(19)お空で遭遇
「取り敢えず、飛行の練習して、明日中には次の街に行こうか。それで、わたしとエルラインの関係だけど」
エルラインは正座をして真剣な顔で話を聞いている。…やりにくい。
「姉妹ってのは…」
「わたしがご主人様と姉妹だなんて、恐れ多くてありえません!」
全身で拒否された。
「だろうね。うーん。んじゃ、わたし、隔絶された山奥の里からやって来てる事になってるの。わたしは里の長の娘で、一人里を出たお嬢様を心配して、里から飛び出した、わたしの侍女って事でどう?」
「ご主人様の思うままに。わたしは、長の娘であるご主人様のお世話と護衛の為にお側に居ります」
…なんか釈然としないけど。まぁいいか。
「んじゃ、そう言う事で。わたしの本当の生い立ちとかは、おいおい話すわ。早速飛行の練習しよっか」
それからしばらく、浮遊や飛行、探査の練習をやった。エルラインは飲み込みか早くて、あっという間に出来るようになった。エルラインは格闘技の練習をしたかったようだが、残念ながら、わたしにそのスキルはない。街の冒険者ギルドとかで練習出来ると思うよ。
暗くなったので、練習はお終いにして、エルラインは夕食の準備に取り掛かった。わたしはテントでゴロゴロしている。エルラインの魂を移してから、さっぱりゴブリンはやって来なくなった。それでも、結構な数のゴブリンを倒したので、次の街でいいお金になりそうだ。
翌日、早速次の街まで飛行で向かう。あまり高く飛ぶと目立ってしまうので、森の上ギリギリぐらいが良い。エルラインはわたしのスピードにも着いてきている。
「ご主人様、前方から後3分程の場所に、ワイバーンがおります」
エルラインに言われて、私も探査で確認する。ワイバーンは3匹(3羽?)飛んでいる。街にも近いし、討伐しとくか。
ワイバーンってきっと革とかも使い道有りそうだし、なるべく体を傷つけない様にしたいよね。
よし。わたしはワイバーンを目視すると、ワイバーンが気がつく前に、「アイスアロー」目を狙った。
1匹落ちると、残りが気が付いて向かってきた。もういっちょ「アイスアロー」
もう一匹も落ちていく。あ、木に引っかかった。
わたしは木に引っかかったワイバーンの死体を拾いにいくと、最後の一匹が着いてきた。アイスアローをブチ込もうとする前に、
「そやっ」
エルラインが空中でワイバーンの頭を回し蹴りした。
意識を失い、ワイバーンか落ちていく。
「わたしが2匹拾ってくるから、エルラインは、それにトドメ刺して」
「畏まりました」
わたしは拾ってきた2匹の血抜きをし、(魔法で血液だけ空間収納に転移させた)エルラインのところに行く。エルラインも血抜きをしようとしたので、わたしが血抜きをしてあげた。
「その魔法は便利ですね」
「この魔法は無属性だし、エルラインも出来ると思うわ」
「…今度挑戦してみます」
エルラインは密かに熱く燃えている。
ワイバーンは解体せずに、そのまま空間収納へ片付けた。おそらく、討伐対象だろうけど、討伐部位が分からないので、傷つける訳にいかなかったからだ。
ワイバーンを討伐してから、昼食を取りまた街へと向かった。街が見えてしばらくしてから飛行をやめて、街道を歩く。
街の城門へ着くと、本来なら兵士が立っていて、身分の確認などするはずなのだが、門は固く閉ざされ、兵士が見当たらない。
「一体どうしたのでしょう?」
エルラインも不思議そうにしている。取り敢えず門の近くまで行くことにした。
「そこの二人!止まれ!」
頭上から声が聞こえた。見上げると、門の上に兵士が立っていた。
「お前たち!どこから来た!」
「コレールよ」
「そんなはずはない!コレールから来るには、エダの森を通らねばならん!今あそこを通ることはできないはずだ!」
エダの森ってさっきまで居た森かな?
「…普通に通ってきたけど」
「しばしまて!」
上から叫んでいた兵士が見えなくなると、もう一人年配の兵士を伴って門の前にやってきた。
「お主たちはエダの森からやってきたというのは本当か?」
年配の兵士が尋ねる。
「そうだけど」
「隊長!あの森はワイバーンのせいで通れないはずです。このもの達が嘘を吐いているとしか…。まさか、もう討伐隊がでたのでしょうか?」
「まぁ、待て。ワイバーンの討伐隊は今組織され始めたばかりだ。それにこの門を通れば分かるだろう」
え?もしかして、ワイバーンのせいで通行止めになってたとか?
「あの…わたしは冒険者なんだけど、あの森に居たワイバーンは倒したけど?」
わたしがそう言うと、二人の兵士はびっくりしてわたしを見た。
「いやいやいや、ワイバーン3頭だぞ?それこそ、王都の騎士団か、金級以上のパーティがいくつか共闘せねば、倒せるものじゃないんだぞ」
え?マジ?アイスアローで瞬殺したけど?検索さん、ワイバーン。
『ワイバーンは飛行型魔獣で、龍種とは別の魔獣。肉食で主に山岳地帯で大型の鳥等を食べる。非常に凶暴で、山岳地帯で遭遇すれば、必ず襲ってくる。基本的には群れる事はないが、餌が不足すると近隣のワイバーンと集まり、町や村を襲う事もある。1頭でも金に近い銀級相当であり、2頭以上となると金級となる。肉は非常に美味であり、高級食材として王に献上される事もある。革は丈夫でしなやか、魔法防御の効果もあり、こちらも珍重されている。内蔵から骨、血に至るまで、薬や防具に加工される』
ワイバーンってめっちゃ使えるやつじゃん。でも、厄介な魔獣なんだね。こりゃ、要報告討伐魔獣だったか。
「…わたしも連れもまぁまぁ強いんで。なんなら死体出しましょうか?」
「なにっ?!」
驚いた兵士は二人でコソコソ何か話し、頷き合っている。
「ここではアレなんで、冒険者ギルドまで来てもらおう。その前に、身分証明書の確認を」
わたしは身分証明書をだし、「この子は身分証明書ないんで、お金払うわ」
入門料を支払い、兵士に伴われて冒険者ギルドへ向かうこととなった。
ま、最初から冒険者ギルドに行くつもりだったからいいんだけど。全部は要らないけど、ワイバーンは美味しいらしいから、少しはお肉残して貰おうっと。
これからまたややこしい事に巻き込まれそうな予感はしたが、お肉の事に集中して、考えないようにした。エルラインは鋭い目で兵士を見ている。
エルラインさん、兵士さんひびるからやめたげて。




