒りの咆哮と共に急降下してくる!
「来たな!」
凄まじい速度で迫る、刃のように鋭い爪。俺は地面スレスレでそれを躱すが、イーグルが巻き起こした暴風だけで、体が吹き飛ばされそうになる。
「くそっ、速すぎる!」
地上から《アシッド・ブレード》で攻撃しようにも、一撃離脱を繰り返す相手には当たらない。
《風魔法》で対抗しようにも、俺のLv.1のそよ風など、奴の暴風の前では無力だ。
(ダメだ。同じ土俵で戦おうとするから負けるんだ。発想を転換しろ)
俺は、攻撃を回避しながら思考を巡らせる。
(空を飛べないなら、空に『足場』を作ればいいじゃないか!)
俺は《魔力操作》に意識を集中させた。
「――固まれ!」
俺は、自分の足元に魔力を高密度で凝縮させ、透明なプレートを生成する。
それを蹴って、跳ぶ!
さらに空中で次の足場を作り、跳ぶ!
擬似的な空中歩行。
MP消費は馬鹿にならないが、これで三次元の機動戦に持ち込める!
《熟練度が一定に達しました。スキル《空中歩行》を獲得しました》
『キィ!?』
空中に躍り出た俺に、ストーム・イーグルが驚きの声を上げる。
だが、空の王者は伊達じゃない。
イーグルは翼を激しく羽ばたかせ、凄まじい暴風を巻き起こして俺を叩き落とそうとする。
その暴風と対峙する中で、俺は風の流れ、そのものを肌で学習していく。
《コード・アナライザー》が、暴風を構成する魔力の構造を、リアルタイムで解析していく。
(なるほどな…風とは、単なる空気の塊じゃない。魔力によって発生した『高気圧』と『低気圧』、その圧力差が生み出すエネルギーの流れそのものだ)
俺はニヤリと笑った。
(お前のテリトリー(空)のルールを、俺が書き換えてやる!)
俺は、攻撃することをやめた。
代わりに、覚えたての《風魔法》と、精密になった《魔力操作》を組み合わせ、イーグルの飛行ルート上に、意図的に複数の「高圧魔力帯」と「低圧魔力帯」をピンポイントで生成していく。
『キィイッ!?』
順調に飛行していたイーグルの翼が、突如として発生した乱気流に煽られ、大きくバランスを崩す。
まっすぐ飛ぼうとすれば、見えない壁にぶつかったかのように進路を阻まれ、避けようとすれば、掃除機に吸い込まれるように進路を曲げられる。
俺が作り出したのは、目に見えない、魔力の罠が張り巡らされた、空中の地雷原だ。
「どうした、鳥野郎。自慢の翼が、言うことを聞かないか?」
俺が挑発すると、怒り狂ったイーグルが、めちゃくちゃな軌道で俺に向かって突っ込んでくる。
「――読み通りだ」
俺は敵の暴風の流れに、自分の《風魔法》を乗せた。
それは、逆流ではなく、流れをさらに加速させるためのブースト。
敵の力を利用して増幅された俺の風は、もはやそよ風ではない。
「喰らえ! 《エアスラッシュ》!」
巨大な風の刃が、乱気流で体勢を崩したストーム・イーグルの片翼を、深々と切り裂いた。
バランスを崩し、地上に墜落した王者に、俺は容赦なくとどめの一撃を叩き込んだ。
《経験値を大量に獲得しました》
《レベルが41…42…43…》
立て続けにレベルアップの通知が脳内に響き、最終的に俺のレベルは、一気に46まで跳ね上がった。
俺は墜落したイーグルの亡骸を《悪食》し、その力を吸収する。
《スキル《風魔法》のレベルが4に上がりました》
《スキル《滑空》を獲得しました》
《スキル《遠目》を獲得しました》
大収穫に満足し、俺が洞窟に戻ると、そこには誇らしげな顔をしたミアが立っていた。
彼女の額にあったはずの、小さな二本の角が、どこにも見当たらない。
「ヴァル様、見て!」
《コード・アナライザー》で解析すると、角そのものが消えたわけではない。
彼女の魔力が、角の周囲の光を屈折させ、「そこに角はない」と、周囲に認識させているのだ。
自力で習得した、スキル《幻惑擬態》。
さらに、彼女は自分のステータスウィンドウを俺に見せてくれた。
そこには、新しいスキルが追加されていた。
スキル《認識阻害》。
自身やステータスを、他者から誤認・隠蔽するスキル。
彼女は、俺のために、自分ができることを必死に考え、この力に目覚めたのだ。
「すごいじゃないか、ミア。完璧だ」
「えへへ!」
俺が頭を撫でると、ミアは嬉しそうに笑った。
これで、人間界へ行くための「二つの偽装(姿とステータス)」は、二人とも手に入れた。
俺は見違えるほど強くなった自分の力を確かめ、そして、森の頂点に君臨するアビスル・サーペントがいる方角を静かに見つめた――。
「ミア、準備はいいか」
俺の言葉に、ミアはこくりと頷く。その瞳には、もう迷いはない。
「さあ勝負の時間だ」
今回もお読みいただき、本当にありがとうございましたm(_ _)m
修行を経て、森の主に勝てるのでしょうか…。
次回は激熱バトルの予定です。
今後の展開を楽しみにお待ちください(*^-^*)
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