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第21話 収穫祭にドラゴン

「よっし、畑の方へ行こう。井戸も気になるから、様子を見ようか」


 女神達は、快い返事をくれるだろう。


「大神くん。ブーイングが起こります」

「ブンモモモしちゃうリン」

「直坊、古代遺跡は女神が大好きなスポットなのだと知らないのかえ?」


 結局、七柱とも文句だけは上等だった。


「ここにある調理器具は、もう拾ったんだ。用はないだろうよ」


 皆が、立ち去ろうとしないので、遺跡側に立って、両手を広げた。これ以上、来るなとのジェスチャーとして。


「水仙先輩! 女子高生女神の神髄を大神殿に教えてやってください」

「おおー。菊子か。では、おおがみファームに、【雅塚】と【合奏】の合体技を仕掛けるかいの」


 同じ学校だが、年代も違う。先輩も後輩もあるのか。それにしても、厳しそうな高校だよな。


「あのさ、特技ならエモいスローライフのために使おうな。だから、ボクは、畑やブンモモモさんの所へ行くのが先決だと思うよ」

「では、ここで、【八栞】を使います」

「待った。秋桜さん。どうして、脱ぎたいんだよ。冬なんだろう? 寒いじゃないか」


 無茶を仰るうさぎさんだ。これでは、毬藻が巨大化する。


「折角、集まっていることだしな。ボクを最後尾に畑へレッツラゴーだ。いいね」


 半強制的に移動を決めた。生まれた順に、春、夏、秋、冬と並んで行く。ちょっと可愛い光景だな。俺は、道々話すことに決めた。


「そうだ。新人も増えたことだし、おおがみファームの大臣の発表をする。そうしないと、総崩れになりそうだ」


 先ず、春チームか。


「櫻女さんは、『小麦大臣』、手伝いは他に頼んでも大丈夫だからね。畑に行けば小麦があるから、早速収穫を始めよう」

「うん、大神くん。分かりました」


 櫻女さんと入れ違いに菜七さんが振り向く。


「菜七さんは、『蔬菜大臣』。分からない食べ物は、本で調べよう」

「はい、大神さん。それならありがたいと思う」


 次に、夏チームだな。


「紫陽花さんは、『茸大臣』。茸の自然な収穫と人工栽培を試みて欲しい。分からないことがあったら、相談して。カタツムリは食べられるか実験だな」

「大神様。ふう、そうです。奇妙よね。……茸なんて。紫陽花のせいか」


 ここで突っ込みを入れないのが男ってもんでしょう。


「百合愛さんは、『乳大臣』。基本的にお世話と搾乳だけで、殺菌とかの工程は、ボクと行おう。ときには助け合ってもいいと思う」

「できるよ。直きゅんのためだし、リンリン」


 えーと、秋チーム。


「菊子さんは、『果樹大臣』。栗みたいなのがまさかウニの訳はないと思うので、拾うだけでいいよ。他には、新しく食べられそうなものを探して来て欲しいな」

「百合愛と一緒にいられないので、却下していい?」


 頭の後ろに手を組んで、ダラダラしたね。菊子さん。


「バブちゃんか! 小さなワガママが通ると思うのか」

「オレも、七柱の一人なんでね。なんなら、【雅塚】で一瞬にして収穫を終えてもいい」


 他のJK女神もそれができなくもないだろう。


「その辺りは、お任せするが」

「そもそも、いがとか、触れたくない」

「はあ? なら、一人だけぶらぶらと遊んでいればいいだろう」


 俺は、二の句が継げなくなった。仕方がない、放置だ。


「直きゅん。大丈夫。この百合愛の【猛愛】セカンドシーズンで、栗だけでもどうにかするから」


 どうやら、想っているのは、片恋なのか。


「はい、次ね。秋桜さんは、『花卉(かき)大臣』。お花を育てて、生活に彩が欲しい。もし、エディブルフラワーがあったら、毒見を探すから、ボクに報告して」

「私は、静かに本を読む時間があればいいの。大神直人さまへのお手紙もしたためたい」


 俺の頭にハテナが浮かんだ。


「分かり難いお返事じゃないかな。花が嫌いかい」

「いえ、押し花にして、栞にしたいです」

「なら、OKということで」


 冬チームか。水仙さんだけだな。


「水仙さんは、『(かわ)大臣』。この井戸の水脈を使って、川を探し当てて欲しい。そこで魚が見付かったら、手づかみでいいから、美味しそうなの持って来てくれ。正直、水脈の方が発見する価値ありだけどな」


 俺は、一つの大きなため息をついた。


「各大臣は、大変だと思う。だが、お互いに助け合って行こう。何かの縁で、ここへ花から召喚されたり、ゲームから入ってしまったのだからな」


 俺は、立ち上がって、拳を胸に当てた。こうして、一区切りをつけられ、おおがみファームの大神直人として、少し落ち着いた頃、金の波打つ小麦が目に飛び込んで来た。


 ◇◇◇


「よっしゃあ――! 収穫祭をするぞ!」


 先程、ほぼほぼイエスだったJK女神の反応がなかった。俺と目を合わさないようにしている。


「ええ? 収穫するってわくわくしないか? エモいスローライフの最たるものだろうよ」

「花園の守り神が代弁するニャ」


 一人、浮いちゃって、恥ずかしいな。


「ニャートリー先生。楽しいから、皆で、わちゃわちゃしようって伝えて欲しい」

「皆、過去に拘るのは忘れるニャン」


 揉めている一部JK女神がいたって、あれか。


「収穫祭だけでいいから、悪い記憶を飛ばして欲しい」

「それなら、花園の守り神の力を使えるニャン」

「頼んだよ」


 ニャートリーは、ピンクのふわもこが分からない位、太陽を背に消えて行った。そうかと思うと、ぐんぐんと近付いて来て、巨大なピンクの玉になる。羽ばたかせて、急に空に止まると叫んだ。


「ニャートリーノ! 大いなる嘴がその名を呼び給う。現れし、【花園のドラゴン】――!」


 天空に小さな点ができたかと思うと、約二秒で巨大生物が空に浮いた。


「ドン! ドドン! ドロロ……。ドドドン!」

「こ、これは?」

「フハハ! フハハハ……」


 高らかな笑い声が轟いた。


「スゲエなあ――。存在が、大き過ぎる!」


 俺は、固唾を呑む。ゲームでペガサスには乗ったが、ドラゴンは、未知数だ。


「その願い、叶えたし。我が、花園のドラゴン」

「ボボボボ……」


 燃えている訳ではない。


「ボ、ニャリ? どうしたニャン」

「ボクは、おおがみファーム代表、大神直人だ」


 JK女神の悪い記憶を飛ばして、楽しい収穫祭をする。俺は道を誤ったとは思わなかった。

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