序章--星を見る少年少女
平行世界が一つに結実し、様々な異能が交差し新たに産み出し続ける一つにして多元なる世界があった。
--星を見る子供達がいた。皆同じく今年12になった位の年頃だ。表情も同じく共通していた。絶望を宿す中で光を見出だしている者の瞳だ。
気高き表情に緑と紫を両立させた瞳持つ、瞳の色と同じ光沢を放つ白く長い髪の少女が見上げていた。
ブルネットの猫毛に、日系で幼さを残しながらも芯のある表情を顔に宿した碧眼の少年が見上げていた。
鋭い紫の目付きとその下に隈があり、それでも男性的魅力に溢れる美しさを感じさせる長き濡烏の髪の少年が見上げていた。
少女は凡才であるがゆえに愛と承認を得られず、劣等感と誇りに苛まれるが故に存在証明を試行する名家の落ちこぼれの末子だった。
少年は母親と慎ましく過ごしていた所を才に目をつけた父親に引き離され、母との死別の時に最期に側に寄り添う事が出来なかった。
少年は狂気の果てに産み出され、人としての尊さや優しさを味わい理解した直後に破滅が訪れて、孤独を抱えたまま一人生き残った。
アレキサンドライトの少女の名はアルカディア・アルカンシエル・アレクサンドリア。
エメラルドの少年の名は優世・O・ユースティア。
アメジストの少年の名は千里玖路。
三人とも、現実の理不尽と不条理により傷つけられた少年少女だった。
けれど、それでも三人は星を見る。
最後まで認められることなく、家から自給できるだけの資金を振り込む口座だけを持たされて追放されながらも。
母親と別れの言葉を告げることも出来ず、母のブローチを形見として手にすることすら出来ずとも。
もういない大切な人のハンカチを握りしめて、降っていた雨に全身を鮮血と共に濡らしながらも。
星を見て決意した。
「特別」として自分の存在を世界に魅せてみると。
「騎士」として母が願った在り方を遵守すると。
「人間」としてただあるがまま生きて行くと。
この瞬間、運命は彼ら三人を最初に選んだ。
三年後、三人はそれぞれの道が交差し合い、その果てに己の生きる理由、その輝きの顕現を手にする。
それはあらゆる世界の異能が現実に認知される中で降臨する最後のおとぎ話。神話の神々ですら既存である限りその輝きを消すことは不可能。
それは魂が作り出す「黄金」に他ならない。
刮目せよ、黄金錬成は始まった。最初の三人を切欠として新たなる神話が駆動する。
これは、その序章の物語である。
伝説の始まり。その365×3+20の昨日。