表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/83

第001話 追いつめられた魔王


「勇者のレベルがすでに俺を超えている……だと!?」


 側近のルシウスから勇者の近況を聞かされた俺はあんぐりと口を開く。

 ありえない。俺のレベルはすでにカンストしている。

 つまり俺のレベルを超えるなど不可能なはずだ。


「はい、魔王様。

 勇者のレベルは現在999にまで達しています。

 各種装備も神話級のものをコンプリートしており、もはや戦闘能力は人外の領域です。

 いえ、化け物と言った方が適切でしょう」


 ルシウスは長い銀髪をかき上げながら神妙な顔で続けた。

 にわかには信じがたい情報だが、ルシウスの使い魔がリサーチしたネタであれば確かなのだろう。

 今までゴシップなど掴まされたことがない。


 だけどレベル999? 

 いつからここはレベル3桁の世界になったんだ!?

 俺のレベル99だぞ!?

 もう桁からしておかしいじゃん!!


「さらに勇者一向は魔国領内の塔を巡回しており、あと一週間もすれば魔王城に到着する見込みです」


「……まじかよ」


 立て続けに悪い話しを聞かされ、思わず頭を抱える。

 世界の半分をおまえにやる――そんな話しを持ちかけたところで勇者はきっと応じないだろう。

 よくある勇者と魔王の物語じゃあるまいし。

 どう考えても戦闘は避けられない。

 ただ、正々堂々戦ったとして、そんな化け物みたいな勇者に太刀打ちできるのか?

 レベル差だけみればアリとゾウくらいの差があんぞ。

 

「ルシウス。

 ちなみに現時点で俺の勝率はどのくらいある? 

 お前の見解を正直に答えてくれ」


「――いいのですか?

 まことに申し上げにくいのですが、今の魔王様では万に一つも勝ちはないかと。

 つまり0パーセントです。

 私の見立てでは戦闘開始直後、一瞬のうちに勇者に首を斬り飛ばされ、数秒後には跡形もなく全身を消し飛ばされます」


 ルシウスの出した見解にわなわなと震える俺の身体。

 次の瞬間、平静をギリギリ保っていた俺の感情が火山の如くドカンと噴火した。


「どおおしてだよっっ!!!!!!

 やっとあのクソ魔王をぶっ殺して新しい魔王になれたってのに!! 

 これで俺は終わりなのか? 

 まだ魔王になって一週間しか経ってないんだぞ!?

 魔王着任期間が数週間だなんて歴代の魔王でも聞いたことねーよ!!」


 玉座から崩れ落ちた俺は地べたに両膝と両手をつきガックリと項垂れる。

 俺のこの10年間はなんだったのか。

 ガキの頃から死に物狂いで魔国領を生き延び、ようやく魔王の座にまで昇りつめたってのに。


 魔王城の部屋で毎日だらだら過ごしてうまい飯をたらふく喰う俺の夢はどうなる?

 魔国領を立て直す計画だって色々考えてあるんだぞ!?

 どうして勇者なんかにぶち壊されなきゃならない。


「もうおしまいだ……グッバイ俺のブルジョア生活。

 俺は着任期間最短の魔王として未来永劫歴史に汚名を刻まれるんだ」


「魔王様!! まだ諦めるには早いです!!

 実はとっておきの秘策を用意しております!!」


 絶望に苛まれ頭を抱える俺にルシウスが仕切り直すよう切り出す。


「…………秘策? なんだよそれ?」


「無論、勇者の弱点を突くのです!! 

 実は勇者は無類の女好きという情報を掴んでいます。

 常に女性と行動を共にし宿屋も女性と相部屋。

 男のくせに連れションすら女と行く徹底ぶりです」


「なんだそりゃ?

 ちょっとキモいレベルだな。

 で? それがどう秘策に繋がるんだ?」


「はい、正確にはリアンの案なのですがまずは色仕掛けで勇者を油断させます。

 勇者が鼻の下を伸ばしている隙に対策を練るのです!」


「な、なるほど!!

 確かにリアンなら見てくれだけは良いもんな。

 人間から見ても美人な部類に違いない」


 俺は手のひらの上でポンっと握り拳を叩き、うんうんと頷く。

 リアンはルシウスとは別の側近で女の魔族だ。

 俺やルシウスと同じく魔族と人間のハーフなため外見は限りなく人間に近い。

 性格に多少難があるが、まぁ時間稼ぎくらいにはなるだろう。


「惜しいですが少し違います。

 詳細は別途リアンの部屋で話しますので今から一緒にご同行ください」


 なんでリアンの部屋?

 別にここで話してくれてもかまわんのだが。

 頭にはてなが数個浮かぶも迷っている場合ではない。

 踵を返したルシウスのあとに続き、俺も急いでリアンの部屋へ向かうのだった。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ