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もし、明日が来ないなら  作者: 淺田亮介
2/5

~第二話 汗だくの登校~

ウイルスを使って三ヶ月が経ち、暑い日が続いていた。



  2話


夏の自転車通学は地獄だなと思いながら、誰もいない家に向かって「行ってきます」と言い鍵を閉めて、大河はエレベータに向かった。

大河が五階までエレベータが上がって来るまで待ていると、学が「いってくりゅー」と大きな声を出して家を出てきた。恥ずかしくなのかと大河は思った。学は大河に気づくと「おはよう」と言った。

大河も「おはよう」と言った。

二人がエレベータに乗ってドアが閉まる時に

「待ってー」

と、家から出てきた佐倉が叫びながら、エレベータにもう突進してきた。学はニヤニヤしながら【閉】のボタンを連打した。ウォォォォと叫ぶ佐倉の努力はむなしく、佐倉がエレベータの前に着いた時にエレベータは一階に向かって降りようとした。

「おい、待ちやがれ。ここまで来たんだ、空手部次期部長として、この戦いは負ける訳にはいかない」

おい、何の戦いだよと大河は呆れている隣で、学はお腹を抱えながら笑っている。

「おい大河見たかよ。咲のヤツめっちゃ必死だったな」

笑いながら大河に話しかけていると一階に着いた。ドアが開き降りようとしたら、学が「忘れるところだった」と言って閉まりかけたエレベータに入りドアを開けたまま何かして降りて来た。何してたんだよ。と大河が聞くと、

「二階から四階までのボタンを押してきた。これで咲は降りるのに時間がかかるぜ」

と、歩きながら言った。クズだな、と自転車置き場に着いて大河が言うと学が続ける

「咲は最近モテすぎなんだよ。頭を冷やすように今日は遅刻してもらおう」

ガチャという音が後ろから聞こえた。後ろには非常階段がある。

「おい、誰が遅刻するって?」

と、聞き慣れた声が聞こえた。まさか、と思い、学は振り向いた。その一瞬で声の主は距離を詰めた。次の瞬間佐倉の正拳突きが学の顔面にクリーンヒットした。グハァと学は言いながら倒れてしまった。

大河は学に近寄り、声をかけた。

「全く、おーい学起きているか。ダメだ気絶している。どうすんの佐倉」

佐倉はまだ怒っていた。

「私は、もう学校に行く。大河そのバカを何とかしとって」

と言って佐倉は自転車に乗って、学校に行ってしまった。

何とかってどうすんだと大河は思いつつ困っていた。起こすべきか、家に運んでやるか、どうしようと迷っていたが、結局起こすことにした。大河はどうやって起こそうかと悩んだ。あ、と言い一つだけいい案を思いついた。大河は倒れた学の耳元で囁いた。

「お~い学君、今起きたら佐倉がお詫びに良い事してくれるって」

ムクッと学は起き上がり、いきなりズボンを脱ぎ始めた。

「良い事、良い事、さあ咲始めようぜ。って咲は?」

「悪い、学、お前の本能を利用した」

「え?どういう意味、おーい大河良い事ってのは嘘なのか?」

と半泣き状態で大河の肩を握り、ユラユラと揺らす。

「仕方ないだろ、急がないと俺らも遅刻しそうだったから。」

学はそうだよな、遅刻してしまうと言い自転車に乗った。大河も自転車に乗り、二人は学校に向かって自転車のペダルを漕いだ。すると、すぐに汗が大量に吹き出てくる。これだから夏は嫌いだ、と大河が呟くと学が嬉しそうに大河の方を見て言った。

「何言ってんだよ。夏はいいだろ、制服が汗でいい感じに濡れるのがいいだろ。それで下着が透けて見えそうになるんだぜ、最高だろ。それに海やプールにも行ける」

「学、将来捕まりそうだな」

とガチで引いた目で大河が言うと冗談だよ、と言って学は笑った。

前の信号が赤になり二人が横断歩道の前で待っていた。

暑いな~、と大河が呟いた。するとと学が大河に聞いた。

「今年の夏休みはどうすんの?おじいちゃんの家に行くのか?」

大河は下を向いて答える。

「去年は帰ってないから、今年は少しだけ帰るよ。なんか話があるって言われたからな。まあ多分、親の話だと思う」

大河の親は、大河が幼稚園の年中の遠足から帰ると、両親はいなくなっていた。その後大河は父方の祖父に引き取られた。その時に今のマンションに引っ越した。今は祖母が二年前に他界し、その時に祖父は実家の愛媛の老人ホームに入った。仕送りもしてくれている。大河は恩返しがしたいと思っていたので、今年は会いに行きたいのだ。

「そっか~、オレはどうしよっかなー」

と言うと信号が青になったので二人は自転車を漕ぎ始めた。

「まあでも、お盆に帰るからその他の日は遊べるからな」

と大河は笑顔で言った。

「久しぶりに笑う所を見た気がするよ。昔を思い出すよ」

「そうか?」

と大河は聞いた。

「最近は全く笑っていなっかぞ」

と少し沈んだ声で学は答えた。

「確かに、最近は笑ってなかった。まあ元気出せよ。お前らしくないぞ」

と大河は笑顔を見せた。

あぁそうだな、と言って更に続ける

「なら海に行こうぜ。咲も呼んで」

「あぁ、良いぜ」

と大河は言った。

汗だくの二人は学校の自転車置き場に入った。






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