(51)今は昔
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「そうかもしれないわね。私の時代でも、魔法師の魔力減少が問題になっていたから。私は奇跡の子って言われたのよ」
リンの質問に答えているようで、そうでなく独り言のようにつぶやいているカサンドラの横顔を見ながら、鑑定してみる。
『名:カサンドラ・フォン・グレシオーラ
人種:人族(古代人)
性別:♀
年齢:20歳
ジョブ:魔法師
クラス:銀(金)
体力:500
魔力:1万(102万3300)
使用可能魔法:生活魔法 氷結魔法 大地魔法(全属性上位魔法) 付与魔法 結界魔法 鑑定 隠蔽 空間収納
特殊:先祖返り 古から目覚めたもの 滝魔女
状態:健康』
…。バケモノか?古代人ってなんだよ。1300年眠ってたとは言え、エルフでもなく、ホムンクルスでも、フェンリルでもドラゴンでもないのにこの数値とかヤバくね?
カサンドラの数値を見て呆気にとられた。しかし…
「古代人ってなんなの?」
わたしは思わず声に出してつぶやいてしまった。
「あ!ユーミさん、鑑定しましたね?私の隠蔽魔法を上回るなんて、流石ですね」
カサンドラは鑑定したことを怒っている様子はなく、むしろ自分の隠蔽魔法を破ったことに驚いていた。
「隠蔽魔法は同等以上の能力の持ち主でなくては破れません。私の周りには私の隠蔽魔法を破れるものはいなかったのですが」
「1300年前の人だから古代人なのかと思ったんだけど、さっきクラウルを鑑定したときは、古代人の表記はなかったわ」
話が逸れそうだったので、戻してみる。
「ああ、失礼しました。1300年前でも、人族は人族です。私の時代よりも更に昔、魔法を駆使して繁栄した種族がありました。しかし、何らかの原因でその種族は滅び、新たにこの地に別の人族が栄えました。それがいわゆる人族と呼ばれています。新たな人族は、自分たちよりも前にこの地にいた人族を古代人と呼び、区別しました。僅かに残った古代人と人族が契を交わし、古代人は人族の中にまぎれていきました。年月が経つうちに、古代人の血は薄れ、魔力の高いものは段々と減っていきました。ごく希に、古代人の特色を持って生まれる人族が居ます。その者を『先祖返り』と呼びます。但し、ただ魔力が高いだけでは先祖返りとは言われません。古代人は全属性なのです。人族ではあり得ません」
カサンドラは、寂しそうに笑った。
「…古代人だと差別とかあるの?」
恐る恐る、カサンドラを覗き込む。
「ええ…。古代人は忌避の対象でした。『属性は神から与えられたものである。すべてを手にしたばかりに神から怒りを買い、古代人は滅んだのだ』それが、教会の教えであり、常識でした。私は生まれてすぐに鑑定され、古代人だとわかるとすぐに隠蔽魔法をかけられたそうです。私が古代人であることは、家族とクラウルしか知りません」
「…わたしたちに話してよかったの?」
わたしがそう言うと、カサンドラは笑った。
「私の事を知っている人はもう、クラウルしか居ません。古代人とか、1300年時が止まってたことに比べれば、些末な事です。それに、古代人である私よりも常識外れな人が、ここにたくさんいるので、どうでもよくなりました」
それはそうだと、マリアとリンまで一緒に笑っている。マーレはあらあらまぁまぁとか言ってニコニコしている。君、常識外れの筆頭だからね。エルライン、「私はまだまだ鍛錬が必要です」じゃないんだよ。十分常識外れですからね。
一緒に食事をして、カサンドラの話や白狼の牙の話、魔女の薬屋の話なんかしていると、すっかりカサンドラと仲良くなった。
「さて、クラウルに薬を飲ませようか」
わたしがそう言うと、薬を持ってカサンドラとエルラインが主寝室へ向かった。残りは来なくていいと、エルラインに止められた。
「しかし、どんな気持ちなんですかねぇ。気がついたら1300年経ってるなんて。感覚的には一瞬なんですよね?」
リンが紅茶を飲みながら言った。
「そうねぇ。私は他には内緒だけど、1300年以上生きているから、人族の移り変わりは知っているの。1300年で随分と変わっているから、一瞬で変化を受け入れるのは、なかなか難しいと思うわ。カサンドラ達はこれからが大変ね」
マーレはフィナンシェをつまみながら頷いている。
貴族だった二人はいきなり1300年後の平民にならなくてはいけないのだ。常識も知識も大分と変わっているだろう。愛する人と一緒に乗り越えられると信じたい。わたしもできるだけ協力してあげよう。カサンドラの知識や能力は現代でも活用してもらいたい。なんなら、魔女の薬屋に加入してもらおうか。咄嗟に作った加入条件をクリアしてると言えなくもない。寿命の事は、既に1300年超えていると考えればなんとかなる。
まぁ、落ち着いたら本人に打診してみよう。
寝室からは、エルラインだけ戻ってきた。エルラインによると、大分と顔色も良くなり、呼吸も落ち着いてきたそうだ。いつ目覚めるか分からないので、カサンドラはクラウルについているらしい。
さてと。とりあえず、カシアスに報告に行くか。んで、二人の事を話さないとね。この屋敷の改築はクラウルが元気になってからにしようか。それまでに、色々な案だけは考えておこう。
カサンドラに出かけると告げて、皆で屋敷を出る。
念の為結界張って付与しとこう。結界は、関係者以外立入禁止、草木の時間停止、物理攻撃及び魔法攻撃無効、精神攻撃無効、呪怨無効。付与は防虫、屋敷の劣化防止、防音、防汚、耐震、免震。こんなもんか。
「はわわわわ。すごい結界です!」
「なにこれ…」
屋敷の上に展開した結界を見て、リンとマリアが唖然としている。
「滝魔女の屋敷が動き出したって、わかったら良からぬ考えを持つ輩が出ないとも限らないでしょ?念の為ね」
納得したのかよくわからないリンとマリアを伴って、5人で来た道を戻る。
冒険者ギルドに入った途端、声をかけられた。
「いた!おい!リン!マリア!どこ行ってたんだよ。探したぞ」
プリプリとお怒りモードのザックだ。ジョーイはいない。…向こうでお茶してるわ。
「だってザックもジョーイも寝てたです」
「声をかけても返事がなかったし」
ねえ?とマリアとリンが肩をすくめる。
「どこへ行ってたんだ?」
「ユーミさんの新居です」
フフンと得意げなリン。なんで?
「!!!ユーミさんの新居だと?」
ザックはショックを受けているようだ。そんなに来たかった?
「まだ手付かずだけど、いつでも遊びにおいで。ザック達なら歓迎するわ」
わたしの言葉に、瞬時に笑顔になった。
「ありがとう!で、場所はどこ?まさか貴族街じゃないよな?」
「呪いの館よ」
「え?今なんて言った?」
絶対に聞こえてたのに、ザックの顔が引きつっている。
「だ!か!ら!呪いの館館です!本当にあそこです」
リンがずいっと出てきて、ザックにダメ押しする。
「マジで?呪いの…?」
ザックがフリーズしたので、放っといてギルマスの部屋に行く。
受付のお姉さんとはアイコンタクトしたので、多分大丈夫だろう。
今度は抱擁の時間が少ないといいけど。




