(11)昇格試験
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ギルドに入り、依頼受付にいた、さっきの犬獣人のお姉さんに声を掛ける。
「はい。ユーミさんお待ちしてました。こちらへどうぞ」
受付のお姉さんに案内された部屋は、教室のような場所で、長いテーブルと、長椅子が並んでいた。
「ユーミさん、この一番前の真ん中に座ってください。お連れ様は部屋から出るか、一番後ろの席で座っていてください」
わたしは言われたとおり、前の席に座った。リンとザックは後ろで見ているようだ。
受付のお姉さんと入れ替わりに、魔法師らしき女の人が入ってきた。
「はじめまして。あなたがユーミさんね。わたしは今回の鋼級昇格試験を担当する、元金級冒険者のメルバよ。よろしくね」
「よろしくお願いします」
メルバは、全身黒一色の、フード付きのマントを着ていて、凝った装飾のマジックスタッフを待っている。顔は、フードでよく見えない。
「では、初めに、素材を見て、何の素材で元はどんなものか。素材はどんな効果があるのか話してもらうわ。一つ目はこれよ」
わたしか座っている席のテーブルに、毛皮が置かれた。
「触っても?」
「ええ。構わないわ。汚したり破損はしないように」
割と大きな毛皮で、濃い茶色と薄い茶色で、まだらの模様になっている。
よし、鑑定
『名:マジカルグリズリーの毛皮
特徴:エステラ近くの茜の森に棲息していた、雌のマジカルグリズリーの毛皮。保温と、魔法防御に優れている。マント、軽量鎧、帽子、手袋に加工される。手に入りにくく貴重な為、オークションで偶に見られる程度。
価値:大金貨5枚』
ふむ。んじゃ、検索、マジカルグリズリー
『マジカルグリズリーは、熊系の魔獣の中で、唯一魔法を行使する。土属性の魔法で足元にぬかるみを作って転ばせたり、砂を巻き上げて目潰しをしたり、壁を作って行き止まりにして追い込む。攻撃には魔法は使わず、鋭い爪を振り下ろす。体躯は人の3倍はあるので、薙ぎ払われるだけで殆どは絶命する。縄張り意識が強く、集団で居ることは稀。クラスは鋼級。但し、繁殖期の雄や、妊娠、子育て中の母熊は凶暴になり、銀級か大きさによっては金級となる』
なるほど。よし、答えよう。
「ええっと、これはマジカルグリズリーの毛皮ね」
「正解よ。この毛皮の特徴は?」
「保温性に優れ、魔法防御もできるわ。その為、マントや帽子、軽い鎧なんかに加工されるのが一般的ね。但し、なかなか手に入らないから、オークションに出されるのを待つしかないわね」
鑑定さんの文言を、わたしなりにアレンジしてみた。
「…完璧ね。では、マジカルグリズリーの特徴を」
「マジカルグリズリーは…」
検索さんの文言を結構そのまま伝えた。
「…詳しいわね」
後ろの方で、小声で「マジカルグリズリーって目潰し以外もやるんですね」「あれって魔法だったんだな。知らなかった…」と聞こえた。丸聞こえですよ。君達、銀級パーティだよね?
「素材も元の魔獣の特徴も正解よ。次に行くわよ」
毛皮を下げて、出してきたのは、青っぽい石だ。
鉱物かな?よし、鑑定
『名:オリハルコンの原石
特徴:コレル鉱山で発掘された。精製すればオリハルコンインゴットを作れる。但し量が少なく、インゴットにはできない。
価値:白金貨5枚』
へぇ。コレル山ってオリハルコン採れるんだ。…こんなちっぽけな原石で白金貨5枚…。
検索、オリハルコン
『オリハルコンは希少鉱物で、青銀色に僅かながら発光している。ミスリル鉱山において、とても希に発掘される。魔力を一切通さず、属性を付与することも出来ない。魔力を纏うミスリルとは真逆の性質。その為、完全なる魔法防御の鎧や、魔法を跳ね返す武器として珍重される。硬度も高く、ミスリルの工具でも負けてしまう為、加工が難しい。ミスリル鉱山で見つかっても、量が少なく、インゴットに加工するまでに至らない。ドワーフにおける特別な秘術でのみ加工できる。その強固で希少な特徴から、あらゆる物のレベル最高位の名として冠される』
オリハルコンって凄いんだね。…わたし確か、クラスはオリハルコンだったよね。…神様、期待が重すぎます。無理です。
「…とても貴重な鉱物をみせていただいて、嬉しいわ。これはオリハルコンの原石ね」
「よくわかったわね。オリハルコンなんて見た事がある人の方が少ないのに」
「…エルフだもの」
「そうだったわね。では、オリハルコンの特徴を」
「オリハルコンは…」
検索さんありがとう。そのまま伝えちゃうよ。
「…ドワーフの秘術は知らなかったわ」
おいおい。試験官が知らないってマズいだろ。しかも、ドワーフが主な街で。
「最後はコレよ」
こう来たか。布の上に乾燥した植物が置かれている。
鑑定
『名:乾燥したエゼルの花
特徴:カゼスの森奥地にて採取。10日間乾燥させたもの。麻痺予防薬の原料となる。
価値:銅貨1枚』
ああ、これで予防するのね。価値の差が、オリハルコンの原石と激しいな。検索、エゼルの花
『エゼルの花は、中高地の森に生息し、雪解け直後から完全に溶けるまでの短い間しか花を咲かせない。その為、生花で市場に出すのは困難な為、乾燥させて流通する。麻痺予防、混乱予防等に用いられるが、製薬の際の手順が悪ければ効果は短くなる。乾燥させたものを茶として飲用すれば、慢性的な神経疾患に効果がある。但し、かなり苦いので蜂蜜等で風味を変える必要がある』
「これは、エゼルの花を乾燥させたものね。麻痺予防薬の原料よ」
「正解。エゼルの花の特徴は?」
「エゼルの花は…」
「神経疾患に効果がっ!」
メルバが驚いている。わたしの話を鵜呑みにしていいんかな?
メルバは、はっと気が付いてごほんと、咳払いをした。
「失礼したわ。魔法薬を研究している機関に話してみるわ。興味深い話をありがとう。どの素材の知識も完璧と言わざる得ないわ。1次試験は合格よ」
「…ありがとう」
やれやれ。どうにかなったな。
「ユーミさん流石です!」「やったな!」
リンとザックが駆け寄ってきた。
「準備が出来次第、訓練場で実技試験を行います。ザック、場所は分かるわね?ユーミさんを連れて行ってあげてちょうだい」
「おう。わかった」
メルバは素材の入った荷物を抱え、部屋から出ていった。
ああ、戦闘なんて気が重い…




