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表紙
野戦飛行場には見慣れた飛行機が並んでいた。二式単座戦闘機『鍾馗』と四式戦闘機『疾風』だ。旧日本陸軍の迷彩塗装に日の丸までついていては見間違えようがない。飯島満治は野口雄二郎に聞く。
「大丈夫なのか」
「ああ、米軍のお墨付きだ。二式戦は大戦期最良のインターセプターで、四式戦は最上のマルチロールファイターだ」
「なんだって」
野口は落ち着いて答える。
「迎撃機の最良は素早く上昇して高度をとれることだ。千五百馬力の二式戦の上昇力は二千馬力の米艦戦を上回り、二千八百馬力の米機に匹敵する」
「米軍は試験飛行したのか」
「四式戦は同じ二千馬力の米機を速度と上昇力で上回った。今は燃料も潤滑油もプラグも米国仕様だ。液冷のYak-3やYak-9を凌駕する」
「ソ連にはジェット機もいるぞ」
「大戦中のドイツに追いついただけさ」
野口の表情は変わらなかった。