6/14
正体知ったってやつ
「はい、僭越ながら『季節終』って……」
少女、黒曜さんが小説家のペンネームを言った時には少し正気を失った。
「うっそ、季節終先生なの!?本当に!?」
「うっ、はい……急に人が変わったな」
マジでやばい。世間に公開されてないそのご尊顔が目の前に!
こんな女の子が、なんな繊細な小説を書いていたなんて!
「待てよ、昨日サイン会じゃない?」
季節終のサイン会が昨日で、その人物が逃げるように私にしがみついていた。
私がそう聞けばサッと視線を逸らして挙動不審になった。
「まさか、逃げたの?」
黒曜さんはウルっとした瞳で私をキッと睨んでくる。その仕草凄い可愛い。
「し、仕方ないんですよ!怖いんだから!」
「怖いって人が?」
「そうです」
「……私は?もしかして人扱いされてない?」
ちょっと、いや、かなりショックだぞ。
ぐーたらな、私と言えど、最低限は身だしなみは整えてるし、めんどくさいけどメイクとかネイルとかも気にしてるのに。
「そ、それは」
「それは?」
「私のキャラに似てたから!」
顔を真っ赤にして、そう叫ばれた。
私が小説のキャラに似てたから怖くなかったと。
そんな事ある?