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第54話 どこでも最強スキル

「どういうことですか? βプログラムは消えたはずじゃないんですかね」


「確かに消えたはずだわ。現に私はもう力を失ってる」


「私も大体の力は失っているわよ。でもこの予知能力は健在なのよね」


「これっていったいどういうことなんだ……」


「さっぱりだわ」


「何々? みんな何話してるの?」


 麗美はゲーム具現化の全ての記憶が消えているから無理はない。俺たち以外はみんなそうである。そもそもあんなゲームが具現化する出来事など忘れた方がいいし、二度と思い起こすこともないはずだからだ。


「麗美ちゃんは知った方がいいわよ。あなたも運命に導かれてここに集まった存在だもの」


「何?」


「ちょっと、由愛! 麗美に話す必要ある?」


「彼女もゲームの被害者の一人、私の予知能力がある以上ゲームは消えてない。いずれまた何者かが異形の力を持って現れるわ」


「そんなことって!」


「それってαみたいなやつがまた出てくるってこと? 冗談じゃないわよ」


「それにそうなったら私たちには戦闘能力がないわ」


「あるじゃない、戦闘能力なら」


「何を言ってるの? ウイルスプログラムは全て消滅したのよ。つまりあなたの力は最も別の何かってことになるわ由愛」


「ええ、その別の何かに春樹氏も該当しているわ。彼のレベル100スキルは健在よ」


 春樹氏ってなんだ……。


「どういうこと?」


「おそらく私の力は能力の分離、一種のバグみたいなものよ。プログラムウイルスが消滅しても、その一部である予知能力のみが残った。強すぎる力は痕跡としてその人に残るのよ」


「じゃ、じゃあ、春樹の力も健在ってこと?」


「ええ、試しに何か打ってみて」


「えええ? あんまり私生活で意識したことなかったなあ」


 レベル100スキルはいつもゲーム世界の中に閉じ込められた時にステータス画面を開くイメージでその中から選択している。


「じゃあレベル100スキル『浮遊』」


 浮遊のスキル体を浮かせることが出来る。


「ちょっと、どうなってるのこれ」


「嘘だろ?」


 なんと俺の体は浮いたのである。


「はあ、やっぱり私の思った通りね」


「こ、これって」


「ええ、彼のレベル100スキルは私の傍にいる時だけ現実でも使うことが出来るってこと。いわば私の近くの全てはVRMMO世界が現実になってるのと同じ状態になってるってことね。見かけでは分からないけど」


「はあ?」


 その場は凍り付いた。


「なになになに? みんないきなり黙っちゃって、何があったの? それになんで春樹君が浮いちゃってるのよ」


 麗美は完全に置いてきぼりである。


「つまり春樹は由愛の傍にいる時だけ最強になったってこと」


「さ、さいきょう? 何その表現ゲームみたいでおもしろーい!」


「ありえないわ、こんなことって。これじゃあまた非日常が始まるってこと?」


 麗美と一転してみんなの反応は深刻だった。


「それはないんじゃない? ウイルスプログラムは全て滅びたし、その所持者であったαはゲーム世界に消えたわ」


「でも他にナノの研究施設にはたくさんの人がいたんじゃない?」


「いや、彼らはみなα、β、γのプログラムの薬を投与されてたんだよ。そして適合者は礼君と私だけだったし、γは不完全な適合を1人してたかな」


「それって堀本凜のことじゃ?」


「そうそう、その人だよ。彼女を訪ねてみる必要がありそうね」


「俺たちと同じ状態になってる人物は堀本凜ってことか。これは確かめてみるか」







「結論から言うと、私は何も能力を引き継いでない。今はただの一般人だ」


「……」


「ちょっ、君たちその反応はなんだ。全く信用してないようだけど」


「春樹氏お願い!」


「レベル100スキル鑑定」


 俺は鑑定スキルで堀本凜に残存する能力を解明した。


「うーん、どうやら本当に能力はないようです」


「はあ、これで安心ね」


「ちょっと待ちたまえ! 春樹君、君はあのチート能力を現実でも使うことができるようになったのか」


「ええ、まあ、色々ありまして」


「最強かよ!」


 とりあえず堀本凜が危険因子になることはなかった。


 これでとりあえず脅威はないと断定できたのである。


「ふう、なんか色々あったけど、とりあえず俺と由愛の他には、能力が使える人物はいないということがほぼ確定ということだよな」


「ええ、まあそうなるわね」


「うんうん! 私もすっかり理解出来ちゃった。じゃあ由愛さんと春樹君が一緒にいれば、最強じゃない。今度私のためにレベル100スキルを使ってみてよ」

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