虚勢ってやつ
「キャラって……」
私の格好、というか容姿は背骨ら辺まで伸びた髪を結ぶことも無く流して、前髪は重ため。
伊達で丸メガネをしている。
体型までは寄せれてない……ことも無いのか。
女性にしては高い身長に、巨乳の部類の胸。
目は鋭く、何時も怒ってるか、不機嫌だと思われがち。
「『13番目の正妻』の主人公みたいだな、私」
「そうなんです!私のデビュー作で、ものすごく思い入れがあって、まさに小説から出てきたんじゃないかってくらいです!」
興奮気味に捲し立てる黒曜さん、私を見る目が段々と怪しいものになっている気がする。
「そ、そうなのね……」
「ああ、しかも声っ!」
「声?」
「イメージ通りのハスキー!ああ、もう、抱いて欲しい……」
体をたぎ寄せて自分の世界に入ってしまった。
私は思い描いていた季節終先生のイメージと本人が全く異なっていて、少しショックだ。
なんか、もっと陰キャ陰キャしてて、陰の住民みたいなのをイメージしていたのに、青みがかったボーイッシュな髪と、大きくクリっとした目。
身長は普通くらいだから、ちょっと前髪が長い事くらいしかイメージと合わない。
でも、人見知りなんだっけ。今の感じからは想像はつかないけど。
私はとりあえず珈琲を一口飲んで、気持ちを落ち着かせる。
「黒曜さん、朝ごはんは食べる人?」
「あ、いえ。食べないです」
「そっか、遠慮してない?」
「してないで、グゥ〜……」
口ではそう言っても体は正直だった。
私は苦笑いして、「遠慮しないで」と言い、黒曜さんを座らせる。
「恥ずかしいですぅ」
真っ赤な顔で唸る様子は、ちょっと、こう……ムラっときた。
何私は高校生に欲情してるの!?
あ、危ない。ガチの犯罪者になるところだった。
邪念を振り払うように適当に菓子パンを持っていく。
「でも、ゴメンな。私が朝ごはん食べない派だからさこんなのしかない」
「い、いえ!ありがとうございます!いただきます!」
「あ、珈琲は飲める?」
「も、勿論ですよ!だ、ダーイスキ!」
作ったような笑顔でそうは言うが、どうせ嘘だろう。でもまあ、それなら、本物を知ってもらおうか。
私は嘘に気が付いてない風を装って黒曜さんの為に珈琲を入れ始める。
チラッと黒曜さんを見るとやっちまったと顔に書いてあって、それが可笑しくて小さく笑った。