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交差世界の黄金錬成(アルスマグナ)  作者: 高桐遥輝
第一章--黄金の夜明けの始まり
7/13

解放戦――開始フェイズ

『速報です、現在ショッピングモールを武装占拠しているグループは人質の解放の条件として政府に対し情報の提供を求めていることが分かりました』

『政府から直属に派遣されたネゴシエーターとテロリストとの交渉が始まった模様です。交渉の場面は独立式の回線を用いて秘匿されているため詳しい内容は不明です』

『求められている情報の内容は依然として不明です。武装グループの要求も我々報道陣に発せられる情報は「政府に情報提供を求める」との一点張りのままです』


『なんでそこまで交渉場面とかを隠すんかね? よほどやべー情報なのか?』

『つか占拠されたのって九時丁度だったはずだろ? ネゴシエーターが交渉始めたの占拠からに十分もたってねえぞ』

『現金じゃなくて極秘情報を求めて事を起こしたのは分かるしそれを隠す政府の対応も理解はできるがいくら何でも迅速すぎる。明らかに人質じゃなくて情報の方が大事ってことか』


 マスメディアやネットで最新の国内で起こった武装占拠事件の話題と部外者としての意見が飛び交う中、テロリストが突入した混乱を突いて潜伏し合流、異能を使用し未だに補足されずにいるアルカディアと優世の当事者二人は文字通り影に潜みながら―魔術を使用して自販機と壁の隙間に空間を同調し割り込ませてその中に入っている―アルカディアは簡素な探知魔術を並列使用することにより精度を高度化して展開、優世は剣をソナー装置に変換(・・・・・・・・・・)、次々と用途に応じて種類を変えてテロリストの情報を収集、分析していた。


目に見える(・・・・・)人数は二十四人、紛れ込んでいる(・・・・・・・)のを割り出すのはあと少しか」

「人質の中に均等な位置で割り振られているわね。円形を組むように人質を集めているのはいざという時に誰がどの位置でも交渉材料を確保できるようにしているということかしら。」

「種がわかれば問題ない。問題は僕たち以外にも解放戦の機をうかがっている人たちのことだ」


 探査の時に二人以外にもテロリストの目を逃れて解放戦を行うつもりの人物たちがいる事も知ることが出来た。テロリストの巡回の動きに対して逃れるように移動していったことから協力関係はない事は確証がある。

 問題は蛮勇を起こさないかどうかだ。それに計算深く人質の周辺を制圧しても人質に紛れ込んでいた伏兵に思い当たらなければ拘束されて最悪殺されるリスクがある。

 故に二人が潜伏している位置から離れた場所にいる義勇軍が行動に移る前に接触する必要が危険性排除の上であるのだが、問題が一つある。


「結界を展開する能力者が隠れ家代わりに展開してるね」

「高度すぎて特定の波数以外の連絡がシャットアウトされているから直接会いに行くしかない、か。話す機会を逃したのは痛いわね……」


 義勇軍たちはテロリストたちの目を逃れるために異能による結界に身を隠すことで視線を欺きソナーを打ち消して存在を気取られないようにしている。

 しかし術者の腕が高すぎるのが災いし、外からの異能力による探知系統の影響を一切受け付けないようになってしまっているのだ。

これは運悪くアルカディアがとった退避方法が異能者の常識からみれば相当イレギュラーなのが悪かったのに加えて二人と義勇軍の行動の間も悪く他に取り残されている一般人はいないと相手は判断してしまい、二人が補足した直後には結界を展開してしまったのである。


「ほかにもテロリストに対する勢力が知れただけ良しとしましょう。貧乏神には事欠かさないのが私だもの」

「それだと完全に僕は巻き込まれた側だね」

 優世のその言葉に音も大きな動きもないが強い反応を見せるアルカディア。それは憤怒ではなく罪悪感によるものだと夕闇と同じ光量の空間でも見て分かる程だった。

「……ごめん」

 うなだれてポツリと謝罪の言葉を口にするアルカディア。どうやら先程の揶揄を真剣に捉えてしまったらしい。

「いや、悪いのは僕だ。僕がジュースを買おうと考えてこのショッピングモールに来なければ君もついてきて巻き込むことにはならなかった。第一貧乏神なんて気持ちの持ちようさ」

「い、言っとくけど私は貧乏神がサッカーチーム作れるレベルでツイてないと自覚しているわよ」

「まあ不幸な女の子は感受性豊かだから好みの一つだけど」

「こ、好み……」

 照突拍子もない話を聞かされて照れのない様子で言葉に詰まるアルカディア。

「ま、まじめな話を再開しましょう。力を持っている私たちは武装した卑劣な輩から無辜の市民を助け出す。そのためにまずは他の対抗勢力に接触して伏兵の存在を伝えなければならないわ」

「そのためにここから出て一階から二階へと上がり彼らと合流するのを、か」


 テロリストの巡回は探査魔術を使えば良いとして問題は合流方法だ。

 前述の通り義勇軍たちは完璧な―結界の術者が実戦経験を有している人材なのかもしれない―迷彩を誇っている。見つけ出すには探知魔術をさらに高度化する必要があるが、それには量子(リソース)を多く消費しなければならない。

だがあくまでアルカディアが規格外なのは『外付けの自立魔術駆動構築式生成能力』によるものだ。量子量の増幅及び質の向上はその付属効果に過ぎない。

 彼女の固有能力(オリジン)で使用できる異能にはあらかじめセッティングが必要であり、準備なしには能力を変えられないのだ。

 そして固有法則(オリジン)の量子を流用して共通法則(レディメイド)を使うのは不可能だ。同時使用にはそれぞれの量子同士で使わねばならない。

 その話を聞いていた優世は自分の武器に宿る固有法則(オリジン)を使用すべきか迷っていたが、アルカディアが発した言葉によって迷いは焦燥に塗りつぶされた。

 

「まっずい…… あいつ達モニター室のセキュリティを解除しそう」

「確認されたら僕たちが脅されるな。あとどれくらいで解除される?」

 テロリストたちは無力化から逃れた人物たちの把握のためにモニター室をすでに制圧している。だがこういう時のためのセキュリティのために店員にも解除方法が知らせれていない暗号化がモニター室の監視カメラ映像にはこの時代には掛けられている。

 故に店員を引っ張らずにテロリストたちだけで解除を行っていたのだが、思っていたより早い。どうやら高度なハッキングツールを使用しているようだ。


「仕方ないわ、強襲して無力化しましょう。まだそれくらいの時間ならぎりぎり間に合う――!?」

 アルカディアが絶句する。青ざめるというよりただ単純に驚愕している。探知魔術から何かしら衝撃的な光景を感知したようだ。

「どうした?」

「それが……」

 怪奇現象を見たような訳が分からないといった様子でアルカディアが呟く。

 

「床に……飲み込まれたように消えたのよ」


「ベータ4応答せよ。ベータ4!!」

「こちらベータ4、確認のため連絡が遅くなった。店内に他の人物は存在しない。これからここに居座り店外を監視する」

 

 テロリストを無力化しモニター室を占拠した者はベータ4と呼ばれる人間の声色で嘘の情報を流す。

 無線の向こうにいる人物はやや訝しみながらも了解の言葉を告げて切り上げた。

「これでしばらくは時間が稼げるか……」

 面倒くさそうに呟く黒髪に紫の瞳の少年。


 彼の足元の影はモニター室の床全てに広がり、生命の如く蠢いていた。


少年の権能は、果たして『影』なのか――

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