さくら編・13話
さくら編 13話。
実はさくら、たまーにガーベラという侍従に勉強をこっそり教わっていました。
ガーベラはとっても良い子です。
【さくら視点】
あれから暇が出来ればいつもあの通りを通ってコウが来るのを待った。
家や仕事で嫌なことがあっても、あの歌声を聞けば気分も紛れる…それどころか幸せになれた。
6歳になって少し経った頃には、既に祖父は寝たきりの状態となっていた。全く治る様子もない。
侍医さんからもそう診断されて、祖父がまだ少し元気な時に退位と即位の儀式もしてしまった。
…別に寂しくない。なんならいない方がマシだった。
だって…だって……
__とうとう、祖父、万紅は亡くなった。
長い長い葬式が終わり2週間後くらいにようやく落ち着いた。
そんなある日侍従からとある手紙を貰った。
「さくら様、少しよろしいでしょうか?」
コンコンとノックしてそうこちらを伺ってきた。
さく「どうぞ」
「失礼します。ガーベラでございます。さくら様宛の手紙を預かっておりましたのでお渡しに来ました。」
さく「あーありがとう」
_ガーベラはママの侍従だった精霊だ。
確か、ママより6歳くらい年上なんだっけ?
とても優しくて、色んな精霊から愛されている。
茶髪がよく似合い、いつもニコニコしている。
さく「これは……。…万紅……じいじ…?」
そこには万紅という名前が書かれていた。
ガー「ええ、お爺様からのお手紙でございます」
さく「…どうして?」
ガー「お亡くなりになる前に手紙を書かれていたそうですよ」
違う……なぜ…
さく「……どうして」
わたしに?
わざわざ手紙なんて。
ガー「さくら様へ伝えたいことがあられたのでは無いでしょうかね?」
…普段何も話しかけてこないくせに。
ガー「お爺様から『自分が死んでしばらくした頃に渡すように』と言われておりましたので…。
きっと、お爺様が亡くなられてからしばらくはさくら様がお忙しい…という事を気遣ってのことだと思いますよ。…私はこれで失礼致しますね。1人でゆっくりお読みになって下さいね」
ガーベラはそうニコリと笑うと部屋を出ていった。
全く手紙の内容が想像できないまま封を開ける。
手紙をそっと取り出してゆっくりと開ける。
_そこにはこう書かれていた
『すまなかった。愛しているよ、さくら。』
ただ、ただそれだけ書かれていた。
たったの2文。
とっさに破り捨てようとしてしまった。
なんで、どうして、じゃあ…
今までそんな関わり方をしてきたのか。
こんな手紙を書いたのか。
手紙に残したのか。
なぜ、なぜ_
文字が読めなくなった。
視界が滲んでしまった。
泣いているようだ。
手紙をそっと畳んでしまった。
そして手を目元に運んで、涙を拭いた。
拭いているのに、ずっと視界は滲んだまんま。
_その日は夜ご飯も食べずに寝てしまった。
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