表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/47

第0話:転生したらミミズだった

数ある作品の中から、本作をお選びくださり、本当にありがとうございます。


物語の全体プロットは完成してますが、書き始めたら、キャラが勝手に喋り始めるわ、動き始めるわで作者自身驚いてます笑


作者の思惑通り、話が進んでいくのか、みなさまと一緒に楽しんで書き進めていけたらなと思っています。どうぞ、お付き合い頂けますと幸いですm(_ _)m


※毎日更新予定です


それでは、どうぞ!

 それは泥水の中から、無理やり髪を掴んで、引きずり出されるような、暴力的で不快な覚醒だった。


「――ぅ、あ……」


 喉から漏れたのは、意味をなさない呼気だけだった。思考が定まらない。俺は誰だ?


 ここはどこだ?そうだ、俺は確か――。



 ◇


『相馬くん、この仕様書通りに実装してくれるだけでいいんだ。クライアントの要望だからね』


『でも、このままではユーザー側に致命的な不利益が……』


『――いいから、やるんだ。これは、決定事項だ』



 脳裏に蘇るのは、無機質な会議室の光景。

 上司の冷たい声。


 ディスプレイに映し出された、歪んだプログラムの設計図。


 そうだ。

 俺は、相馬そうま とおる。三十五歳。


 下請けの下請け、孫請けともいうべき零細IT企業に勤める、しがないシステムエンジニア。


 あの日、俺はまた「歯車」になることを選んだ。会社の利益のために、ユーザーを欺くシステムの一部を、この手で組み上げた。


 胸に澱のように溜まっていく罪悪感。それを無視して、いつものように終電間際の駅へ向かう。



 ――そして、目の前に滑り込んできた電車のヘッドライト。背中を押されたような、あるいは足がもつれたような、曖昧な感覚。


 それが、俺の最後の記憶。



 肉体が砕け散る瞬間、思考だけが異常な速度で回転した。

《…イレギュラーな魂を検知しました…》

《…リジェクト・ゾーンへ転送を試みます…》


 なぜだ。なぜ俺は、あの時も声を上げなかった?


 システムの欠陥も、人の心の痛みも、本当は全部『分かっていた』はずなのに。知らないフリをした。


《…魂の状態に基づき、スキルを生成…》

《…スキル『解析』を生成…》


 あの理不尽な要求の、本質に気づいていながら。

 俺はそれを、全部“飲み込んだ”。


《…魂の状態に基づき、スキルを生成…》

《…スキル『悪食』を生成…》


『もし、やり直せるなら――』

『もし、俺に本当の力があったなら――!』


《…エラー個体を生成…スキル生成にリソースが割かれたため、最低限のリソースで生成。個体ワームを生成…》


 叫びは声にならず、魂を焦がすだけの業火となった。その時だった。


 目の前に、ありえない光景が広がった。


 青白い光の線が、無数に俺の身体――

 いや、魂とでも言うべき中心点を貫き、複雑な幾何学模様を形成していく。


 まるで、未知のプログラムがインストールされるような感覚。そして、冷たい機械音声のようなものが、頭の中に直接響いた。


《…エラー個体を隔離…リジェクト・ゾーンへ転送します…》


 意味不明の単語の羅列。

 拒絶(リジェクト)?何を言っているんだ?


 俺は――。



 ◇


 思考はそこで途切れ、俺の意識は深い闇へと突き落とされた。


 次に目覚めた時、俺は、ぬめぬめとした粘液に覆われた、細くて長い、ナニカになっていた。


 手がない。足がない。

 俺の四肢はどこ!?


 周囲には、見たこともない奇怪な植物が瘴気のようなヤバい光を放ち、湿った土の匂いと腐臭が混じり合った空気が肺――いや、それに代わる器官 (たぶん)を満たす。


「……これ、ミミズかよ!」


 あまりにも皮肉すぎる結末に、逆に声が出た(気がした)。


 地を這うようなコードを書いていた俺が、ガチで地を這う生き物になるとか、どんなブラックジョークだ! 神様、ちょっと面談よろしいか? 労基に訴えるぞ!


 ゴロゴロと、低い地鳴りのような音が響く。見れば、俺のすぐ側を、トカゲにカマキリの鎌をくっつけたような、悍ましい化け物が通り過ぎていく。


 なんだアレ!? トカゲとカマキリの悪魔合体!?


 おいおい、この世界のデザイナー、正気か?

 コンセプト会議絶対荒れただろ!


 混乱の極みに達したその時、不意に、俺の視界の端に半透明のウィンドウがポップアップした。ARか!?


《スキル《解析》が起動しました》

《対象:粘菌『ルミネラ・モドキ』を解析》


《表示:この粘菌は微弱な魔素光を発するが、栄養価は皆無。しかし、体内に特定の酸性成分を蓄積する性質を持つ。推奨アクション:摂食は非推奨》


「……なんだ、これは」


 幻覚か? ゲーム?いや、まるでプログラミング画面だな。


 あの時聞こえたスキル生成ってやつか。まさか俺の後悔が、こんな能力に? 俺は試しに、すぐそばで青白く光るキノコに意識を向けた。


《対象:キノコ『アシッド・キャップ』を解析》


《表示:傘に強酸性の溶解液を含む。危険度:高。接触により、対象の体組織は98%の確率で溶解する。推奨アクション:即時離脱》


 あ……っぶねぇえええええ!!


 さっきまで「腹減ったし、とりあえずあのキノコでも食うか」とか考えてたぞ! 食べてたら俺、ミミズ汁になってたじゃん! このスキル、生命線すぎる! これなしで放り出されてたら開始5分でゲームオーバーだったぞ。鬼畜ゲーか!


「……だったら、もう一つのスキルは」


 あの時聞こえた『解析』と『悪食』。俺は『悪食』スキルについて、解析を念じてみた。


《対象:『悪食』を解析》


《表示:どんなモノでも美味しいと感じ、食べることができる。推奨アクション:摂食》


 うわ、味覚の強制書き換え機能付きかよ! しかも推奨アクションが「摂食」って、ゴリ押ししてくるなこのシステム!


 俺は試しに、死んで間もない小虫の死骸に、おそるおそる口器 (らしき部分)を触れさせた。

《スキル《悪食》が起動しました》


《対象:『クリスタル・ビートル』の死骸を摂食しますか? YES/NO》


「……YES (おそるおそる)」


 選択した途端、微弱な光の粒子が死骸から俺の身体へと吸い込まれていく。


「おっ、実食しなくていいタイプか! よかったー! 虫の死骸をムシャムシャとか、いくらスキルで美味しく感じるとか言われても、元日本人としてのプライドが許さん! 」


《スキル《解析》が起動しました》

「ん?」


 スキル起動と同時に、その虫の生態情報――硬い外殻の組成、好む餌、天敵などの詳細なデータが、俺の脳内にライブラリ化されていく。


《条件を満たしました。対象:『クリスタル・ビートル』のスキル《硬化》をコピーします》


「なるほど! GETリクエスト(摂食)で詳細なJSON(生態データ)が返ってきて、さらに特定の機能 (スキル)をライブラリ(俺自身)に追加できる、と。完全にAPI(連携された仕組み)じゃねえか! 理解はしたが、俺は一体どうなったんだ!?」


《スキル《解析》がLv.2に上がりました。》


「おお…レベルアップもか! こういうのはテンション上がるな!」


 すると先ほど現れた半透明のウィンドウがポップアップし、俺のステータスが表示された。どれどれ、俺様の華麗なるステータスは……っと。




 ________________________________________

【種族】ワーム

【個体名】トオル ソウマ

【レベル】1

【HP】 5 / 5

【MP】 3 / 5

【攻撃力】3

【防御力】5

【素早さ】1

【魔力】0

 スキル:解析(Lv.2)、悪食(Lv.1)、硬化(Lv.1)

 固有スキル:

 称号:

 ________________________________________


「……いやこれ確実に死ぬやつでしょ!!」


 HP『5』!? 攻撃力『3』!? 防御力『5』!?

  待って、スライムより弱くないかこれ!?


 ちょっとそこの粘菌に体当たりされただけで死ぬぞ!? 初期装備が『絶望』ってレベルじゃねえ! リソース不足で生成されたって言ってたけど、不足しすぎだろ! メモリ1KBのPCで、最新OS動かせって言ってるようなもんだぞ、これ!


 ここがどこだか分からないが、ひとつ確かなことがある。この場でいま最弱なのは、間違いなくこの俺だということ。


 ……だが、俺には前世で培ったプログラミング的思考と、このスキルがある! こうなったら、このクソゲーみたいな世界で、なんとしてでも生き延びてやる!


 ……まずは、あのトカゲカマキリにバレないよう、そーっと移動するところから始めようか……。


 あ、素早さ『1』だったわ。無理ゲーだこれ。


お読みいただき、本当にありがとうございましたm(_ _)m


今後の展開に向けて、皆さまの応援が何よりの励みになります(>_<)


少しでも「面白かった!」「続きが気になる!」と思っていただけたら、ぜひ**【ブックマーク】や【評価(★〜)】、【リアクション】、そして【感想】**で応援していただけると、作者が泣いて喜びます(そして執筆が捗ります)(#^.^#)


誤字脱字報告も大歓迎です。


皆さまの声が、皆さまが考えてる100万倍、私の創作活動の大きな原動力になります。


次回更新も頑張りますので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです(*^ω^*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
目を覚ましたらミミズになっていたという衝撃的な展開に思わず声を出して笑ってしまいました(家族にへんな目で見られてのは内緒・・・)システムエンジニアだった主人公ならではの視点で異世界の状況やスキルをプロ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ