(41)眷属契約
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「わたしたちと来る?」
勝手に決められても困るんですけど。
「ええ。ユーミ達について行くわ」
「マーレどうして…」
ギルマスは絶望的な顔をしている。
「そんな顔をしないで、カシアス。私は貴方と逆を行くの」
「逆?」
「貴方は何千年も穴蔵で眠っていて、数百年前に私と共に人族の街へと降りてきて、今に至るでしょう?領主にして、ギルドマスターなんだから、色々忙しい毎日よね?」
「ああ。確かに。眠っていた頃からは想像出来ないような暮らしをしている」
ギルマスは、腕を組んでウンウンと頷く。
「私はホワイトフェンリルとして生まれ落ちてから、群れの為、あくせく働いてきたわ。魔力と神聖力がずば抜けていたので、群れの中でまとめ役になるのも早かった。それから、群れを抜けて人族と共にあった時も含めて、今日まで駆け抜けてきた」
マーレはそう言うと、ギルマスの手を取って見つめた。
「私はそろそろ誰かの為じゃなくて、自分の為に生きたいの。のんびりとね」
「マーレ…」
マーレはフフフと笑うと、わたしを見た。
「その為に、ユーミはうってつけよ」
なにが?わたしはさっぱりわからない。
「ユーミのなにがうってつけなんだ?」
ギルマスも首を傾げる。
「この子、神域に入った瞬間、とても怒っていたの」
「そりゃ、森を穢した悪魔に怒るのは当然だろう?」
「違うのよ。ユーミは悪魔のことなんて、なんとも思ってなかった。神に対して怒っていたの」
マーレはさも楽しげに笑う。あ、わたしの心の声聞いてたな。巻き込まれ体質に関する神への怒りを。
「「神に?!」」
ギルマスだけでなく、大人しく聞いていた白狼の牙のみんなまで声を揃えた。
「…それは、『神は何故悪魔の無体を許すんだ?』とか?」
ザックが恐る恐る聞く。
「いいえ。『のんびりしたいのに、なんでこんなに面倒事に巻き込まれるんだ!神が操っているんだろう』ってね」
マーレは楽しそうだ。
こんなところで、心の声を暴露された。恥ずかしい…。
みんなは、なんとも言えない顔をしている。『ユーミだしな』みたいな。
「カシアスについていったら、絶対忙しく働くことになるでしょう?もう嫌なの。でも、ユーミについていけば、のんびりしてても文句は言われないだろうし、適度にスリルも味わえそうだし、楽しい毎日を過ごせそうでしょ?」
ニコッと首を傾げて微笑むマーレは、40代っぽい見た目なのに、全然嫌味はなく、惚れてまうやろ。
実際、男子全員赤くなった。
「どう?ユーミ。私も仲間に入れてくれないかしら?そこそこ強いし、アナタたちの足手まといにはならないわよ」
「わたしたちは、冒険者としては、ほとんど活動しないの。エステラで薬屋をやるつもりなんだけど。それでもいいのかしら?」
「全然構わないわ。エステラなら、カシアスにも会えるし、必要な素材を取りに行く手伝いも出来るし、店番だってするわ。それに、お店の警護も請け負うわよ」
確かに、わたしもエルラインも出かけたときに、店番は有り難い。
「野営で私をベッドにできるわよ」
マーレがパチンとウインクする。惚れてまうやろ。…サラサラもふもふ…いい。
『エルライン、マーレが仲間になっても構わない?』
『ご主人様が思うままに』
『だから、意見を!』
『畏まりました。マーレ殿は今回は不覚を取ったとはいえ、神にも近い神獣。これ程心強い味方は居ないかと』
『わかったわ』
「…マーレ、わたしたち、『魔女の薬屋』ってパーティーなの。これからよろしくね」
わたしは、マーレに握手を求めた。
「宜しくおねがいするわ。エルラインもね」
マーレはわたしの手を取り、優雅に微笑む。
「ずるいです!私も入るです!」
「ちょっ、リン!」
ザックが慌てている。
「残念。魔女の薬屋は魔力が1000以上で寿命が500年以上の人以外はお断りなの」
リン、阻止。
リンはうぐっと、唇を噛んだ。そこ!カシアスさん、『俺、入れるんじゃない?』みたいな、目をしない!アナタ、領主でギルマスでしょうが!普通のパーティーに入ろうとしないの!
「…ギルマス、男子禁制なので」
わたしが釘を刺すと、ギルマスがしょぼんとした。
「じゃぁ、早速、眷属契約をしましょう」
マーレは席を立って、わたしに近づいて来た。
「眷属契約?」
「従魔契約でもいいんだけど、従魔契約だと、人化してるときに力が発揮できないのよね。眷属契約なら、狼化でも人化でも、力を発揮できるわ」
いや、そう言うことを聞いているのではなく…。
「ご主人様、『眷属契約』とは、人族同士、人間を含めてエルフやドワーフ、獣人等、あるいは魔人族との血の契約の事を言います。人化出来る神獣が眷属契約出来るのは初めて知りましたが。眷属契約すると、主の秘密を暴露したり、裏切ることは死を意味します」
お、重い…。顔が引き攣る。
「そんな、大それた契約しなくても…」
「あら?必要な契約よ。眷属契約していれば、どれだけ離れていても念話が使えるし、ストレージも共有できる。それに、主の窮地にはたとえ別大陸に居ても一瞬で駆けつけられるのよ。私は警護を兼ねてるんだから必須じゃない?」
そうなの?まるで、エルラインと同じだ。
「ご主人様、私は既に眷属です」
「そうだったの?!」
わたしがびっくりしていると、「知らなかったのか?」「そうだったの?」「眷属契約したの覚えてないとかあるの?」
周りがざわついてしまった。そうか、エルラインはわたしの血で作ってるから…。
「…エルラインはわたしが幼いときから一緒に居るから、物心つく前に眷属契約していたのね」
必殺、生まれのせい。
「ま、まぁ、マーレがいいなら、それでも。解除もできるのよね?」
「私が不要になってしまうのかしら?」
そんな、伏せた瞳で儚げに言わないでよ。ちがうよそうじゃないよ。
「わたしもエルフよ。長い年月あるんだし、マーレが番を見つけるかもしれないでしょ?」
ギルマスがギュインとこっちを見る。ウザい。
「あら、そんなこと考えてくれてるのね。ありがとう。眷属契約は主が望めば解除できるわ」
そうなのね。でも、考えると、眷属契約って奴隷契約と同じじゃないの?
わたしはそっとエルラインを見る。嫌じゃないのかな。
「ご主人様。眷属契約と奴隷契約は全く違います。奴隷契約では奴隷には全く益の無い契約で、望まなくても契約されます。眷属契約はお互いに望まないと結ばれず、眷属は主の力の一部を受け継ぐ事が出来ます。主も眷属が増えれば、力を得ることが出来ます」
エルラインはわたしの気持ちを察したのか、眷属契約と奴隷契約の違いを教えてくれた。
エルラインがバカ強いのは、やっぱり私のせいだったのか。そういや、わたし最近自分のステータス確認してなかったわ。マーレを眷属契約したら見てみよう。
さぁ、契約をと思ったときに、ハタと気がつく。
「眷属契約で強くなるなら、なんでみんなやらないの?」
ギルマスや白狼の牙のみんなはなんとも言えない顔をしている。エルラインは無表情、マーレはニコニコしている。
「…大人数と眷属契約するのは、普通の人間には無理だな。魔力が相当持っていかれるし。ただ、そこそこ魔力があって強さだけを求めるパーティーやクランには眷属契約を求めるところもあるっちゃある。しかし…」
ザックの歯切れが悪い。
「しかし?」
「まず、眷属側からは解除できない。だから、相当主側に心酔してないと受けるヤツはいないね。それよりも重要なのは、主が死ぬと眷属も死ぬ」
「は?」
なにそれ。やばい契約じゃないの。だから安易に眷属契約されないのはわかったけど。
「マーレやっぱり…」
わたしは眷属契約にビビる。
「ユーミ、死なないでしょ?」
コテンと首を傾げる。
ん?待てよ。そうか。わたしちょっとやそっとじゃ死なないわ。
「そっか。んじゃいっか」
視界の先で、ザックがズッコケたような気がしたが。まぁいいか。
人差し指の腹を少し傷つけて、同じく傷つけたマーレの手と合わせる。
「その指から、私に魔力を流し込んで」
ゆっくりと人差し指からマーレに魔力を注ぐ。
「私の体いっぱいになるような感覚で流していって」
結構魔力を流しているが、なかなかいっぱいになった感覚がない。流石、プラチナフェンリル。目をつぶると、フェンリルのシルエットが浮かび、そこに魔力が注がれている。まだ3分の1も注がれていない。
フェンリルでかくない?
わたしたちの様子を見ている、白狼の牙たちがしびれを切らしている声が聞こえる。
「…長くないか?」「眷属契約してるの見たことあるが、結構一瞬だったぞ」「ああ、あの時の。そうね、もっと早かったわね」「なんでですか?」
「そりゃ、当たり前だ。注ぐ魔力は、眷属になる者の魔力と同じ魔力を注がねばならない。プラチナフェンリルだぞ。どれだけ魔力があるのか」
ギルマスが当然と言った声で説明している。
「じ、じゃぁ、ユーミはそれ以上魔力があるって事?」
驚くマリア。
「そういう事だな。でないとプラチナフェンリルと眷属契約なんて出来る訳がないだろう。俺はできるが」
そうなの??わたしの魔力が半端ないのバレてんじゃん。って、ギルマスよ。サラッと対抗すんじゃないよ。
「ドラゴンレベルでないと無理って事か…」
ザックがつぶやく。
「違うぞ」
「え?」
「エンシェントドラゴンレベルだ」
フフンとなぜかギルマスが得意げだ。
「マジか…」
あ、ザックがドン引いてしまった。




