第16話:成長の序曲
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それでは、どうぞ!
強くなる。
そう決意したのはいいものの、俺のMPは依然として回復していない。
まずは、洞窟の奥で休息をとり、MPの回復に専念することから、俺たちの強化合宿は始まった。
その間、俺は暇だったわけではない。
《魔力感知》と《コード・アナライザー》をフル稼働させ、この森の生態系マップを脳内に構築していく。どのエリアに、どんな魔物が、どのくらいのレベルで生息しているのか。
まるで、巨大なオープンワールドゲームの攻略サイトを、自力で作り上げているような作業で、脳が焼き切れそうだ。そして気づく。おかけで《生態探知》というスキルを獲得した。
(しかしこの森、ヤバすぎるだろ…)
《魔力探知》で捉えただけでも、レベル30台の魔物がそこら中を闊歩している。魔界の辺境では、数日歩いてようやく見かけるレベルだ。
俺は、転送先の「世界の境界付近」という情報と、穏やかな気候と空の様子から、ここが『人間界』の領域なのだろうと漠然と推測していた。
(だとすれば、この森は人間界における『狩り場』みたいなものか? こんな奴らと対等に渡り歩いているというなら、人間界の騎士や冒険者は、一体どれだけ強いんだ…? 下手したらレベル100超えがゴロゴロいるんじゃないか…?)
「よし、見えた」
数日が経過し、MPが全快した頃には、俺の頭の中には完璧な狩りの計画書が出来上がっていた。
「ミア、最初のターゲットを決めた。ついてこい」
「うん!」
俺たちが最初に向かったのは、風が強く吹き抜ける岩場エリア。
ここに生息する、比較的レベルが低いレベル20前後の『カマイタチ』の群れが、俺たちの最初の獲物だ。
しかし、レベル7の俺からすれば、圧倒的な格上。
真正面から戦えば、一瞬で切り刻まれて終わる。
「だが、お前らのステータスは、レベルの割に脆いんだよ」
《コード・アナライザー》は、カマイタチのHPや防御力が、その攻撃力や素早さに比べて極端に低いことを見抜いていた。
典型的なスピードアタッカータイプ。
つまり、一撃でも当てて動きを止めれば、勝機はある。
「ミア、俺が陽動する。お前は、あいつらが逃げるであろう道筋に、ありったけの《シャドウ・トラップ》を仕掛けろ」
「わかった!」
俺は岩陰から飛び出し、一体のカマイタチに、ただの石つぶてを投げつけた。
『キィッ!?』
舐められたと思ったのか、カマイタチの群れが、一斉に俺に向かって殺到する。
「読み通り!」
俺は全力で逃走ルートを走り、奴らをミアが仕掛けた「影の地雷原」へと誘導する。
『キシャアアッ!?』
先頭の一匹が、ついにミアの罠にかかり、体勢を崩した。
「そこだ!」
俺はその一瞬の隙を見逃さず、懐に飛び込み、渾身の《アシッド・ブレード》で仕留めた。
この「格上相手の狡猾な一撃離脱戦法」を繰り返すことで、俺たちのレベルは少しずつ、しかし着実に上がっていった。
◇
「さて、お楽しみの時間だ」
俺はカマイタチの亡骸に手を置き、《悪食》と《コード・アナライザー》を同時起動する。
《対象『カマイタチ』より、風の操作と高速移動に関する情報を抽出…》
《スキルとして再構築します…》
《――スキル《風魔法》を獲得しました》
《――スキル《俊敏強化》を獲得しました》
「よし! 風魔法ゲットだ。これで、攻撃のバリエーションが増える」
俺たちの狩りは、そこから加速した。
俺が編み出した「解析→奇襲→瞬殺→捕食」の必勝コンボは、この森で完璧に機能した。
特に、森の魔物の多くが植物系や昆虫系であるため、《火魔法》は絶大な効果を発揮した。
樹木型のモンスター『トレント』を燃やし、昆虫型の魔物の群れを火の壁で分断する。
戦闘を繰り返すたびに、俺の《火魔法》の熟練度は面白いように上がっていった。
《《火魔法》の熟練度が一定に達したため、スキルレベルがLv.2に上がりました》
《《火魔法》の熟練度が一定に達したため、スキルレベルがLv.3に上がりました》
…
…
新しいスキルも非常に多く手に入れることができた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
数週間後。俺たちは、霧が立ち込める谷にいた。
ここまでの狩りで、俺たちのレベルとステータスは見違えるほど向上していた。
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【個体名】ヴァル
【レベル】40
【HP】 3240 / 3240
【MP】 2540 / 2540
【攻撃力】1780
【防御力】1920
【素早さ】1250
【魔力】1640
固有スキル:《コード・アナライザー》
固有特性:《竜の因子》
スキル:悪食(Lv.5)、栄養吸収(Lv.1) new!、粘糸(Lv.1) new!、アシッド・ブレード(Lv.3)、魔力感知(Lv.4)、魔力操作(Lv.4)、生態探知(Lv.1) new!、火魔法(Lv.7)、風魔法(Lv.1) new!、隠密(Lv.5)、HP自動回復(Lv.2)、俊敏強化(Lv.1) new!、火炎ブレス(Lv.2)、外殻強化(Lv.3)、物理抵抗(Lv.2)、魔法抵抗(Lv.1)、麻痺耐性(Lv.3)、酸耐性(Lv.3)、火炎耐性(Lv.2)、毒耐性(Lv.4)、電撃耐性(Lv.1)、言語理解
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【個体名】ミア
【レベル】34
【HP】 840 / 840
【MP】 980 / 980
【攻撃力】280
【防御力】390
【素早さ】450
【魔力】520
スキル:シャドウ・ポケット(Lv.3)、シャドウ・トラップ(Lv.2)、シャドウ・ガード(Lv.3)、シャドウ・ウィップ(Lv.1) new!
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ミアもまた、数々の戦闘経験を経て、新たな攻撃スキル《シャドウ・ウィップ》に目覚めていた。
彼女が振るう影の鞭は、敵を打ち据えるだけでなく、絡め取って動きを封じることもできる、非常に汎用性の高い武器となっていた。
「よし、準備は万端だ」
俺たちの次なる目標は『ミラージュ・バタフライ』。
人間と交流するための*あるスキル*を手に入れるための、重要なターゲットだ。
霧の谷に足を踏み入れると、目の前の景色がぐにゃりと歪んだ。
「ヴァル様、見て! ヴァル様がキノコになった!」
「お前こそ、可愛いスライムになってるぞ、ミア」
幻覚が襲うが、もはや俺たちに焦りはない。
「この程度のハッタリ、今の俺たちには通用しない」
俺は目を閉じ、《魔力感知》に意識を集中させる。
(幻覚もまた、脳に干渉する魔力の一種。ならば、その流れを特定し、逆に辿れば本体の位置が分かる!)
強化された《魔力感知》が、幻術を操る魔力の根源を正確に捉える。
「――そこか!」
俺が放った《火魔法》の火球が、空間の何もない一点に着弾し、美しい蝶を燃やし尽くした。
《対象『ミラージュ・バタフライ』より、光の屈折に関する情報を抽出…》
《スキル《幻術》を獲得しました》
次に『カモフラージュ・カメレオン』を狙う。
これはミラージュ・バタフライよりも簡単で、俺の魔力感知により、隠れている『カモフラージュ・カメレオン』を見つけ、すぐに倒すことができた。
《対象『カモフラージュ・カメレオン』より、認識阻害に関する情報を抽出…》
《スキル《ステータス偽装》を獲得しました》
戦闘後、俺はついに目的のスキルを手に入れた。
「よし、これで人間界に行っても疑われることはなくなったな」
俺は早速、《ステータス偽装》を使い、自分の種族を「人間」に偽装する。
俺と同じような解析系スキルや鑑定のようなスキルをもった人間がいてもおかしくない。
念には念をいれておいて、損はないはずだ。
お次はミアの頭に生えた角。
しかしここで問題が発生する。
「ミア、俺がお前の姿に幻をかける。角が見えなくなるように…」
「やだ」
ミアは、きっぱりと首を横に振った。
「ミアも、自分でできるようになりたい! ヴァル様に、やってもらうだけは、もうやなの!」
彼女はミラージュ・バタフライの羽を手に、自分の魔力と必死に向き合い始めた。
その瞳には、かつての弱々しい少女の面影はなく、とても強い意志が宿っていた。
俺は、そんな彼女の成長を、ただ静かに見守ることにした。
アビスル・サーペントへの道は、まだ遠い。
だが、焦りはない。
俺たちは、確実に、そして急速に、この森を喰らい、成長しているのだから。
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