(26)拳闘の悪魔
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ワイバーンの解体ができるまでの2日間、エルラインはギルドで有料で受けられる、体術の講座を受けたり、模擬戦をやったりして、技を磨いていた。講習など受ける必要があったのか疑問だか、エルラインは満足していた。モチロン、模擬戦は瞬殺で全勝したらしい。
わたしは、宿でゴロゴロしたり、宿でダラダラしたり、宿で昼寝などに勤しんだ。2日間で一度も外に出なかったが、忙しかったからだ。うむ。
解体ができたと知らせを受け、エルラインとギルドに向かう。ギルドに入ると、「拳闘の悪魔だ…」「蹴りの殺し屋だ」などと、エルラインを恐れる冒険者でザワザワしている。
「エルライン…アンタなにやったの?」
「特になにも」
エルラインはスンッと済まし顔だ。
「エルライン、何か武器とかいる?」
素手で戦っていたら、手を怪我するかもしれない。体術でもヌンチャクとか使うし。
「そうですね。無くても構いませんが、ナックルダスターなどでしたら、ポケットに忍ばせるにはちょうどよいかと」
なっくるだすたー?検索
『ナックルダスターとは、拳にはめて打撃力を強化する為の武器の総称』
メリケンサックだよ。昔のヤンキーが持ってたやつ。コェェ!エルライン、恐ろしい子…
とはいえ、作ってやろうか。クリエイト、エルラインの右拳に合うナックルダスター
『ナックルダスターをクリエイトします。終了まで1分』
比較的すぐにできるね。
『クリエイト終了しました。空間収納へ送られます』
「はい、エルライン」
空間収納から取り出すと、猫を意匠にした、カワイイナックルダスターだった。カワイイけど、耳が殺傷能力を増している。素材は…オルハリコン??何でオルハリコン??
『クリエイトにオルハリコンが使用された理由は、一度でも手にした素材を使ってクリエイトがなされるためです。転生前、転生後どちらで手にしたものでも可能です』
頭の中で教えてくれました。一度でも手にしたって…ああ!鋼級の試験でオルハリコンの原石触ったからか!めっちゃラッキー!
これから、いろんなものを触っていこうと思う。…魔核、量産できちゃうんじゃない?…取り敢えず、考えるのはよそう。
猫のナックルダスターを渡すと、エルラインは感激で上気している。無表情だが。
「あ、ちょっとまって」
エルラインの手から、ナックルダスターを取り戻す。
付与。
『付与する項目を上げてください』
んと、変形、変質防止、防汚、攻撃力アップ、自動修復、自動帰着、エルライン以外の使用不可、エルラインの手を保護、疲労回復
こんなもんだろう。オルハリコンだし欠けることはないと思うけどね。
『付与を開始します。終了まで5分』
「数分で付与できるから待ってね」
「!!付与までしていただけるのですかっ!」
エルラインが感激しすぎて両手で口をおおって、泣きそうになっている。
エルラインをいいこいいこして、受付に向かう。ギルドマスターに繋ぎを頼み、空いてる椅子に腰掛ける。
『終了しました。空間収納へ送られます』
「はい、できたよ」
エルラインの手の上に乗せた時、
「あら、カワイイ置物ね。どこで買ったの?」
ちょうどアネッタがやってきた様だ。
「これは、ご主人様より賜ったナックルダスターです」
無表情のエルラインが、得意気に(無表情なのになぜか分かる)猫のナックルダスターをはめて、アネッタに拳を見せる。
「…ナックルダスター」
アネッタさん、顔がひきつってますよ。
「置物としてはカワイイけど、ナックルダスターだとしたら、ヤバイ武器ね」
あ、やっぱり?耳のとこやばいよね。
アネッタにともなわれて、すっかりおなじみになったギルマスの執務室へ向かう。
「失礼します。ユーミさんをお連れしました」
「入って頂戴」
中にはいると、背後に立とうとするエルラインを無理矢理横に立たせた。
「座って」
エルライン!いいから、横に座んなさい!
ソファに腰掛け、お茶をのむ。
「本来なら、倉庫に直接来てもらうんだけど、誰かさんのせいで、輪をかけて目立ってしまうからね」
ギルマスは、お茶を飲みながら、チラッとエルラインを見る。
「エルラインが随分有名になってるわね」
わたしが、ギルマスに聞いてみた。
「全くよ。目立ちたく無いって言ったのは誰だったかしら?講習で講師を蹴り飛ばすわ、模擬戦10戦手練を全て10秒以内で失神させるわ、バケモノなの?」
エルラインさん、加減を知りましょう。エライことになってたのね。
「…そうだったのね」
「まぁ、美人のエルフにボコられて喜んでいる輩も多いけど。負けずに研鑽しようって雰囲気になったから、少しは助かったわ」
まぁ、ギルドの役に立ったならいいか。
「それで、ワイバーンだけど、今裏からこっちに持って来させてるから、届いたハシからしまって頂戴」
執務室の奥の扉から、オクトーの指示で布が掛かった物が運び込まれる。
「しまってから、宿で確認してくれる?問題は無いと思うけど。アナタたちの事は信頼してるから、イチャモンつけることはないでしょ」
エルラインが空間収納を使えることは内緒なので、わたしがせっせとしまっていく。
ふと、ギルマスがエルラインの拳を見た。
「エルライン、エゲツないもん、着けてるわね」
ギルマスも引きつっている。
「ご主人様から賜りました」
「見た目可愛らしいのに…ただでさえバケモンみたいな人を強化してどうするのよ。それに、これの素材は…まさか」
あ、ギルマス青くなった。こっちを見たが、ニッコリ笑っといた。
「素材については追求しないことにするわ」
ギルマス、冷や汗流れてるよ。大変、お化粧落ちちゃう。
ワイバーンの素材をしまい終えて、一段落すると、ギルマスがワクワク顔でこっちを見た。
「解体費用は前のと一緒でもらってることにするから必要ないわ。ところで、いつワイバーン肉食べるの?」
そういや、そんな約束したか。
「じゃ、今晩でいいんじゃない?大丈夫よね?エルライン」
「はい。構いません」
「じゃ、お世話になったんで、オクトーさんも呼んでください」
特急で解体してくれたしね。お礼は必要よね。
「分かったわ。じゃ、裏の広場は立入禁止にしとくから、準備に入る前にアネッタに声をかけて」
もんのすごい、笑顔のアネッタさんが頷く。
笑顔のギルマス、副ギルマスに見送られて部屋を出る。
宿に戻ると、エルラインは晩の買い出しに行くという。わたしは、モチロン、昼寝に忙しい。




