天蓋崩落7
不撓は銃声と張り合うように声を上げる。
「弾数に限りあり! 前進あるのみ、ぶちのめせ!」
燃える地下の13倉庫にて「軍」と「組織」が衝突している。
数に劣る「軍」ではあるが、大盾部隊の堅牢なこと。200センチ×80センチほどの盾が立ち並ぶ。破壊信号を受けつけない「軍」は常に前進できる。そして「軍」製の実弾銃、爆弾はサイボーグにとって十分に鋭い牙であった。
鉱石生物との戦いに強く、そして現代人との戦いに弱く、サイボーグは作られている。処理しやすいようにできている。ゆえにサイボーグの設計主任であるケントにとって、壊し方は分かっているのだ。
「はっはー、どんなもんだ」
不撓たちはコンテナの合間を進む。常に四方から破壊信号が放たれる。大盾部隊が隙なく隊列を組み続ければこそ、不撓たちは生きている。
「センサーに頼るなよ! 敵さんは有象無象だが――亡霊どもだ、見て見つけろ」
柘榴による通信系の破壊は、南極兵士を亡霊にした。相互通信から解き放ち、目には見えるが、それ以外では透明の存在にしたのだ。
火が猛る空間では、暗い場所は少ない。
隠れたところで火と爆撃でいぶし出せる。
とはいえ――敵の数は不明。鹵獲した殺人銃も、予め弾数を絞っていたらしく、弾切れになっていた。敵ながら、と不撓は感心する。
「手が込んでやがるなぁ」
「ど、ど、どうするつもり?」
ケントが火の粉を避けながら不撓に聞いた。
「少なくとも捕らえる必要はあるだろう。一番重要なところを聞き逃したからな」
ケントには分からない。
その様子を見て、不撓がため息をつく。
「なんで途中までは帰還計画に乗り気だったか、だ」
ルイの元には柘榴を始めとした超能力者たちがいる。「組織」の協力なくして帰還計画は成り立たない。
「マリアは威勢の良いこと言ってたが、柘榴に行動制限を破壊してもらわねーと、俺らは外に出た時点で死ぬ。そうだろ?」
「う、う、うん。そういう風にした、安全装置として。でも」
「ああ、抜け道は一応あると思うぜ、柘榴の破壊以外の超能力とか……望み薄だけどな」
爆発が起こり、数名のサイボーグがひしゃげた。丸めた紙のように。
地下空間には煙が充満し始めた……が、幸いにも呼吸が必要な存在はいなかった。
「でっかい理由があるはずだ。手のひら返した理由が。俺たちに自殺して欲しくない理由がな」
そう思えばいくらかの推測もできる。
だが推理は不撓のフィールドではない。
「探偵パートやるにゃ、役者を揃えないとな」
それを聞いて、隊員の一人が言う。
「ならもっと急ぎませんと」
「いいんだよ、堅実なやり方で。どうせ玉髄が来たらその時点でカタがつくんだし」
あくびするように大口を開けて、不撓は言った。
「そんなに強いんすか」
また別の隊員が聞いた。
不撓が笑う。
「当たり前だろ。いいか、「軍」には30万弱「組織」には25万ぐらいの構成員がいる」
不撓はマリアを思い浮かべる。
黒いドレスに赤い花飾り。銀の髪に青紫の瞳。
決してカリスマではない少女。決して技術を持っているわけではない少女。
だが彼女は、最強のカードを引き当てた。
「マリアの指揮下にあるのはおよそ2千人」
つまり「軍」や「組織」と比べたとき、その差は100倍以上である。
「玉髄ひとりで差は埋まる。超能力も強力だが、それ以前にあいつは強いぜ?」
何度目かの爆発音が響く。




