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交差世界の黄金錬成(アルスマグナ)  作者: 高桐遥輝
第一章--黄金の夜明けの始まり
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解放戦――合流フェイズ

「全く、何でこんな事しているんだろうな、俺」

 テレビの臨時ニュースから二人の向かったショッピングモールが武装占拠されたという情報を目にしたときには既に外出用の衣服に玖路(くろ)は裾を通していた。

 妙に気が合うというだけで今日会ったばかりの人間二人に対して行う行動にはリスクが見合わなさすぎると自分でも思っている。

 それでも疑問に頭を埋め尽くしながらドアを開け、異能を使用して三分も立たない内にはショッピングモールの裏口の闇夜に溶け込んでいた。

 文字通り自身の生体細胞ごと(・・・・・・・・・)影と融合していて、だ。


 それは影と言う無形の存在へ己の生体細胞を衣服ごと融合させた奇怪な隠匿術だ。アルカディアのソレが隠れ家を空間ごと畳んで迷彩に溶かすのに対して玖路のそれは迷彩その物と一体化するという術理だ。

 形而上的概念も含めたあらゆる認知可能存在に対しての生体細胞融合能力及び身体能力の強化。

 それが玖路の能力、そして固有法則(オリジン)名は『黒き御魂の(ブラック)生命樹の落葉堰(フォレストセル)』。

 今、彼は真影実体生命体と化している。影は肌であり、腕であり、目であり耳である。影は彼の意思に従って伸縮自在に動き、触手の如く伸ばせば物理的影響を有して世界に干渉し、影に射影される光景と音響を介して状況を知覚していく。

 そして影に肉体ごと溶けるということが出来るならそれこそ人型という括りからも解放されることも可能。

 意志を持ち蠢く不定形の影として今の玖路は世界に存在していた。


「あいつらは……自販機の裏? でもまあひとまずは隠れられていると考えていいか」

 玖路がモールに侵入したときに状況把握のためにモニター室に向かったところ先客として暗号の解除を行っている武装したチームの存在を確認。影であるためドアの隙間から侵入し隠れて様子を見ていたところ暗号が解除されそうになったため奇襲により無力化。

 その後は飲み込んだ存在の情報(・・・・・・・・・・)を用いてテロリストの本体からの通信を誤魔化し、途中までだった解除を再開して映像記録を獲得。

 監視カメラの映像記録からアルカディアと優世(ゆうせい)の位置を割り出した後は記録から義勇軍の存在。及びテロリストの動きを把握したところで頭の中に幼げな声が響いた。


『玖路!!』

「あー……アルカディアか? その、なんだ。助けに来た」

『それは分かるけど、でも私とアンタって今日会ったばかりなのによく助けに来たわね?』

自問自答していた疑問を改めて問いかけられて、小さな苦笑が浮かんできた。

「なんかニュースの情報見て気が付いたらここに居たってわけだ。まあ自分で言うのもなんだが俺の実戦経験は並じゃない……というかプロの域にあると自認はしている。だから合流してあいつらを叩くのがお望みなら手伝うが」

『……』


 一瞬アルカディアからの通信が途切れる。「実戦経験が並み以上にある」という言葉に何かしら思うところがあるような間だった。

 しかし次には強い意志を感じさせる声で返信をした。


『そう、なら手伝ってもらうわ。私もそれなりにそういうの(・・・・・)はあるからアンタの足は引っ張らないと思うわ』

「そうか、俺は今モニター室にいる。居座っていたグループを無力化してそこから監視カメラの映像記録を掌握した」

『フードコートからの連絡は?』

「あいつらの一員の声で誤魔化した。それと人質の中にあいつらの手先がいるな?」


 念話を介してお互いの情報を交換し合う二人。

『少し良いかな?』

 そこにアルカディアを介して優世が話を切り出す。


「どうしたんだよ?」

『君の異能は『細胞をあらゆる存在に融合させて変容、強化する』、アルカディアは『構築式を一からマニュアルで作り上げて自身の量子をブーストさせる』、なら僕の固有法則(オリジン)の内容も知らせておいた方が良いと思ってね』


 アルカディアの力は学校での決闘にて知れ渡っており玖路の力は先程の情報交換で二人には知らされている。

 そして優世の力は玖路との交信の前に黒い剣を召喚、それを多種多様な形に変容させているのをアルカディアは見ており玖路もその詳細を知らされている。

 だが優世の力の正確な説明は未だにされてはいない。

 故に優世は己が力の詳細を二人に伝える。


 説明不能な理由なき二人への信頼に困惑しながらも、おそらくは想いが通じ合っている二人のために。


『『無貌なる(モルフェウス)黒剣(ブレイド)』――内包する性質と形状が不定である『黒剣』を剣の形状を錨として形状と性質を情報の海の中から検索して固有の性質を持った武装に変形させる能力』


 己が固有法則(オリジン)の在り方を告げる。


『三人の力を合わせれば三十分も立たないでこの事件にケリを告げられるよ』


 確かな勝利宣言と共に。


遅れて申し訳ないのです。

謎の理由なき強固なシンパシー、それはいかなる要因によるものか。

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