外伝 0.5話
MRデバイス、仮想と現実をつなぐそれは私たちの生活の場に変化を与えました。
何もない空き地に仮想のイルミネーションを映し出せば豪華なステージに変わり、
人波にまぎれ目を引くこともない服が全ての者を引き付ける華やかな衣装に変わり、
世界中の人間がネットを通しそのステージへと引き寄せられる。
このMRデバイスを使ったアイドルライブが行われていることは皆さんも知っていることだろう。
今回、記事にさせてもらうのはそういった企業レベルのものではなく、
近年普及しはじめている個人でのMRデバイスを使った一般の人が行う歌や踊りを披露するストリートライブの事だ。
そのライブをする彼らの事を人は生放送専門サイトの「ショウウィズ」によく放送を行うことからウィザーと呼ばれている。
現在のウィザーの人口はおよそ数千、その視聴者数は数百万に上り、今も増加し続けている。
そんな折、ショウウィズの運営がある企画を出した。ウィザーの中で誰か一番か(男女別)を決める大会を開催するというものだ。
これは個人でライブを披露するウィザーたちが大々的に競い合う記念すべき第一回目の大会だ。
大会の日程や詳細についてはまだ未発表であるため今回の記事では触れないが、
今大会で参加を表明している注目すべき女性ウィザー、彼女たちに大会への意気込みを聞いてきた。
まず、初めに紹介するのはショウウィズ公式のウィザーにして女性ウィザーの第一人者、最大数のファン数を抱えるユニット「リアルマジック」だ。
「リアルマジック」は不知火 道華さんと枡富 朔さんの二人のウィザーが歌うユニットだ。
楽しく踊り、愛らしい笑顔を見せて私たちに幸せを与えてくれる彼女らに早速質問をしてみた。
記者:今日は取材に応じてくれてありがとうございます。早速質問させて頂きます。
まずショウウィズ公式のウィザーとはどういう事か教えてください。今回の記事ではウィザーに詳しくない方にも読まれる記事になりますので。
シラヌイ:はい。私たち二人は元々アイドル養成所でアイドルを目指していた候補生でした。
そんな時、ショウウィズの方からショウウィズ発展の為にウィザーの第一人者として活躍してほしいとの依頼があり、今こうしてウィザーを務めています。
記者:なるほど。お二人の歌唱力の高さやダンスのテクニックはアイドル養成所で培ったものなんですね?
シラヌイ;そうなりますね。
記者:ちなみに現在は運営公式ウィザーとして活躍していますが、今後アイドルになる事は考えてますか?
マストミ:ん~もう半分アイドルみたいなものだとは思うんですけどねw
記者:確かにそうですねw
シラヌイ:今はウィザーとして活動していますが、今後アイドルになる事も諦めてません。ただ、今いるファンの皆さんを悲しませるような事にならないようにしていきたいですね。
マストミ:アイドルになってもウィザーを続けていくつもりですよ、二人とも。
記者:アイドルとウィザー、どっちも同じくらい大切なものであると?
シラヌイ、マストミ:はい。
記者:分かりました。続いての質問ですが、お二人はウィザーとして互いの事をどう思いますか?
マストミ:みっちゃん(シラヌイさんのあだ名)はしっかりした頼れる仲間です。
シラヌイ:サクは明るくて私に元気を分けてくれる大切なウィザーです。
記者:お二人は互いに信頼しあったペアなんですね。ちなみにここが嫌だな、といった所はありますか?
シラヌイ:嫌だな、というかライブ中に練習とは違う振り(ダンスの動き、振り付けの事)を入れる事があるので先に言ってほしいですね。
マストミ:だっていつも同じじゃ視聴者の人も飽きちゃうでしょ。
シラヌイ:私には事前に話してくれてもいいじゃない。
マストミ:んーその場で思いつくからなぁ。それに言わなくても合わせてくれるでしょ? 私、みっちゃんのそういう所好きだよ。
記者:ライブ中に振りを変えるなんてウィザーならではですね。それにしてもたまにお二人のライブを見させてもらっていつもと違うフリだなとは思いましたが、まさかアドリブだったなんて気づきませんでしたよ。
マストミ:そう! みっちゃんはすごくダンスが上手なんですよ。
シラヌイ:一緒に踊ってるせいですかね。「あ、振り変えるつもりだ」って思う時が分かるんですよ。
記者:それだけお二人の絆は強いという事ですね。
記者:それでは最後に今度行われる大会についての意気込みをお願いします。
シラヌイ:誰にも負けません!
マストミ;私たちがナンバーワン!
以上がウィザーユニット「リアルマジック」への取材内容でした。
ショウウィズ公式による曲とフリ、そして彼女達のハイレベルな歌と踊り、間違いなく今大会の優勝候補でしょう。
続いて私が注目したのはウィザーユニット「ビーグロウ」、デビュー一か月の最近登場したばかりの新進気鋭の二人組だ。
白藤院光那さんと高崎穂希さん、どちらも中学校に通う一年生と様々な人間が放送するウィザーの中で若い二人だ。
白藤院という名前に聞き覚えがある人もいるかもしれない。彼女は某有名企業の社長令嬢だ。
自宅に専用のダンスルームを用意し、一にも二にも練習、彼女たちのストイックさが経験の浅さをカバーしてるように感じられた。
そんな彼女たちからなんとか練習の合間に取材を行う事ができた。
ハクトウイン:手短にお願いします。
記者:分かりました、では早速、私が一番疑問に思ってる事をぶつけます。他の普通のウィザーはフリーの曲や許可を得た曲を歌う事が多いですが、
あなたたちはオリジナル曲が豊富です。一体誰が作曲し、フリを決めているのですか?
ハクトウイン:作曲と歌詞はタカサキさんがコレオグラファー(振りを作る人、振付師)はワタクシが担当しております。
記者:タカサキさん一人で作曲・・ギター、ベースにドラム、その他の楽器についてもですか?
タカサキ:・・
ハクトウイン:メジャーな楽器でしたらタカサキさんは全て演奏できますわ。
記者:それはすごい。ちなみにお二人の関係、結成の理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?
ハクトウイン:タカサキさんとは同じ学校のクラスメートですわ。タカサキとは昔から一緒でしたので結成した理由というのは特にありませんわ。
記者:そうでしたか、では続いて質問しますがデビューのきっかけはなんですか?
ハクトウイン:他のウィザーの方のライブを見て、いたく感動しまして。
記者:それで自分も始めたと、ところでプロの作曲家やトレーナーの方を雇おうと思ったことはありませんか? ハクトウインさんならそれも可能だと思いますが、
ハクトウイン:申し訳ありませんが、そのご質問への回答は控えさせていただきますわ。
記者:分かりました。それでは最後に大会への意気込みをお願いします。
ハクトウイン:やるからにはトップを目指します。そしてすべての観客を振り向かせますわ。
記者:タカサキさんからもお願いします。
タカサキ:頑張ります
ウィザーユニット「ビーグロウ」への取材でした。
取材を終えた後すぐさまに練習を再開した彼女たち。その成長度合いは未知数、今大会のダークホースとなるかもしれません。
続いて紹介するのはウィザーの御園那 朱里さん、
ギター演奏とゴーという掛け声でステージをあたためるのが特徴の、熱狂的なファンが多いウィザーだ。
記者:取材に応じて頂いてありがとうございます。今日はよろしくお願いします。
ミソナ:ゴー! お願いします。
記者:早速「ゴー」がでましたね。
ミソナ:あ、記者さん。知ってるなら一緒にやらないと駄目ですよ。行きますよ、ゴー!
記者:ゴ、ゴー・・。
ミソナ:記者さんありがとー!!
記者:その掛け声好きですね、ミソナさんは。
ミソナ:はい。叫ぶと元気が出ますから、みんなにも叫んでもらって元気になってもらいたいんです。
記者:定番の掛け声を作ってあると皆叫びやすいですね。それで「ゴー」ですか。
ミソナ:そうです。記者さんも疲れたら私の放送見てくださいね。
記者:ミソナさんに熱狂的なファンがつくのもわかる気がします。
それでは最後に大会への意気込みを聞かせてください。
ミソナ:皆を元気にするのでぜひ見に来てください! ゴー!
以上がウィザー、ミソナアカリさんへの取材でした。
彼女の「ゴー」がどこまで行けるか、気になるところです。
それでは最後に紹介するウィザーは掛賀 満さん、
予定外の生放送を唐突に行うゲリラライブをよく行う華麗な女性ウィザーです。
記者:取材に応じて頂いてありがとうございます。
カケガ:よろしくお願いします。
記者:それでは質問させて頂きますね。
カケガ:どうぞ。
記者:カケガさんはよくゲリラライブを行う事がありますが、どういった理由があるのでしょうか? ファンの方が見逃す事などがあると思うのですが。
カケガ:私はよく山や海など自然を見に出かけるのですが、その時特別綺麗だった時、皆に見せたくて突発的にライブを行ってるんです。
揺らぎのない湖畔に浮かぶ月だったり、波一つない夕焼けの海とかその時の風景はその時のものでしかないので予定を立てるのは難しいですね。
記者:綺麗な景色が見えた時、放送を行うわけですね。
カケガ:そうです。
記者:そんな時でも一番綺麗なのはカケガさんかと思いますよ。
カケガ:ふふ、ありがとうございます。
大会の時はきっと室内なので綺麗な風景はないのでしょうね。
記者:そうかもしれませんが、まだ詳細は不明ですしどうなるか分かりませんよ。
カケガ:そうですね。期待しながら待つことにします。
記者:それでは最後に大会の意気込み、聞かせてください。
カケガ:精一杯頑張りますので見に来てください。
以上がウィザー、カケガミチルさんへの取材でした。
様々な個性を持ったウィザーが出るショウウィズの大会、どんなウィザーに出会って誰が一番になるのか開催する日が楽しみです。
記者「後は一休みしてから仕上げるか」
事務所で記事を作成していた記者は伸びをする。
記者「綺麗な景色か・・」
彼は昼休憩を兼ねて事務所から出て少し遠くまで散歩に出た。
??「公園歩いて♪」
記者「ん?」
適当にうろついていた記者の耳に音程の取れてない歌声が聞こえてくる。
彼は歌が聞こえた方へ歩くと、公園の中で踊る少女の姿があり、どうやら彼女は練習してるようだった。
少女「濡れてもぉお!」
記者(あ、転んだ)
バランスを崩し、頭から地面に激突した少女は土がついた顔を上げると
少女「笑顔♪」
にこやかに笑った。
記者「大丈夫かい?」
彼は転んだ少女に近づいて声をかける。
少女「大丈夫です!」
少女ははねるように立ち上がると両手を上げて記者に顔を見せる。
少女「ほら大丈夫」
土埃がついた顔と服で笑顔を見せる彼女に記者は思わず笑う。
自分の服に土がついてることに気づいた少女はポンポンとついた土を払っていく。
記者「さっき歌ってたよね?」
少女「はい、練習してるんです」
そういいながら服についた土を払い落とし終えた。
記者「君もウィザーなのかい?」
少女「ウィザーって何ですか?」
少女は初めて聞いたようで土のついた顔を傾ける。
記者「土、まだ顔にもついてるよ」
少女「え!? 本当に?!」
少女は公園にある水飲み場の方へかけてゆくとそこの水で顔を洗った。
一通り洗い終えた彼女はポケットからハンカチを取り出して顔についた水を拭きとった。
少女「もうついてないですよね?」
記者「ああ、大丈夫だよ・・ところで歌は誰かに教えてもらってるの?」
少女「千津さんから教えてもらいました」
記者「チヅ?」
少女「歌が上手い人で、私もああなりたいなって、それで練習してるんです」
記者「チヅ・・、ひょっとして蓮渡千津さんかな」
少女「あ! ひょっとしてお知り合いですか?」
記者「いや、彼女はそれなりに有名なウィザーだからこっちが知ってるだけだよ」
そう言うと記者は公園に備えられたベンチに座る。
記者「見たことないショウウィズ? 彼女はそこで歌を披露しているんだよ」
少女「いえ、見たことないです。TVでやってるんですか?」
記者「いやインターネットサイトだよ」
記者はポケットから自分のスマホを取り出すとショウウィズのサイトを開いて少女に見せた。
記者「ほらハストさんのページ、今日の夜ライブやるって」
少女「本当だ! チヅさんこんな事してたんだ」
記者「君もやってみたらショウウィズ」
少女「え? 私なんてまだ下手だし・・」
記者「じゃあ上手くなったらやればいいよ。別にお金がかかる事じゃないし、いつでもやめられるからね」
少女「はあ・・」
記者「そうだ、君の名前教えてよ。君が始めたらすぐ分かるようにさ」
少女「えっと・・まだやると決めたわけじゃないし・・」
記者「チヅさんみたいになりたいんでしょ? きっと始めるよ」
少女「うーん。やっぱりいいです」
記者「え? 何で?」
少女「だってやればわかるじゃないですか名前」
記者「やるってショウウィズ?」
少女「はい」
と笑顔で答える少女に記者はつられるように微笑んだ。
記者「それじゃもう行くよ」
少女「はい、さようなら」
少女と別れた記者は一度少女のいた公園を振り向いて呟いた。
記者「ま、それくらい有名になってもらわないと記事にならない、か・・」
俺A「リアルマジック! 『嫌だな、といった所はありますか?』って聞かれて何馬鹿正直に答えてるんだよ! ウィザー公式ユニットだろ! アイドル志望だろ!」
俺B「だからアイドルになれないんじゃないですかね」
俺A「分かってて書いたお前の性根のせいでリアルマジック可哀そうすぎる!」
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歌詞 0時の魔法 リアルマジック曲
1
悲しみにグッバイ
楽しみにセイハロー
かかるよ0時の魔法
ベッドの上でグッナイ
早起きした朝は
太陽いっぱい浴びるの
サクサクシリアルに
甘いミルクかけよう
行ってきますと飛び出して
皆におはよう伝えたい
ポカポカ日和の朝に
笑顔の輪を広げよう
今日は良い日ね
全て上手くいく
キレイにハマる
一日のピース
友達と過ごした時間
記憶に残そう
家族にお休み言いながら
もうちょっと起きていたい
このまま今日という日が
止まってしまえばいいのに
2
楽しみがグッバイ
悲しみがセイハロー
来ないで0時の魔法
ベッドの上でアイウィッシュ
寝坊した朝は
急いで支度するの
ペコペコお腹に
軽いパン入れるの
行ってきますと飛び出して
なんとかどうにか間に合いたい
ドタバタかけだす朝は
遅刻しないよう祈ろう
今日はダメな日ね
上手くいかないよ
どうもハマれない
凸凹のピース
友達と喧嘩した時間
消してしまいたい
心にごめんねと呟きながら
明日ちゃんと仲直りしたい
このまま次に会える日が
早く来てしまえばいいのに
悲しみにグッバイ
楽しみにセイハロー
かかるよ0時の魔法
ベットの上でグッナイ
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歌詞 プラズマ ビーグロウ曲
1
灰に包まれた世界
無味に生きる私
乾いていくは心
血も灰になって
探し求めてる
熱せられた渇きを
熱く癒せ
心燃やす
その輝きはまさに
プラズマ
光になって
照らす世界を
鮮やかに変える
緑茂る
海は青く
血は赤く
花は何色
2
虹がかかる世界
奏で歌う私
ビート刻むは心
血も踊りだす
世界彩る
あたたかな居場所
夢落ちて
心照らす
空から注ぐのは
Sunlight
光注ぐ
輝く私を
鮮やかに変える
大地揺れて
空は青く
頬は赤く
私何色
探し求めてる
熱せられた渇きを
熱く癒せ
心燃やす
その輝きはまさに
プラズマ
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歌詞 let go of fear ミソナアカリ曲
1
鳥かごで震える私
無数の飢えた眼差し
押し寄せる波のような手が
鳥かごを揺らす 歪ませる
四方から聞こえる軋む音
ここから逃げ出さなくちゃ
囚われてしまう事
おしまいだから
空は飛べない
翼は折れてしまった
走るしかない
全力で
GO
闇をかわし
当てもなく走る
間ぬうように
導かれてる
呼応する叫び
笑う 泣いてる 分からない
体の内から叫び続ける
GO
2
森の中でさまよう私
無数のギラめく眼差し
吹き荒ぶ風のような声が
木の葉を揺らす ざわめかす
後ろから近づく恐怖の音
ここで立ち向かわなくちゃ
逃げ去ってしまう事
できないだから
助けは来ない
喉は枯れてしまった
走るしかない
全力で
GO
闇に向けて
当てもなく進む
立ち向かうように
導いている
呼応する心
勇気 希望 分からない
体の内から叫び続ける
GO
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歌詞 日出ずれば色鮮やかに昼迎え暮れに佇む月のまにまに カケガミチル曲
桜舞う
花の一つに
染められて
桃花染める
私の心
光差す
ニチリンソウの
輝きが
示す先には
あなたの笑顔
見初められ
所作にあらわる
たおやかさ
今の姿は
ヤマトナデシコ
目をそらす
うつむく姿
シクラメン
顔上げる時が
花開く時
始まった
あなたと紡ぐ
赤い糸
夢にうつるは
素敵なドレス
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通常の歌詞の10倍時間がかかったので1番のみ、こんなん歌じゃないよ