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エモーション データ  作者: 微風シオン
シャーレット編:楽と怒りの章
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第4話 楽な喫茶店

 キャットの失踪から六日目――。

クロウはキャメロンから渡された情報を頼りに、ある街にやってきていた。

そこはユートピアの二人が潜んでいる街から北西に位置する街、「ライムシティ」

この街にキャットがいるんだろうか?

「シャーレット」はそんなに大きい国じゃない

六日も街を徘徊してたら政府に見つかるだろうし、身を潜めていても一般人に通報される。


 いくらアライを欺けても、この前みたいにしくじったらヤバイことになる。

こないだはキャメロンが助けてくれたから良かったものの、あの人みたいな優しい人が居るとは限らない。こないだの騒動で政府に認知されたから、ここに長居もできない。


考えながらクロウはキャメロンからの情報が真実か確かめる必要があった。

それは「感情規制取締役」の1人がこの街に潜んでいるという情報だ。


クロウは正体を隠すためにサングラスと髭を付けて変装し、早速街の人たちへ聞き込みを開始した。


「――感情規制取締役の人ならこの先の喫茶店に身を寄せているよ」


あっさり、情報が掴めた。

こんな簡単に情報が掴めていいのだろうか?

クロウは半信半疑でその喫茶店に行くことにした。


 歩いて五分ぐらいだろうか、そんなに時間はかからなかった。

喫茶店の入り口に入るとカランカランという音が鳴り響き、店員さんの決め台詞である「いらっしゃいませ」を言われる。

今の所、クロウだって事はバレていない

そして、ミルクティーを注文して席を探すフリをしながら取締役を探した。

見つけるには「チョーカー」付けてないやつを探せばいい……

……と思ったが、そんなに甘くはなかった。


当たり前だ。

とりあえず、席に座ってお茶でも飲もうと思ったクロウだが、

今日は日曜日だ。当然ながら人が多い

奥の窓際の席が空いたので座ろうとする。

だが、若い男性が新聞を読みながら座っていた。

クロウよりちょっと年上かもしれない二十歳ほどの男だ。

席は他に空いてなかったので、座ってもいいかと聞くと了解してくれた。


ミルクティーを飲みながら新聞の表の面に目を通すと、クロウがこないだ感情を表に出したと記事に大きく書いてあった。『まいったな』そう心で呟きながら、大きく記載されるほどの有名人になっている事を自覚する。


そんな有名人と貴重な休日、一緒にティータイムしているのだこの人は。

嫌な予感がしつつも、このまま優雅にお茶を飲んでても始まらないので

本題である取締役の事を男から何か聞き出せないか行動に移す。

でも、その前に空気を読んで……


「この店ってよく来るんですか?」


「――ええ、私はよく来ますよ」


男は新聞を自分の膝いっぱいに広げ、クロウの質問に答えながら右手でコーヒーを飲む。

ふとテーブルの左側を見ると、添えられた左手の下にはスマートフォンが置かれていた。


「あの、そのスマホって……」


「あー、これ?」


「切符だよ……」


声を少し低くして男はそう答えると、クロウに画面を見せてきた。

それはよく見ると、メールの文章画面だった。


「クロウと接触、サングラスに付け髭をしている。彼とのひと時が終わり次第、射殺する」


「……君のために用意した、黄泉の切符」


嫌な予感は見事的中。普通にばれていた。

とりあえず、脱出手段としてテーブルをちゃぶ台返しして逃走。

店からは警報が鳴り響く――。


キャットから教わった生き抜く為の心得である「その一:誰も信じるな」という基礎も出来ていないただのバカなんだな俺は、と自分に説教しながら息を切らして走り抜ける。

そんな反省をしながら逃げる彼に容赦なく、男がラートフォンで銃撃を仕掛ける。

店内には銃声が数回に渡って鳴り響き、クロウは窓ガラスを割って店から脱出した。


だが、銃弾は執拗に追尾してくる。


「なんだ、こりゃ!?普通の銃じゃねーぞ!!」


男はニヤつきながらクロウの動揺を見て答える。


「追尾アブリータ、それが俺の専用モードなんだよ〜」


いつの間にか男の一人称が俺に変わり、本性を剥き出しにしている。

障害物を利用して弾を避けるが、男は次々と銃撃を仕掛ける。


――そして、銃弾は遂にクロウの右肩と左足を貫いた。


「ぐわああああああああああ」


「痛え、痛え、痛え、痛え、痛え、痛え、痛え、痛え、痛え、痛えよおおおおおおお」


もがき苦しみ、激痛を走らせながら叫び続けるクロウを見て、

男は楽しそうな顔をしながら鬼畜な言葉を浴びせてくる。


「痛い?そりゃ撃たれたから痛いし、今の君うちの碧波曰く気持ちよさそうだよぉ〜」


「ねえねえ、次で楽にしてあげるからどこ撃たれて死にたい?お腹?頭?それとも……」


「心臓かなあああああああああああああああああああ!?」


『狂ってる、こいつは……』

気づいたところで時既に遅し。流血していないのが不思議だが、

こんなにあっけなく、死ぬのかと生存フラグを一応立てておくけど撃たれた所はマジで痛い。

そして、ちょっと期待をよせつつも助けが来る気配もなく市民はみんな逃走済み。

これはマジでやばい、死亡フラグには打ち勝てない。


「あーあ、レッスン復習しとけばよかったな」


小声で言うそのセリフはせめて遺言になるのだろうか。

クロウの脳裏に浮かんだことはそれぐらいだった。


――次の瞬間、銃声が街中に響き渡る――









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