(33)パーティ結成
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ギルマスに促され、黒狼を見つけて1頭倒すまでの詳細を、ほぼザックが話してくれた。
「…黒狼化したホワイトフェンリルを瞬殺する強度の結界って、俺が引くほどヤバイな」
ギルマスがこっちを見ながら引きつっている。
「それで、ユーミ。シルバーフェンリルと念話で話していただろう?何と言っていた?」
ギルマスが腕を組みながらこちらを見やる。
「…何でも、原因は分からないけれど、群れのボス的なフェンリルが、突然黒狼化したらしいわ。神にも等しい存在だから、本来なら有り得ないって。ボスが黒狼化したもんだから、原因を調べようにも近づいただけで黒狼化してしまうらしいわ」
わたしがそう言うと、急に周りの空気が一変した。
「そ、それは…国に報告するレベルでヤバイじゃないか」「フェンリルのボスって、伝説のプラチナフェンリル??それが黒狼化って…」「この街、いや、国が危ない」「狼の神様が大変ですぅぅ!」「どうにか出来る段階の話なのか?」
みんな、真っ青な顔で慌てだした。
「シルバーフェンリルから指名依頼を受けたからには、ユーミには行ってもらわないといけない。お前なら、結界で穢れに触れることはなさそうだ。国に報告する前に、一度見てきてくれるか?ユーミたちと白狼の牙へ、シルバーフェンリルからの指名依頼プラス、ギルドからの緊急依頼って事だ。俺も同行する」
ギルマスが真剣な顔でわたし達を見回した。
「ところで、ユーミ達は白狼の牙の新しいメンバーなのか?」
「誘ってるですが、断られたです」
リンがしゅんとしている。
「そうか。なら、2人でパーティーの登録をしておくか?」
エルラインと一緒に行動するならそれもありか?しかし、意味はあるのか?聞いてみよ。
「パーティーになると何か都合がいいことはあるの?」
「パーティーになっておけば、個人の指名依頼もパーティーとして受けられる。各々で達成実績になる。本人にしか開示されないような事も教えてもらえるしな。報酬とかも代わりに受け取ることができる。後は、例えば店を持ったり、クランを立ち上げるとなった時も、パーティーに在籍したある程度の実績が無いといけないんだ。色々な依頼を受けるにも、個人じゃ受けられなかったりするしな。因みに、このパーティーは冒険者ギルドに限らず適応されるから、違うギルドに登録してもパーティーは引き継げる」
ギルマスが詳しく教えてくれた。お店を出すときも、パーティーになってた方が便利そうだね。
「じゃぁ、登録するわ」
わたしがそう言うと、ギルマスがエドに何か指示した。
エドが戻ると、登録用紙を渡された。
「これにパーティー名とそれぞれの名前を書いてくれ」
パーティー名か…よし。わたしは全て記入し、ギルマスに渡す。
「ふむ。『魔女の薬屋』ね。変わった名だが、妙に合ってるな。これで登録しよう。出来ればこの街のパーティーになって欲しいけどな」
イケオジギルマスが、上品な笑みを向ける。
ま、眩しい…
「…考えておくわ。まだ来たばかりだし」
わたしがそう言うと、斜め前のリンから、キラキラした視線を感じたが無視した。
「ところで、黒狼の報告報酬と緊急討伐報酬が出てる。報告報酬が白狼の牙に大金貨5枚、魔女の薬屋に討伐報酬が大金貨5枚だ」
1頭倒しただけでそんなくれんの?
「今回は、金級レベルの害魔獣判定となった。後で窓口で受け取ってくれ。それから、黒狼の調査は2日後の早朝から出発するので、準備しといてくれ。調査報酬は報告後伝えるが、安くない報酬になるだろう」
わたし達が頷くと、報告会はお開きになった。
窓口で、さっきの報酬を受け取りにいく。
「ここが報告窓口です。報酬も受け取れるです」
リンが率先して案内してくれる。
「あら、リンちゃん。おかえりなさい。何か大変なことになってたみたいね」
窓口にほんわかした雰囲気の、羊獣人かな?のお姉さんがリンを見て言った。
「メイシェルさん、ただいまです!こちら、お友達になったエルフのユーミさんと従者のエルラインさんですっ!」
「あなたがユーミさんとエルラインさんね。話は聞いているわ。メイシェルよ。よろしくね。パーティーの登録をするから、身分証明書を出してね。報酬はそのまま?口座?」
畳み掛けるように話しているが、なんだかおっとりしていて、不思議な人だ。
「よろしく。パーティーの口座に入れてもらえるかしら?」
確か、パーティーには別口座があったはずだ。念の為そっちにもお金を貯めよう。開店資金にするかな。
「わかったわ。パーティー口座のカードも作っておくわね。白狼の牙はどうするの?」
「私達は、1枚パーティーの口座、後はそれぞれの口座にお願いするわ」
マリアはそう言うと、全員分の身分証明書とパーティーの口座カードをまとめてわたした。わたしたちも身分証明書を渡す。
「はぁい。承りました。しばらく待っててね」
このギルドにはカフェが併設されてるらしい。ギルドに酒場が併設は異世界物あるあるだけど、カフェって。しかも、ちょっとオシャレだし。
わたしたちが、大きめのテーブルに座ると、茶色のエプロンをつけた、キレイ系のお姉さんがやってきた。何だか見たことあるような?
「いらっしゃい。あら。こちらは新人さん?…には見えない貫禄ね」
なによ。失礼ね。銀級だけど新人よっ。
「カーサ、失礼だぞ。確かにまだ冒険者になって、ひと月経ってないけど、銀級冒険者だぞ」
ザックがたしなめてくれた。
「…は?ひと月経ってないのに銀級って」
カーサは化物を見る目でコチラを見てくる。
「…ご主人様に仇なすなら黙っていない」
コラコラ。無音で背後に回らない。
「ひいっ」
ビビらせちゃったじゃんよ。
「エルライン、座んなさい。カーサさん、ごめんなさいね。驚かせて」
「い、いえ…」
あ、ダメだ。震えてるじゃん。
「カーサ、ユーミは凄い人だけど、恐い人じゃないわ。恐がらなくて大丈夫よ。私達はいつものね。二人には紅茶を」
マリアが呆れたように言う。
カーサはうんうんと頷いて、去っていった。
「ユーミ、ごめんなさい。カーサは私の妹なの」
マリアが申し訳なさそうにしている。
マリアの妹。あ、だからどこかであった気がしたのか。
「いいのよ。わたし達も恐がらせてしまったしね。キレイな人ね」
「カーサは冒険者達の憧れだもんな」
ジョーイがニヤニヤして言う。
「一部の冒険者が付きまとって、とても迷惑しているのよ」
マリアは眉を顰める。
「何かに付与してやっつける?」
ストーカーは討伐対象だ。
「…ユーミの付与は死人が出そうだから、どうしても困ったときにお願いするわね」
あら、お気に召さなかったかしら?
「いつでも言って」
しばらくして、カーサが飲み物を運んできた。
「さっきは本当にごめんなさい」
カーサがしゅんとして謝罪してくる。
「もう、気にしてないわ。それより、付きまとわれて困ったらいつでも相談してね。対策してあげるから」
わたしがニッコリ笑って言うと。カーサも笑顔になった。
「ありがとう!困ったらお願いするわ」
うんうん。美人はやっぱり笑顔が似合う。
窓口からわたしたちを呼ぶ声がする。身分証明書の受取りだけなので、ジョーイとエルラインが行ってくれた。
カードを見ると、パーティ名が新たに記載されている。
パーティーの口座カードは空間収納に入れたので、エルラインでも出すことができる。
しばし、お茶を飲んでいて、ハタと気がついた。
「もう、すっかり暗くなったけど、わたしたち宿取ってないわ」
「俺達が懇意にしてる宿を紹介するよ。俺達はパーティーハウスを買ったから、今は使ってないけど、ずっと世話になってる宿があるんだ」
ザックは心配無用とばかりに胸を叩いた。
「助かるわ」
お茶を飲み終わると、さっそく宿を取りに行くことにした。




