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転生魔女ですが救世はお断りします!〜世界を救うとか面倒くさい〜  作者: 高木 藍


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(38)穢れた神域

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 神域の扉とは言え、ドアではなく、空間に突如現れた揺らぎのような物だ。そこを潜ると、一瞬目眩のようなものを感じた。


 「転移したっぽいな。そら、あそこに神域はないか」


 独りごちながら、ゆっくり目を開ける。


 「うわ…」


 まるで、白黒写真の中に飛び込んだかのように、見渡す限り色が奪われ、灰色と黒の世界だった。


 生命の息吹は感じられず、立っている木も形だけで中身が無いようだ。


 取り敢えず、道らしいものはあるので進んでみる。


 全く、わたしは何に巻き込まれてるんだか。わたしはのんびりダラダラ過ごしたいだけなのに。わたしを転生させた神様に操られてるんだろうか。世界を救うなんてお断りだっつーの。大体、人の話も聞かず、無理やり異世界に飛ばすとか、どんだけ横暴なんだよ。


 わたしを飛ばした女神の事を考えていると、なんだか腹が立ってきた。


 とは言え、フェンリル達は気の毒だし、白狼の牙のみんなには世話になってるから、ここを浄化するのは吝かでは無いけども。なんか腑に落ちないんだよね。ま、乗りかかった船ってやつかぁ。


 しばらく進むと、ほぼ等身大と言うか、わたしとそんなに変わりない大きさの木彫りの女神像らしきものが正面に見えてきた。真っ黒だから、木彫りかどうかは定かじゃないけど。


 その女神像の前に、苦悶の表情で固まっている何かがあった。


 「何これ?もしかして、これが悪魔?なんでかたまってるの?」


 その時、声が響いた。


 『エンシェントエルフよ。祭壇までたどり着きましたね。その悪魔は、ワタシが最後の力を振り絞って、石化させました。しかし、私の力も間もなく尽きます。どうにかその者を追い出してください。倒すのは無理でも、追い出してくれれば、神域は守られます』


 …無茶言うわ。追い出せってどうやって?


 響いた声は恐らく、マーレと言うフェンリルの長だろう。追い出し方は考えてもわかんないし、取り敢えず周りを浄化するか。


 先ずは女神像から浄化する。気持ち多めに魔力を篭める。


 「浄化」


 真っ黒だった女神像は、みるみる白くなる。


 『うぎゃ』『ぎゃっぎゃっ』


 なんか聞こえた?


 女神像から黒い靄が外に出て霧散する。


 浄化で消えると言うより、この空間から追い出している感覚だ。


 「あ、なら悪魔もいけるのかな?取り敢えずは周りから」


 目につくそこら中に浄化を掛ける。黒い靄が追い出されて、みるみる浄化されていく。


 粗方周りは色を取り戻したので、転がってる悪魔を浄化してみる。


 「浄化」


 一番黒い靄が出た女神像よりも、濃くて粘度の有る黒いネバネバが、悪魔から流れ出る。


 「気持ち悪っ」


 思わずドン引く。


 「ゔごごがっぎっぎゃ」


 さっきまで固まっていたのに、悪魔が苦しみ、悶だした。


 「誰だ!憎き聖の力を私にぶつけるのはぁぁぁぁ!」


 わたしの浄化を振り払うようして、飛び上がった。


 黒髪に黒い牛の角、片目にモノクル、タキシード姿で大きなコウモリの羽、悪魔っぽい尖った尻尾の男の悪魔だ。


 「お前が私をこうげき「浄化」うわっがはっ」


 そいつが話している隙に浄化魔法を放つ。


 「おのれ!おま「浄化」ぐおっ。話を聞け!」


 「なんで?浄化」


 「がぁっ」

 悪魔の高度がやや下がった。


 「やめい!お前は何故急に「浄化」がぁっ。待て!」

 「浄化」

  

 何故悪魔の話など聞かなくちゃならんのだ。


 「ぶばっ。待って!「浄化」ぐっ。待ってください。お願いします」


 悪魔が降りてきて土下座した。仕方ないなぁ。


 「何?」


 わたしは、はぁっと溜息を吐いて、憮然とした顔で悪魔を見下ろす。


 「はぁ、はぁ、はぁ」


 悪魔は肩で息をしながら立ち上がった。


 「私の名前は」

 「どうでもいいから次」

 「え?」

 「名前とかいいから。なんなの?」

 「え?あ、あの」


 悪魔はすっかりわたしのペースだ。翻弄されてパニクっている。


 「用がないなら浄化するわ」

 「まってまって!わかった。話すから」


 浄化しようと、杖を振り上げたわたしにすがって来る。鬱陶しい。

 

 「話すので、聞いて。途中で浄化しないで」


 半泣きになりながら懇願する。時間がかかるが仕方ない。聞いてやろう。


 「取り敢えず話しなさいよ」


 悪魔はゴホンと咳払いをして、話しだした。


 「私の名はサルガタナス。魔王軍の少将である」


 何となく聞いたことがあるような?まぁ、覚えてないってことは、マイナー悪魔だね。ってか地球の設定と同じかわからんし。


 「で?その少将さんが、フェンリルの神域になんの用?」 


 わたしの言葉に、ニタリと笑う。


 「ふふふ。人族に与する神獣共には煮え湯を飲まされてきた。だが!私が発見した神域に侵入する「浄化」ぐぉぉぉ!」


 顔面に浄化が当たり、サルガタナスはのたうち回っている。


 「おのれ!エルフめ!もう許さん!!」


 憤怒のサルガタナスは飛び上がり、どこからとも無く、剣を取り出した。禍々しい雰囲気の魔剣の様だ。


 「浄化」


 「ふんっ!」


 サルガタナスは浄化を魔剣で切ってしまった。


 あら。ヤバイかしら。


 わたしが考え込んだ隙に、魔剣で切りかかってきた。


 ガキンっ!


 わたしの結界に阻まれて、わたしはノーダメージだ。


 「なにいぃっ!」


 魔剣で結界切れないんだよね。いい事考えた。


 「結界」 


 わたしはサルガタナスを結界で包む。イメージは大きなボールの中に閉じ込める。


 「ぬ?なんだ?」


 サルガタナスが剣を振りかぶるたびに、キンっキンっと、結界にぶつかる。


 よし。結界に杖を持つ手を突っ込む。


 「浄化浄化浄化浄化浄化浄化」


 結界の中を浄化魔法で埋めていく。


 「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 白い光と、悪魔から出る瘴気のドロドロで結界内が満たされ、サルガタナスが見えなくなっていく。 


 「浄化浄化浄化浄化」


 黒いドロドロが、消えるまで浄化魔法をぶち込む。


 「がぁぁぁ…」


 …


 静かになったかな?


 結界の中はもう、黒いドロドロも、黒い靄も見えない。

 

 「解除」


 結界を解除すると、ドサッと何かが落ちた。


 真っ白なおじいさんのようになった、サルガタナスだ。息絶えているようだ。

 

 不意に風が吹くと、サルガタナスはサラサラと灰になって飛ばされていく。残ったのは、牛の角とモノクルだけだった。一応討伐証明になるかもしれないので、貰っておく。


 サルガタナスが消えた途端、神域は空気が変わった。澄んだ空気に、生き生きとした植物。全てがうっすら光っているように見える。


 ああ、浄化されたな。  


 以前の神聖力が溢れる神域に戻ったようだ。

 

 で、わたしはどうやって帰るの?


 輝く神域に取り残されて、途方に暮れた。 

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