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本日2話同時投稿です。
順番にご注意くださいませ。
私が起きた事で薄暗かった部屋のカーテンが開けられ、日差しが部屋に入る。
やはり自分はベッドに寝かされていて、程なくして現れたお医者様の診察を受けた。
「怪我をしている部分意外で痛みはありますか?」
「……ぁ…ヒュッ…ごほっ!」
質問に答えようとしたら喉に痛みがはしって、思わず咳き込んだ。
「あぁ、声を出さないでください。喉も熱傷しているので頷くか首を振るだけで答えて」
咳き込んで痛む喉に涙を滲ませながら、私は小さく首を振った。
診察を終えたお医者様と先ほどの若い男性がドアの付近で話す内容に耳を傾ける。
「予断はできませんが、このまま順調に快方に向かえば大丈夫でしょう。ですが…傷は残ります」
「…構わない。…生きていてくれれば、それだけで構わない」
あぁ、これだけ怪我していれば傷跡も残るでしょうね。
診察中にわかったが、私の体はあちこち包帯が巻かれていた。
熱傷で痛む喉から連想できる怪我は火傷だろう。
特に左腕は二の腕から指先まで包帯に巻かれていて殆ど力が入らない。
右手も同じような状態だが、こちらはゆっくりとなら握ったり開いたりできた。
若い男性はお医者様が部屋に入るのと入れ違いに出て行き、代わりにメイドのようなお仕着せの若い女性が入って来ていた。
立ち去るお医者様をドアの向こうで見送った男性が部屋に入ってくる。
日差しの入り込んだ部屋で、漸く男性の顔をはっきり見ることができた。
あら……美形
とても整った容姿の男性だ。
年の頃は30前後だろうか?
銀髪に青い目なんて、海外のモデルさんみたい。
っていうか、どちら様?
こんな美丈夫知り合いに居ませんけど……
いろいろ聞きたいことがあるのに声が出せないので何にもわからない状態が続いている。
ここは何処で、あなたは誰なの?
男性はベッドの横にあった椅子に座ると、視線を合わせるように上体を傾けた。
「フィー?」
そして、とても優しく慈しみに溢れた声で私に呼びかける。
ふぃーって名前……だよね?
私に向かって言ってるんだから私を呼んでいるんだろうと察しはつくけど……
私「フィー」って名前じゃない……
人違い……?
ってことは……
「フィー? どうした?」
いや、たぶん人違いです。
って言いたいのに、喉が痛くて口からは掠れた吐息みたいな音しか出てこなかった。
「あぁ、喉も痛めているから無理して声を出さなくて良い。俺の聞き方も悪かったな」
その人は微笑むと私の頬をそっと撫でてくれた。
「何か食べられそうか?」
お腹は空いていないので首を小さく振った。
「そうか…少しずつで構わないからゆっくり身体を治していこうな」
愛おしそうに微笑まれてしまった。
やめてぇ……そんな綺麗な顔で見つめられたら勘違いしちゃいそう!
「フィー、今は辛いだろうけど少しずつ良くなる。大丈夫だ俺がついている」
なんて…イケメン!
ヤバイ……こんな素敵な人が私に……
あぁ……私が後20年若ければ……
っていうか、イケメンに見つめられてポーッっとしている場合じゃないぞ自分。
こんな美丈夫に微笑まれて、本当に眼福なんだけど…ここが何処で、なぜ怪我をしているのか説明して欲しい。
いや、説明もして欲しいけど、この人が親しげに呼ぶ「フィー」って人と間違いなく勘違いしてるよね?
イケメン外国人モデルは存じ上げないし「フィー」って呼んでいるから、その人は私とよく似た顔立ちの日本人なのかな?
それにしても、日本語上手だな……
……?
うん?
見た目外国人なのに日本語話してる……
んんっ?
ちょっと、まった……
いや、今の今まで気づかなかったけど私……
あれ?
日本語じゃない!
ずっと話している言葉は日本語じゃないのに、日本語と同じように理解してる自分に愕然とした。
衝撃の事実に呆然とする私に気づかず彼は話し続ける。
「それから、アレスも大丈夫だ。両手足に少し火傷をしているが、軽症だから問題ない。ただ、母親を恋しがって一日中泣いているがな。それでも、生きてくれているだけで俺は嬉しいよ。フィー、本当によく頑張ったな。あの火事のなか本当に……弟を抱えながら、よく無事で……」
そう言って泣きそうにクシャッと顔を歪めた。
また知らない名前が出てきたって言うか、えっ? 火事……
やっぱり、火事に巻き込まれたね。
私、いつ火災にあったの?
そう思ったとき、ドアの外から泣き声が聞こえてきた。
「あぁ、アレスに会いたいだろうと思って、呼んだんだ」
ドアがノックされ彼が「入れ」と答える。
そっと開かれた扉からお仕着せに身を包んだ中年の女性とその腕に抱かれた幼児が入って来た。
彼と同じ銀髪の子は両手足に包帯が巻かれているが、大声で泣いているところをみると大きな怪我ではないのだろう。
泣き喚いている幼児に女性が優しく声をかける。
「アレス様、お姉様ですよ」
声をかけられた幼児が涙に濡れた青い瞳で部屋の中を見回す。そして、ベッドで寝たままの私と目が合った。
「ねーたま?」
「……!」
幼児に呼びかけられた瞬間、目の前が真っ赤に染まった。
熱い炎が燃え盛る
倒れる父
逃げる母と弟と私
そして、私と弟を庇って倒れた母
幼い弟を両腕で必死に抱えて出口を探して逃げ惑う私
「ぃゃ……」
痛む喉から掠れた音が漏れる。
「フィー?」
「ぅ…ぁ…っ!」
「フィー!」
今まで生きてきたなかで経験したことのない激しい頭痛と共に、私の意識は途切れた。
拙い文章を最後までお読み頂き誠にありがとうございます。
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