タイムカプセル
▶2265年6月7日
少し早かった。旧文明の遺産は俺を既に認知していたようだ。シリウス、お前に書き記す最後の日記だ。
太陽は必ず昇るが、必ずしも陽を照らす訳では無い。
雨が降ればきっと、熱さも思い出もも全て流してしまうはずだ。ストレンジナイト、あの日まで戻れれば、俺もお前も死神とは、
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2265年6月6日 お昼時
「熱いね〜、太陽ガンガン照りだよ〜」
「もう少しで着くわ、辛抱よ」
広場まであと少しのところだ。他愛もない会話をしながら探検に向かうのはいつもの事だが今日一味違った。
「ねぇ、シュリとシリウス〜…」
そう言うと、サンは大きめのカバンから箱を取りだした。
「じゃじゃーん!なんでしょ〜?」
「なんなの?私には分からないけど」
「うーん、お菓子か?」
「ちがうちがーう!タイムカプセルだよ〜」
「タイムカプセル?なんなのよそれ」
「うーん、何って言われると難しいんだけど〜。うーん。」
「サン、いいな!タイムカプセル!」
「でしょ!僕もそう思って持ってきたんだ!」
丁度広場に着いたタイミングで、サンはカバンからさらに何かを出してきた。
「ちょっと疲れたから座って〜と、よし、これはね思い出や、宝物を埋めて、その〜大人になったら掘り出して、すごいね〜って!」
サンはシュリに説明をしているが、シュリは何一つ理解出来ていない様子だった。
「思い出や宝物を産める…?それの何が凄いの?」
少しお馬鹿なサンの代わりに僕が説明する事にした。
「なんていうかさ、記録みたいなものだよ。気持ちそのものを埋めるんだ。」
「その気持ちを埋めてどうなるの?」
「どうなるって言うよりかさ、こんなこともあったな〜なんて、そんなものだよ。日記だってそうだろ?その日の事を日記に記して後で読んで思い出す。もっともその日記を無くしてしまえば意味がないんだけどさ。」
なんとかシュリにわかるように説明はしているつもりだ。
「ねぇ、シュリもなにか埋めようよ!シリウスも!」
「う、う〜ん。埋めるものって大してないんだけどさ…。なんというか、この首飾りでも良いの?」
「おい、いいのか?それ大切なもんじゃねぇのか?」
シュリにとって首飾りは大切なものだ、そう出会った時から直感で思っていたのだが…。
「大切だけど、私にとっては呪縛みたいな物だから。埋めても良いし、戻ってこなくてもいい。」
「呪縛?なんだ?なんかやばいやつでも取り憑いてんのか〜?」
僕は少し、小馬鹿にした感じで言ってみたが、シュリは何一つ顔色を変えなかった。
シュリにとって、この首飾りは亡き母から譲り受けた物で、シュリに取っては宝物同然なのだが、その呪縛とやらを僕達が知るのは、まだ先の話だった。