(30)エステラへ行こう!
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「エルラインは、白狼の牙のみんなと次の街に行くのはどう思う?」
宿でエルラインに聞いてみる。(ギルドから転移したので帰りがけに話はできなかった)
「私はご主人様のご判断に従います。それとは別に私個人の意見をと言うことでしたら、ご主人様と二人ならば1日かからず到着できるので、正直足手まといだと言わざるを得ません」
「ダヨネ」
前回置いていかれたのが余程いやだったのか、リンのあの様子だと一緒に行くと言って聞かないだろう。
「リンは絶対一緒にいくって言うと思うんだよね。リンの気持ちをくみつつ、野営はなしで、行く方法ないかしら?」
無謀な事を言っているつもりはある。
「全員箱か何かにのせて、軽量化した上で飛行しながら運ぶのはどうでしょう?ご主人様のお手を煩わせる事になりますが…」
なるほど。荷物扱い。ダルいけどそれでいくか。
載せる箱を作んないとね。うーん。超速飛行で壊れたらあれだし、金属だよね。んで、座り心地も考えないと。ロープウェイのゴンドラに取っ手が付いてて、手が離れたとき用に、肩にかける丈夫な紐付けて…よし、これで行こう。
クリエイト、超速飛行用ゴンドラ。
『クリエイトします。終了まで1時間』
結構時間かかるな。デカイしね。
コンコンとノックが聞こえる。
エルラインが扉を少し開けると、宿のメイドが立っていた。
「ご面会の方がいらしています。お名前はマリア様とリン様です」
エルラインがこちらを向いたので、頷いた。
「お通ししてください」
「お邪魔します!うわっ豪華な部屋ですね!」
「失礼するわね。押しかけてごめんなさい」
ハイテンションなリンと対象的に恐縮しているマリア。
「どうぞ座って。お茶でも飲みなさいな」
二人がテーブルに座ると、エルラインがお茶と茶菓子を出す。因みに茶菓子は、わたしが常備している、某有名店のフィナンシェだ。
「うわっ。なんですかこのお茶とお菓子はっ!」
「…貴族が食べているものよりも美味しいわ」
リンとマリアは驚愕しながらも、バクバク食べている。
「で、どうしたのかしら?」
どうせ、明日一緒に行こうって話だろうけど。
「はっ!お菓子の美味しさに本題を忘れてました。ゴホン。やっぱり、明日、一緒にエステラへ行きませんか?私たちのホームを、案内したいですし」
リンはキラキラした目で期待を込めて見つめてくる。
「…迷惑だろうことはわかってるんだけど、リンが聞かなくて。ザックもユーミがいいって言ったらなって言いながらソワソワしてるし」
はぁと、マリアがため息を吐いた。マリアはパーティーの苦労人だな。
「…一緒に行くのは構わないんだけど、わたしたち、飛行で行く予定だから、野営はしないのよ。わたしたちの指定する方法で行くなら一緒に行ってもいいわ」
「…飛行?例え飛行でも、野営なしでは無理でしょ?…ユーミたちなら行けるの?」
マリアは軽いパニックを起こしている。
「はいっ!ユーミさんの言うとおりにします!だから一緒に行きましょう」
リンはお構いなしにニコニコしている。
翌日、わたしとエルラインが宿をでると、白狼のメンバーが前で待っていた。
「おはよう。無理をいってすまなかったな」
ザックが申しなさそうに頭を掻いている。
「せっかくだからいいのよ。リンたちから聞いてると思うけど、わたしの指定する方法で行ってもらうけど、いいわよね?」
「どんな方法なのか、ちょっと怖い気がするけど、了解した」
みんなでギルドに顔を出す。
「結局揃って行くのね。ユーミ、これ預かってたコレールのギルマスの手紙と、私からもね」
ギルマスから、2通の手紙を受け取る。
「流石に面倒な事があっても、ギルマス二人の認証があれば、大抵のことはなんとかなるわ」
ウインクをして保証してくれた。
「助かるわ。ありがとう」
手紙を受け取り、バッグにしまう。
「アナタたちには度肝を抜かれたから、しばらくは遠慮するけど、また、気が向いたらいらっしゃいな」
「…なにか、いいものあったら是非持ってきてちょうだい」
アネッタはどこまでも金満主義だ。
ギルマス達に見送られ、カラルを出る。コレールの時と同じく、南門から抜ける。
「ちょっと目立つとアレだから、しばらくは歩くわよ」
カラルが見えなくなるまで歩くと(わたしは飛んでたけど)、街道を少し外れた原っぱに行く。
「よし、ここならいいかな」
「…ここ?休憩にはまだ早いよな」
よくわかってない4人を尻目に、超速飛行用ゴンドラを出す。
「なっ!」「何この小屋?」「え?」「ガラスです!」
ゴンドラを見て各々驚いているが、さっさと乗ってほしい。
「さぁ、ここから中に入れるから乗って」
恐る恐る、中に入る。
「うおっ。床が動いた」
動いた?ああ。
「飛んでいるときも、斜めにならないようになっているの」
「椅子がふかふかですぅ」「本当ね」「外が見えるようになってるんだな」
リン、マリア、ジョーイは室内を歩き回っている。
「飛んでいる時は危ないから立たないでね」
ゴンドラには軽量化、温度湿度調整、怪我防止、飛び出し防止、防汚、防水、撥水、魔力体力回復、完全防御、が付与されている。さらに、風景同一化もつけたので、外からは見えない仕様だ。飛び上がると発動し、触れている人にしか見えないようにした。
扉を閉めて、紐をかける。この紐も炭素繊維の丈夫なやつだ。取っ手をつかむ。
「行くわよ」
エルラインと息を合わせて飛び上がる。
「うわっ、とんだ!」「すごいすごい!」「オレ、空飛んでるよ」「たかーい」
4人とも、座りながら窓に張り付いている。
「スピード上げるわよ」
グングン速度をあげる。
「うわっ」「ちょっ」「は、はやい」「…」
一人気絶したっぽいけど、大丈夫でしょ。
3時間ほど飛び続けて、少し広い場所を見つけたので、休憩がてら降りる。
「案外、スムーズに飛べたわね」
「これくらいでしたら問題は無いかと」
鍵を開けるが、一向に出て来ない。中を覗くと、みんな魂が抜けたように、呆然としている。この中だったら体力回復するはずなのに、おかしいわね。
「休憩だけど、大丈夫?」
無反応。取り敢えず放置で。
エルラインが敷物を敷いて、ササッとお茶を入れてくれる。フィナンシェ摘みながらマッタリする。
「ち、地上だ」「揺れてない」「地面ってありがたい」
リン以外の3人がゴンドラから這い出て来た。
リンは気絶したままなので、ほっとくか。3人にもお茶とフィナンシェを出す。お茶を飲むと、やっと落ち着いたようだ。
「しばらく続くけど、大丈夫なの?」
「…」
3人は青褪めている。
「それでは、眠らせてはいかがでしょう?」
「その手があったか」
3人に向き直り、寝ていくことを提案する。3人はすがりつくようにして、スリープをねだった。
一旦、リンを外に出し、椅子を撤去して、床をふかふかにする。それから4人とも寝かせる。
「スリープ」
リンが途中で起きたらいけないし、一緒にかけておく。
それから2回の休憩を挟む。4人は全く起きる気配がないので、そのまま街の手前まで飛ぶ。
広場を見つけたので、降りる。
「ここからは、歩きね。起こすわ」
スリープを解除すると、みんな目を覚ます。
「ここはどこですか?」
ほぼ最初から寝ていたリンは街の手前だとは思っていない。
「本当に寝てる間に着いたよ…」
「白狼の渓谷も過ぎてるわ」
「あっという間だったな」
ヤイヤイ言いながら、白狼の牙のメンバーがゴンドラから降りてくる。
ゴンドラを片付けようとした時だった。
「ご主人様っ!何か来ます!」
慌ててゴンドラを片付けて探査する。凄いスピードでこちらへ向かってくる。
「これは…黒狼の群れ」
ゴクッと飲み込んで、ザックが身構える。
「こんな街の近くに…この辺りには居ないはずなのに」
マリアも弓を構える。
「ジョーイは急いで街へ知らせろ!」「了解!」
ザックが指示すると、ジョーイは走り去る。
黒い狼は10頭ほどで、わたしたちを取り囲む。
「しまった!」
1頭がわたし目掛けて飛びかかってきた。




