死んだのに転生しませんでした
俺はどこにでもいる量産型の男子高校生だ。
ひとつ変わったところと言えば、両親が転勤族で海外を転々としているため広々とした家で独り暮らしを送っていると言う点だ。
両親の海外転勤が決まった際、最初はついていこうと考えた。
しかし、男子高校生にとって独り暮らしはまさに夢だ。
両親に絶対バレない環境で学校帰りに女の子を連れ込んでキャッキャウフフできるのだ。
そんな千載一遇のチャンスを逃すわけにはいかない。
そう思った俺はひとりで日本に残ると両親に伝えた。
最初こそ
「遼ちゃんひとりで大丈夫?心配だわ・・・」
「遼介はまだ高校生なのだから独り暮らしは早いだろう。」
と反対気味の両親であったが、独り暮らしで両親の偉大さを知れるいい機会になるかもしれない。
などと訳のわからないことを言って交渉し、渋々許可を得ることができた。
そんな暮らしを始めてもうすぐ2年がたつ。
未だに独り暮らしが始まるまであんなに夢見ていた女の子とのキャッキャウフフは無い。
しかし、「まだ」無いだけである。
そんなことを考えつついつも通り帰宅すると、リビングに明かりが灯っていた。
不思議に思いながらも(消し忘れか・・・)と自己完結し、廊下を抜ける。
扉を開けた瞬間、「パン!」という轟音と共に足に激痛が走る。
「ぐああ!!」
次に目を開けたとき見えたものは真っ白な天井だった。
どうやら仰向けに倒れてしまったらしい。
激痛の走る足を手で触ると、生ぬるい赤い液体で手が染まっていた。
銃で撃たれたと理解するのにそう時間はかからなかった。
しかし、足を銃で撃たれたことで立ち上がることができない。
(痛い・・・俺ここで死ぬのか・・)
そう思った瞬間もう一度、「パン!」という轟音と共に銃弾が頭を貫通し、俺は18年というあまりにも短い人生に幕を閉じた。
目を開けると目の前には血まみれの俺の体があった。周りには十数人の警察官らしき人が集まっていた。
(コイツら俺の家で何やってんだ・・・?なんで警察が俺の家にいるんだよ。)
そう思って、警察に
「俺の家で何してんだ?」
と聞いてみる。しかし、返事はない。
(なんだこいつ!感じ悪いなあ・・)
と思いつつ他の警察官にも話しかけるが、全員フル無視。
ここまで来て俺はようやく気づいた。
どうやら俺は死んで霊になったらしい。
「実感がわかないな・・・」
正直よく状況も理解できていないまま殺されてしまったので、霊になっても死んだ感じがしない。
確かに2回撃たれて死んだ記憶はあるし、目の前には俺の死体が転がっている。
これは紛れもない事実だが、俺には今霊体として新たな体があり、自分の思い通りに体を動かすこともできる。
こんなに不幸な死に方なのだから、転生のひとつやふたつあってもおかしくないだろう。
転生する時は大体目が覚めたら知らない場所だったとか、赤ちゃんになってたみたいなことが多い。
(つまり眠れば俺も転生するのでは・・・?)
と思って何日か寝てみたが、何度起きても見たことのある町並みで、転生する気配がないのだ。
このまま霊体のままだとだれも俺のことが見えないため、女の子とキャッキャウフフが出来なくなってしまう。
(それだけはまずい・・・俺の人としての尊厳が・・・)
俺は童貞として生涯を終えるのは「負け」だと思っている。
だから意地でも転生する方法を見つけなければならないのだ。
「霊感の強そうな人を当たってみるか。」