(13)身分証ゲット!
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無事に鋼級の試験が終わり、椅子に座って待っていた。その間も、白狼の牙の面々は試験を振り返って興奮気味に話をしていた。
「無詠唱で氷の矢は大量に発射するわ、炎は噴射するわ、大岩は落ちてくるわ、極めつけは雷まで」
リンは一番興奮している。
「結界魔法を掛けたら、あのスゴイ魔法でもびくともしないなんて、やベェ魔法だな」
ザックも感心しきりだ。
「恐らく、結界を維持するには相当な魔力が必要なんです!廃れた理由はそこですよ!それをいとも簡単に操るなんて!」
リン、鼻息荒いよ。
「しっかし、エルビスの野郎が乱入してくるたぁ思わなかったぜ」
ジョーイは思い出して吹き出しそうだ。
「でも、エルビスじゃなかったら、誰がユーミさんの相手をする予定だったのかしら?」
マリアがわたしも思っていた事を言う。
「あ、それね。俺だったの」
なんと、ジョーイがヘラヘラ笑いながら言った。
なんだとぅ?!驚いてジョーイを見る。
「さっき、ギルマスからこっそり話があるって言われてさ。俺だったら、ユーミさんの魔法を躱せるかもしれねぇし、知り合いにやベェ魔法は使わねぇだろうってね。ま、ヤらなくて良かったよ」
ジョーイは肩をすくめた。
「しかし、なぜ俺じゃなくて、ジョーイなんだ?」
ザックはやや不満げだ。
「ああ、それな。ザックは顔に出るからだってよ。ブハハハ」
ジョーイの爆笑に、ザックは憮然としている。リンとマリアも笑いを堪えている。ザックくん。素直なところは長所だよ。うん。
ワイワイ話していると、わたしたちの担当になりつつある、犬獣人の受付のお姉さんが近づいてきた。
「お待たせしました」
「…マーシャさん?」
「ええそうですよ。あれ?私名乗りましたか?」
「…さっき、エルビスさんが…」
「ああ。うるさいので、追っ払った積りが、面倒なことになってしまってスイマセンでした」
マーシャは恐縮している。
「うるさいって何があったの?」
「さっき、白狼の牙のパーティと見知らぬ魔法師がギルマスに呼ばれたって、噂を聞きつけたエルビスが、何で呼ばれたのかってしつこくて。あの人、金級になったからってギルドの重鎮にでもなったつもりか、俺になぜ話せないのかって。ホントにヤダわ」
マーシャさんは、心底嫌そうな顔をした。エルビスは相当嫌われている。
「私もさっきの模擬戦みてたんで。ぷ。ぶふふふ。気分がすっとしました。ぶはははは」
あ、思い出して笑い止まらなくなってるわ。
「失礼しました。カウンターまでどうぞ。白狼の牙の皆さんも」
笑いが治まったマーシャと受付へ。
「まずは、白狼の牙の方。白金貨1枚分をどうされますか?」
「大金貨2枚ずつを、各メンバーの口座に。残りの大金貨2枚はパーティの口座に入れてくれ」
ギルドは銀行の役割もするんだね。
「承知しました。では、皆さんのカードとパーティの口座カードを」
みんなは、冒険者カードとマリアはそれと別にカードを出す。あれがパーティの口座カードなんだろう。マリアはパーティの財務を担当してるらしい。
「お預かりしますね。では、先にユーミさん」
名を呼ばれて、前に出る。
「こちらが身分証になります。この身分証は各ギルド共通になります。ここを見てください」
マーシャに指されてカードをみると、銀色のラインに『冒険者ギルド(未所属) 魔法師 鋼級 パーティ(未所属)』と書かれている
「例えば、商人ギルドにも登録すると、このラインが増えます。賞罰などは専用の魔法具に翳せば見ることができます」
身分証はキャッシュカードより一回り大きく、紐を通す穴が突いている。材質は金属だが、なんの金属かはよくわからない。冒険者は首からさげて、ネームタグの様な役割をするらしい。
『エルフ ユーミ』と書かれており、その下に冒険者ギルドの銀色のラインがある。級によって色が違う。鋼級は銀級よりも、鈍い色のようだ。
「これで、ユーミさんも、晴れて冒険者です。それで、さっきのお支払ですが、ユーミさんも口座に入れますか?」
「お金を預けたり引き出したりするのは、冒険者ギルドだけなの?」
「自分が所属するギルドならどこでも大丈夫です。身分証で管理されてますので」
そうなんだ。でも、空間収納あるから、必要ないんだよね。空間収納の方が安全だし。
「いえ、そのままいただけるかしら?」
「はい、ではこちらです」
マーシャはカウンターのトレイにお金を積み上げる。
「大金貨15枚、金貨50枚です。確認を」
数えやすいように、10枚ずつ積み上げてくれた。ひい、ふう、みい…
「確かに」
わたしはバッグに入れるフリをして、空間収納に納める。
「冒険者登録料と、鋼級昇格試験代合わせて金貨1枚いただきます」
…先に引いててくれたら良かったんじゃない?
疑問に思いながらも、空間収納から金貨1枚出して渡す。
「はい、確かに。ええと、白狼の牙の皆さん、入金しましたので、確認を」
マーシャは手早くカードを返す。
「確かに」
カードに残高が見えるのって嫌じゃない?
「…残高みえるの?」
マリアに聞いてみる。
「冒険者カードに登録者本人が魔力を通せば見えるのよ。パーティの口座カードはパーティメンバーが魔力を通せば見えるわ」
へぇ。便利なんだね。試しに自分のカカードに魔力を落としてみる。
『コレールにて口座開設 残高0』
と文字が浮かんだ。おお!すごい
「直近のお金のことが見えるのよ。過去の履歴はギルドで教えてくれるわ」
「なかなか便利ね」
「盗難防止と、万が一亡くなってしまった際に、お金を家族に残すためにあるのよ」
「確かに、ダンジョンでお金持ったまま死んでしまったら、家族は困るわね」
「冒険者も旅をする商人も何があるかわからないからね」
生命保険があるわけじゃないもんね。家族が要る人は家族のために貯めるか。
「お金目的の盗賊も、これで大分減ったって言われてるわ。まぁ、荷物満載商人は相変わらず狙われるけどね」
商人大変だなぁ。
冒険者登録と支払いも済み、宿に帰ることになった。
「マリアのカード見せてくれない?」
「いいわよ」
マリアからカードを受け取る
『人族 マリア』
その下に私のラインより明るい銀色のラインが引いてある。
『冒険者ギルド(エステラ) アーチャー 銀級 パーティ(白狼の牙 銀級)』
「ギルドに所属するとなにかあるの?」
「そうねぇ。手紙とか荷物とか自分やパーティ宛の物を所属ギルドに送ることができるわ。後は指名依頼を受けられるようになる。ギルドに所属してる方が、信頼性が増すからね。ギルドのバックアップを受けることも出来るようになる。でも、その分何か悪いことをすると、ギルドの名を落とすことにも繋がるわ」
なるほどねぇ。得るものも多いが柵もできるってか。でも、荷物や手紙を受け取れるのは便利よね。この街は領主があれだから、ここではヤメとこう。どこか、いい街があったらそこのギルドに所属しよう。自分で見つけられなかったら、ザックたちのエステラに行ってもいいしね。
さて、今晩はザックが奢ってくれるらしいので、楽しみにしよう。
「ユーミさんの歓迎会兼冒険者登録お祝いしましょうね」
リンが笑顔で言ってくれた。
「ありがとう」
すっかり日も落ちた道中、5人で話しながら宿へ向かった。




