カーテンコール
一瞬
風が冷えて
雨の気配がした
差し迫る
予感に支配され
大きく取った歩幅
砂埃の混じる
アスファルトを蹴る
白灰色の雲は
幾層にも
折り重なり
色を濃くして
今この時を、待つ
木々のざわめく音の中で
鳥の声はぴたりと止んだ
は、と
見上げる空が
低く
私に近づく
追われるように
逃れるように
足早になる
人々を
おかまいなしに
襲う
一滴と
その一滴は
この雨の
幕開け
忍び寄る緊迫感の
終幕
濡れてしまえば
触れてしまえば
容易い諦めが
服についた
染みのように
広がり
道の窪みに張った
水たまりを
数えて
降りだしてしまえば
もう戻れない
乾いた世界には
どこにでも
転がっている後悔と
始まりだした
安堵
隔たりに跳ねては
響く
音すべては
郷愁のような
カーテンコール
濡れた睫で
戻れない
拍を 打つ