(53)望まぬ再会
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執務室から出てくると、リンが駆け寄ってきた。
「ユーミさん!報酬でましたか?」
「ええ。驚いたわ」
リンはこくこくと頷き、小声で言う。
「あんな大金の報酬初めてなので、足が震えちゃって…」
わたし達が屋敷にいる間に冒険者ギルドに来ていたザックとジョーイが、先にカシアスから話を聞いていたらしい。さっき二人からマリアと報酬の話を聞いて驚いたんだと。
「それだけの働きをしたんだから、胸張って貰えばいいのよ」
「ですよね!私達頑張りました!」
リンにはそんな事を言ったものの、わたしもビビっていた。
ザックとマリアも伴って、みんなでジョーイが座っているカフェのテーブルに向かった。マリアの妹とも話しながら、報酬の話や、屋敷の話をみんなでワイワイしていた。
「あ、カードの準備ができたみたいよ」
マーレに言われて取りに行こうとすると、エルラインに止められた。
「私が受け取りに参ります」
「いいわ、私が行くわ」
珍しく、マーレが行くという。まぁ、どっちが行っても構わないので、お願いすることにした。
「…いい加減にしないと、消し炭にするわよ?(怒)」
しばらくすると、受取カウンターの方から、珍しく怒気を含んだマーレの声がした。何やら、言い寄られているようだ。
あ。あいつ!
「素晴らしいっ!怒りの声さえも、まるでセイレーンの魅惑の歌声の様だ。何としてでも我がパーティー『幸いの天使』ひいては、クラン『天使の饗宴』に加入していただきたいっ!」
片膝をついて、陶酔しながらマーレにすがっている。あいつは、なんだっけ?名前忘れたけど、カラルでしつこかったやつだ。
「エルライン行くわよ」
「仰せのままに」
わたしはエルラインを連れて、マーレ元に急いだ。
「そこをどいてちょうだい。そんな怪しいクランに入る気はないわ」
男を蹴り飛ばす勢いのマーレにしつこくつきまとう。
「ああっ!そこをなんとかっ」
「…ウチのメンバーに何か用かしら?」
思いっきり冷たい声色で、ギロリと睨む。エルラインは臨戦態勢だ。
「はぇっ?!き、君たちは…」
わたしとエルラインを見て、なんだったか名前忘れたしつこいヤツは青ざめた。
「い、いやなんでもないんだ」
慌てて立ち去ろうとするその背中に、言葉を投げる。
「今度ちょっかい出したら、警告じゃ済まさないわよ」
「ひ、ひゃい」
男は引きつった顔で逃げていった。
「ありがとう。あんまりにしつこいから危うく手が出るところだったわ。足だったかしら」
爽やかな笑顔の口から物騒な発言。
「あいつ、カラルでわたし達にも絡んできたのよ」
「クランだ、パーティーだと言う割に、周りに誰の姿も見えませんね」
エルラインの指摘に、はたと気が付く。
「そう言えばそうね。実在するのかしら?今度カシアスに聞いて見ましょ」
酷い目に合ったと言いながら、カフェに戻る。飲み物を再度注文して、口直しする。
ザックやリンから、さっきのヤツの事を聞かれ、カラルでの出来事を話した。
「彼は美女を見つけては勧誘するので有名な、アルムストよ。確か所属はベイルオートだったはず」
マリアが考えながら教えてくれる。
「ベイルオートで最大クランの『ムーンライト』に入りたかったみたいだけど、強さもイマイチだし、入りたい動機が見え見えだから断られたって聞いたわ」
「動機って?」
「あの人はモテることしか考えてないです」
リンが補足してくれる。
「ムーンライトに所属してるってだけで、結構モテます。ムーンライトってクランはステータスの象徴でもありますから」
「そこに断られたから、自分でクランを立ち上げたと。でもクラン作るのって色々と制限があったわよね?」
「アルムストはいいとこのボンボンらしく、湯水のようにお金を使ってるのよ。大して強くもないのに、装備だけは立派でしょ?お金に目が眩んだ女の子達が集まってるようだけど、彼が欲しがる美女はなかなかお金でなびかない人ばっかりみたいね」
マリアが肩を竦める。
「あの人、前にカラルであった時、私とマリアを見て鼻で笑ったです!!」
リンが思い出して怒っている。
「『残念だが、君たちは僕のクランの基準には少し及ばないんだ。申し訳ないね』って言われたのよ。頼んでないわよっ!」
あ、マリアさんも怒ってらっしゃる。
「ベイルオートでは、悪い評判が立ってしまって勧誘できなくなったようで、いろんな街に現れるようになったな」
思い出し怒りの2人に代わってザックが言う。
「あんたたちなら、会えば勧誘されると思ったぜ」
やれやれと言った顔をする。
「あんまりしつこかったら考えるけど、とりあえず放置でいくわ」
わたしの決定にエルラインもマーレも頷いた。
「ああ、そうだ。カード返さなきゃ」
変人の登場で、すっかり忘れていた、身分証明書カードをマーレから受け取る。
「おお!金だ!」
カードを見ると、冒険者ギルドのラインが金色になっている。ついでに所属もエステラになっていた。パーティーのランクも金級だ。
「あっという間に抜かれたけど、全く悔しくないな」
「魔女の薬屋の方たちは何だか現実味がないと言うか…」
「本の物語に登場する人みたいです」
「初めて会ってまだ、1ヶ月くらいなのに、色々と衝撃的な事が有り過ぎて遠い昔みたいだよな」
白狼の牙の面々が、頷きながら分かり合っている。
「ザック達はこれからどうするの?」
しみじみしだしたので、話題を変える。
「まだ、ちゃんと決めてないけど、懐に余裕もできたし、しばらくエステラのダンジョンアタックして、違う街のダンジョン目指そうかって話してるんだ」
「武器も直ったし、遠くまで足を伸ばせる算段がついたしね」
「ユーミたちに少しでも追いつくように頑張らないと」
「ユーミさんと離れるのはツライですが、ここに帰ってきたら会えるってわかったので頑張れます!」
うんうん。目標があるのはいいよね。前半の男たちと後半の女達で微妙に目指すものが違うのが引っかかるが。
「マーレは冒険者の時、ドラガス帝国のアサマトのダンジョンには行ったことあるか?」
「アサマト…ああ、エニスタの。今はドラガス帝国になってるのね。あそこのダンジョンは…」
マーレがザックに話してるところだった。
「ここで会ったが百年目ぇぇ!!ユーミ!!お前に決闘を申込むっ!!」
は?




