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エモーション データ  作者: 微風シオン
シャーレット編:楽と怒りの章
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第6話 脱出と投獄

 

 世間の目はとどまるところを知らない。

ユートピアを排除しようと、政府の奴らは国中を血眼になって探している。

正直、潜んでいる場所から動けない。

クロウとキャットは絶体絶命だった。


クロウ達を匿っていた建物は崇拝者の一人である『ジョン』さんの自宅だった。

――ここもそう長居できない。そう感じたクロウは、建物からの脱出をキャットと共に計画した。

キャットから聞くと、彼を運んだのもどうやらジョンさんだったらしく

偶然居合わせたところを助けてくれて、車で運んだという。


眠っていた部屋から出ると、そこは二階の廊下。

廊下の窓から外を覗くと既に警察が家全体を包囲していた。


もう既に気づかれていたのだ。

無理もない、あれだけ目撃者がいた中で車のナンバーを見てないやつなんていない方がおかしい。

だが、ここでおとなしく白旗を上げるなんて事をしない往生際が悪いテロリストが彼らだ。


「――ユートピア、大人しく投降しなさーい」


警察はありきたりな台詞を吐く。

まるで、犯人を哀れな目で見るかのように…

『可哀想な奴ら』そう思っているに違いない。


だが、法律に縛られて取締役の犬と化している警察の方が遥かに可哀想だ。

それにすら、気づけないこいつらはプライドもクソもない。

それがクロウの抱く警察という生き物の価値観だった。


――そんな惨めな奴らに捕まるわけにはいかないんだ!


 その言葉とその思いを胸に家から飛び出す!

そこには警察が、こんにちはとお出迎え。

無我夢中で逃げる中、数の勝負で勝てるわけがなくクロウは捕まった。

キャットも彼を助ける暇がなく、逃げるので精一杯だ。


「止まれ!女テロリスト!こいつがどうなってもいいのか?」


警察側は相変わらず汚い手ばかり使ってくる。

こうなってくると、『犯罪者はどっちだよ』と突っ込みたくもなるものだ。


そして、あえなくキャットも捕まった。


「全く、八年もの間どこに居たんだこいつらは」


そんな会話を警察がしている中、クロウがふと向こう側の陰を見るとそこにはジョンさんの姿が。

車がそばにあって、これから行く合図を送っている。突っ込む気満々だ……

そんな度胸があるジョンさんにとりあえず、苦笑いで答えながらエンジンかかって突っ込んで来るまで時間稼ぎ。


「あー腹減ったなぁ、そういや警察行ったらかつ丼食えるんでしょ?」


「何言ってやがる、お前らの容疑は確定。これから収容所にぶち込まれて臭い飯を食うんだ」


笑いながらのマジレスに感謝するよ、おまわりさん。


「ちょっと、飯テロやめてくれない?あとその立場を利用したネタ寒いわよ」


テロリストだけに飯テロとかそんなしょうもないダジャレしたいわけじゃねーよ、と思っている間に時間稼ぎが完了してジョンさんが猛スピードで特攻。


「クロウ、キャットさーん助けに来ましたよー」


次の瞬間、車は一刀両断された――。


 車内は一瞬で真っ赤に染まり、返り血はこちら側にも飛んでくる。

クロウ達はその返り血を頭から浴び、ジョンさんの車を本人もろとも斬ったであろう少女も大量の血をシャワーのように浴びている。

その目は禍々しく、明らかにこれまで何人ものを手にかけてきたであろう異様な視線を放っていた。


「妙な真似はしないことね……さもないと、彼みたいに立派なひき肉になっちゃうわよ?」


横にいた警察官にタックルして手錠を外し、少女に向かって行ったのはキャットだ。

まるで時代劇にでも出てきそうな刀を腰にぶら下げている少女相手に勝てるわけがない。


ナイフを二つ出して戦闘体制に入るキャットの攻撃を少女は軽々と避け、鞘でキャットの腹を一突き。

意識を失ったキャットを片手で抱えると少女は警察達に告げる。


碧波アオナミ様に二人を捕獲したとの連絡を」


警察達は敬礼で答える。

一方、クロウは一つ気になっていることがあった。

気のせいとは思いつつも、少女に問いかける。


「お前、俺とどこかで会ったことないか?」


「あんたなんか知らないよ。テロリストさん」


そう言うと、彼らを警察に預けて彼女はその場を去る。

普通に考えればここであったのが初対面なはずなのだが、

クロウは妙な違和感が自分の中から消えない。



あの少女と俺は絶対にどこかで会っている――。



結局、少女の謎は解けぬままクロウ達は『ココル収容所』に投獄された。


収容所へ直接の投獄、警察へ連行されずに直接だから無論カツ丼は食っていない。

それどころか、どの場所に位置しているのかさえ分からない。

周りは勿論、警備兵だらけで脱獄なんて考えようものなら絶対に無理な話だ。

本当にやるなら正面玄関から素直に出て行くしかないだろう。


「男はこっち、女はこっちだ」


入り口の時点で、キャットとの連絡手段も絶たれる。

神が言っているのだろうか?素直にこの牢獄の中で仲良く暮らすのが、運命だと……

何はともあれここは安全であり、ここからどこへ向かうかなども脱獄成功前提でクロウは既に考えていた。

すると、脱獄を計画するクロウに一人の囚人が声をかけてくる。


「やめときな新入り。あまりここの収容所を舐めないほうがいい」


いかにもなんかやった感じの男だ。囚人服はボロボロで、何年も収容されている事が分かる。

男はこの収容所の署長について語り出した。


「ここには取締役の一人が居る。妙な真似をすれば、ハンマーで頭蓋をかち割られるぞ」


聞く限り、いかにも物騒な署長だ。

収容所内は無数の監視カメラ、外とあまり変わらないじゃないかと思った。

――だが、外と違うのは銃口が付いている。すなわち、脱獄しようものなら即座に蜂の巣にされるという事。


しかも、この収容所には明日様子を見に来る取締役までいるらしい。

考えただけでも、今脱獄するのは自殺行為に等しい。


「お前もなんかやったからここにいるんだろ?仲良くやろうぜ」


「おっと、自己紹介はするぜ。俺はクリスってんだ。囚人番号は記念すべき一番、笑いたきゃ笑ってくれ」


「俺はアルビーだ。内部の事なら二人より詳しいから何でも聞いてくれ。ちなみに囚人番号は二十五だ」


「俺、ダロン。多分この中で一番の力持ち。囚人番号は三十七番、ヨロシク」


この檻に収容されている囚人はクロウを含めて四人。

つまり、三人が実際に罪を犯して収容されている犯罪者。

メンバーは服役している期間が一番長いクリス、この収容所について詳しいと自称するアルビ―、巨体の大男ダロンの三人だ。

クロウは果たしてうまくやっていけるのか不安でいっぱいだ。

でもとりあえず、囚人番号とコードネームをみんなに名乗った。


そして、その日の夜にクロウは寝付けなかった。

アルビ―とダロンの二人は熟睡している中、クリスは布団に入ったまま俺に声をかけてくる。


「そういや、兄ちゃん。クロウって名前どっかで聞いたことある名だな」


「もしかして、ユートピアのクロウって兄ちゃんの事なのか?」


「ご名答だよ、クリス。ユートピアがこの様じゃ取締役になんて立ち向かえないだろ?」


「だからさっき、脱獄計画練ってたのか。気持ちは分かるが、明日だけは止めておいた方がいい。俺も感情規制法には納得してねえんだ。だからここにいる」


クリスも感情規制法を破ってここに居た。自分と気持ちは同じだったんだとクロウは少し安心する……

そして、クリスは奴らに関する情報をユートピアであるクロウに漏らした。


「クリスも感情規制法を破ってここにいたのか。囚人番号一番って何年前からここに居たんだよ」


「八年前に法律が可決されてすぐだ。あと正確には法律を破ってここにいるんじゃねぇ、俺は取締役の正体を突き止めちまったせいでここにいるんだよ」


クリスは取締役の正体を突き止めている……

そのせいでここに投獄された人物なんだと、本人は言う。


「多分、奴らの正体を知っている外部の人間は俺を除くと組織から離反したあの女だけだな」


「離反したあの女?」


「アイカワ メグミ。今は生きているのか知らねえが、あの組織でハッキングに長けてたって話だ。さらにはあの忌々しい人工知能アライの開発者なんだとよ」


離反した理由はクリスでも分からず、不明らしい。ならせめて、クロウは奴らの正体を知りたかった。

引き出せる情報は全部聞き出したい。そう思った……

だが、気づけば時間は深夜を回っていた。


「悪りいな、クロウ。今日はもう遅いから話の続きは明日でいいか?」


「あ……ああ。ありがとな、こんな時間まで」


決意を新たに布団に潜る、クリスは既に眠っていた。

気が付くと、徐々に眠くなってくるのが分かる。



――気が付くと、睡魔に押しつぶされてクロウは眠っていた。

















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