ダルタニャン4
ルイが柘榴に言う。
「注意すべきは「軍」だね。数の力もそうだけど、その武装も怖い」
「……玉髄も脅威では?」
「いやいや、超能力の無効化がある以上は動けないでしょう」
薄暗い地下道の中を、二人は歩く。足取りは軽やかでリズミカルだ。反響する音は打楽器の演奏にも聞こえた。
「殺人銃を持っているだけあって強気だよねー、「軍」は。精鋭部隊にでも持たせられたら厄介だ。銃手を潰しても、銃自体が回収できなかったら意味ないし」
「銃を量産しますか?」
ルイが手招きをする。柘榴は自分の頭を下げ、ルイに近づける。彼女の頭部をルイは撫でた。ゆっくりと、子どもを撫でるように優しく。髪のない頭部そのものの輪郭をなぞる。
「壊すことばかり考えなくて良い。キミの能力は創造のために振るわれるものだ。大丈夫、ボクならきっと解決できる」
「信じています」
柘榴はルイの目をじっと見つめる。空でも海でもない、どん詰まりの青色だ。その青色がまぶたに隠れる。
ルイは申し訳なそうに言う。
「ま、彼らは壊してもらうしかないんだけどね?」
二人の進む地下道の先には、柄の悪いプレイヤー集団がいた。それぞれが思い思いの格好をしている。野球帽の男が前に出る。
「これから何が起こるか分かってるんだろうな」
ルイと柘榴は思わず、口角を上げてしまう。彼らの不安が手に取るように分かる。「もしも罠だったらどうしよう」「雇い主が自分たちを裏切っていたら」彼らは恐れている。
柘榴が甲高い音を鳴らす。勢いよく両手を合わせたのだった。
「心配は無用です」
白く細く長い指がうねる。
「始まるのは、一方的な破壊と創造ですから」
ルイと柘榴以外、この地下道から出てくるプレイヤーはいなかった。消えたプレイヤーと関わりのあった者は死を確信した。思念通信の連絡先から消失したのだ、ブロックではなく消失、つまりそのプレイヤーは消えたのだ。
この南極都市において、消えることは死と同義として扱われる。
柘榴の超能力である破壊が使われた。
神の文法さえも破壊する力は、ただ静かに、穏やかに振るわれた。
「ところで」
ルイが思い出したことを言う。
「例の彼はどうしてるの?」
柘榴はくしゃっと顔を歪めた。
「とても元気そうですよ……監視だけでなく、実際に動きたいと五月蠅いです」
「ははぁ、さてはキミ、彼女のことを言ってないな?」
ルイがニヤニヤしながら聞いた。とはいえ馬鹿にするつもりも、責めるつもりもなかった。単に柘榴の判断を面白がっている。
「あの子がいれば、監視がいらないこと、バレてしまうでしょう」
柘榴の言うことは正しい。
もしも瑠璃の千里眼があれば、監視などという仕事は彼女の専売特許になるのだ。
瑠璃もまた、消えたプレイヤーではあるが。




