表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/47

第10話:虫たちの祝宴と外の世界の足音

おかげさまでまずは10話を迎えられました(o^^o)

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!


ここまでお読みいただけたのであれば、もうこの作品のファンといっても過言ではないはずw(゜o゜)w


さて、ブクマはお済みでしょうか?もし、もし、まだというのであれば今からでも遅くありません。ぜひポチッとお願いいたします(*^^*)


それでは最新話も楽しんでいただけると嬉しいです。


『バグズ・ネスト』が完成して数週間。


俺たちの巣は、驚くべき速度で一つのコミュニティとして機能し始めていた。洞窟の入り口には見張りが立ち、内部では食料の備蓄が進み、子供たちの笑い声が響く。ミミズだった俺が、まさかこんな光景の中心にいるなんて、人生とは分からないものだ。


その日、俺たちは初めての収穫を祝して、ささやかな宴を開いた。


焚き火を囲み、焼いた肉と木の実を分け合う。インプの子供たちは、見よう見まねで覚えた歌を歌い、ぎこちない踊りを披露していた。ミアは影の友達と一緒に楽しそうに踊り、その姿にみんなが笑顔になる。つかの間の、しかし確かな平和がそこにはあった。


宴が最高潮に達した時、長老のノクテリオンが立ち上がり、静かに天を仰いだ。


「おお、神よ! このような過酷な魔界にあっても、我らを見捨てず、レベルとスキルという祝福を与えてくださり感謝します!」


その言葉に、他のインプたちも祈りの体勢に入る。

「そして何より、我らを導くヴァル様との出会いを与えてくださったこと、重ねて御礼申し上げます!」


「神様、ありがとう!」「ヴァル様、ありがとう!」


その光景を見た瞬間、俺の心に冷たい水が差し込んだ。

(いやいやいや、待て待て待て!)


俺への感謝は、まあ…素直に嬉しい。だが、なぜそこで神様が出てくる? 俺をここに遣わしたのは神様だとでも言うのか?


この世界の誰もが当たり前のように信じている『レベル』や『スキル』というシステム。それは本当に、手放しで感謝できるような「祝福」なのだろうか。

(俺にはどうもそうは思えない…)


脳裏に、前世の記憶が蘇る。

理不尽な仕様、歪んだ人間関係、それを盲目的に受け入れ、「給料が貰えるだけマシ」と自らを納得させていた社畜時代の自分。


目の前のインプたちの姿が、あの頃の自分と重なって見えた。彼らは、自らを縛る世界の理不尽さに、まだ気づいていない。


自分への感謝と、神への無自覚な感謝が同列に語られることに、俺は言いようのない気持ち悪さを感じた。


「……少し、風に当たってくる」

俺はそう呟き、宴の輪からそっと離れた。


「ヴァル様?」

ミアが心配そうに後をついてくる。俺が何も言わないのを察してか、彼女も黙って隣を歩いた。


巣の外は、二つの月が紫の大地を照らし、静まり返っていた。

俺がこの世界の「神」という存在に、漠然とした、しかし確かな疑念を抱き始めた、その時だった。


ガサッ、と。

近くの岩陰で、何かが崩れる音がした。


俺は咄嗟にミアを庇い、音のした方へ視線を向ける。

「…誰か、いるのか?」


返事はない。俺はミアに「下がっていろ」と合図し、ゆっくりと岩陰に近づいた。


そこにいたのは、ボロボロの黒い鎧を身につけ、血を流して倒れている一人の男だった。

尖った耳、浅黒い肌。インプとは明らかに違う、屈強な肉体を持つ存在だ。


俺は即座に《コード・アナライザー》を発動させる。

【ルート】

 ┣【オブジェクト名:ゼノン(魔人)】

 ┃ ┣【物理パラメータ】

 ┃ ┃ ┣【状態:重傷、魔力枯渇寸前】

 ┃ ┃ ┗【装備:高品質の魔鋼鎧(破損)、魔力伝導性の高い長剣】

 ┃ ┗【精神パラメータ】

 ┃   ┗【状態:強い警戒心、深い疲労、屈辱】


(…ただの流れ者じゃない。装備に明らかな()()()()()を感じる)


俺は警戒しつつも、彼を見捨てることはできなかった。

俺と数人のインプで、気を失ったゼノンを巣へ運び込む。インプたちは、初めて見る「強者」の姿に怯えていたが、俺は冷静に彼の傷の手当てを指示した。


翌朝、ゼノンは意識を取り戻した。

目覚めてすぐ、彼は周囲のインプたちと俺を見て、鋭い眼光で警戒を露わにした。

「…ここはどこだ。貴様らは何者だ?」


「俺はヴァル。ここはいわば、行き場のない者たちの巣だ。あんたはそこで倒れていた。それだけだ」


俺の淡々とした態度に、ゼノンは少しだけ警戒を解いたようだった。

彼が語った話は、俺が想像していたよりもずっと、この魔界が複雑であることを示していた。


現在、魔界には絶対的な王はいない。古き魔王が没して以降、力ある者たちが次代の覇権を狙い、各地で争いを繰り広げている。まさに、戦国時代。


ゼノンは、その魔王候補の一人である、知将と名高い『深淵の魔女』に仕える側近らしい。


しかし、敵対する最大勢力――武力と恐怖で魔界を支配しようとする『死王』の軍勢との戦いに敗れ、殿を務めた彼は、部隊とはぐれ、追われる身となったのだという。


「死王は、力こそが全てだと信じている。奴が覇権を握れば弱者は、ただ搾取されるだけの奴隷か、塵芥だ」


ゼノンの言葉に、インプたちが息をのむ。

「あんたたちの巣は、興味深い」


ゼノンは、傷ついた身体で巣の中を見回し、ポツリと呟いた。


「弱き者たちが、知恵と協力で、これほどのコミュニティを築き上げている。…あるいは、これこそが、我が主が目指す世界の、一つの形なのかもしれん」


彼は、俺が知りたかった情報も教えてくれた。


「『人間界』か…確かに、そんな世界があると聞く。死王の軍ですら、そこから流れ着くという武具や『技術』には、一目置いている。だが、その境界は固く閉ざされ、誰も越えられぬ」


数日後、傷が癒えたゼノンは、旅立ちの準備を始めた。

「ヴァル、と言ったか。この御恩は忘れん。いつか必ず、我が主と共に、この借りは返させてもらう」


「別に、借りを返してもらうために助けたわけじゃない」

「ふ…違いない」


ゼノンは不敵に笑うと、最後に一つ、忠告を残していった。


「この『バグズ・ネスト』は、いずれ死王の耳にも届くだろう。この平穏が永遠に続くと思うな。力をつけろ。でなければ、お前らの理想は、力によって踏み潰される」


ゼノンの背中が見えなくなるまで見送った後、俺は決意を固めた。

神への違和感、竜の謎、そして巣の未来。


このまま、この小さな巣に閉じこもっていても、何も解決しない。

答えは、外の世界にある。

「ノクテリオン、俺は旅に出る」


俺の言葉に、長老は驚きながらも、どこか予期していたかのように頷いた。

「ヴァル様が決めたことなら、我らは何も申しません。ですが、一つだけお願いがございます」


ノクテリオンは、俺の隣に立つミアの肩に、そっと手を置いた。

「どうか、ミアをお連れください。あの子の力は、まだ未知数ですが、必ずやヴァル様のお役に立つはずでございます」


「ヴァル様と、いっしょにいく!」

ミアが、俺のローブを強く握りしめて、真っ直ぐな瞳で訴えかける。


俺は、彼女の頭をくしゃりと撫でた。

「…ああ、分かった。足手まといになるなよ」

「うん!」


前世では、ただ流されるだけだった。

だが、今は違う。


隣には、守るべき小さな手がある。背後には、帰るべき巣がある。

行き先を決めるのは、他の誰でもない、俺自身だ。


こうして、俺とミア、二人だけの最初の旅が、始まるのだった。

今回もお読みいただき、本当にありがとうございましたm(_ _)m


第一章は折り返し地点まで来ました。

ここから、どんどん世界は広がっていきます。


そして20話目には作者イチオシのキャラクターが出てきますので、ぜひもう少しお付き合いくださいませ(^◇^)

早く登場させたくて、ウズウズしてます笑


今後の展開に向けて、皆さんの応援が何よりの励みになります。


「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ぜひ**【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】、リアクション、そして【感想】**で応援していただけると嬉しいです! 誤字脱字報告も大歓迎です。


皆さんの声が、私の創作活動の大きな原動力になります。


次回更新も頑張りますので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ