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エモーション データ  作者: 微風シオン
シャーレット編:楽と怒りの章
3/19

第3話 8年後の出会い

 ユートピアに入ってから八年の月日が流れた……

反感情規制組織ユートピアは

世間からは非国民マーゼを超えたテロリスト呼ばわりされている。

でも、こんなクロウ達を崇拝する人達も少なからず居る。

それはこの法律をおかしいと思っている人がいる証拠だ。


 このおかしいディストピアと化してしまった国は日々、感情規制に対する抜かりがない

政府もこの八年間、この法律を見直すといったことをしなかった。

隠れながら政府の情報を集めながらの日々、クロウとキャットはニ人で今日も活動している。

具体的にどんな活動をするのか、それは崇拝している人たちと協力して政府を探ることだ。


「――クロウさんへ通達します」


みんな彼らへの情報提供をしてくれている。

この八年の間に分かったことは「法律はアライと呼ばれる人工知能」が管理しているということ

アライは様々な情報機器端末に潜んでいて、欺くことは難しいと言われている。

だが、キャットがクロウに教えた「二重感情」を使えば、アライを欺くことは出来る。


そして、クロウは内心である疑問を抱く。

キャットは「アライは哀しみの感情が読み取れない」と言っていたが、なぜ哀しみの感情が読み取れないことを知ってたんだ?


「あいつは最近、俺とは別々に行動することが多い。

出会った時から不思議なやつだけど、俺はあいつの事を信じているから大丈夫だろう」


その時はそう思った――。


だがある日、キャットが帰ってこない日が続いていたことに気づいた。

何かトラブルに巻き込まれているんじゃないかと、街に探しに出る。


走り回って探した、でも見つからなかった。

人に聞くこともできない、頼ることも許されないんだ。この国は

もし、人を助けたらそれは「優しさ」という感情を出してしまうから……


そして、クロウは街中で八年前の禁忌を再び犯した。


「なんで、この国はこんなに腐ってるんだよ‼︎」

「誰がどう考えてもおかしいのに‼︎」


もう冷静な判断が出来なくなっていた。

両親を亡くして、妹からも逃げて、キャットにも見限られたと思ったからだ。


「大丈夫?」


冷静さを欠いていた俺に紫眼で黒髪の一人の女性が声をかけてきた。

声をかけたらどうなるかぐらい分かっているはずだろうに。


「ここに居たら政府の奴らが来るから向こうに行こうか」


クロウは彼女につられるがままに狭い路地裏まで走った。


「なんで、俺なんか助けてくれたんですか?」


「なんでって、人が困ってたら助けるのは当たり前でしょ?」


そんなの常識じゃ犯罪扱いになるのがこの国だ。

人を助けてしまった以上はこの人もいずれ捕まるんだろうなとクロウは少し呆れた顔で口を開く。


「あの……優しいんですね」


「それが私が持ってる唯一の取り柄っていうか、昔からほっとけないんだよね」

「それに君って感情規制法は廃止されるべきだって思ってるんだよね?」


「私がもし、君と同じ立場に居たら堂々と街中で怒り狂うなんて真似できないよ」


この人みたいな人がまだこの国に居たのかと思った。

法律が可決された後でもこの人は前向きに困っている人を助けられる。


自分の事しか見えてなかった自分が恥ずかしい……


「そういえば、まだ名前名乗ってなかったね」

「私はキャメロン・リティック、君は?」


「俺はクロ…レヴィ・ディアスです」


なんでだろう、この人は信用できる。

心の底からクロウはそう思った、そう考えたらコードネームで名乗るのは失礼な気がした。

久々に本名で名乗った気がする。

崇拝してる人たちの前では「クロウ」で統一していたからだ。


互いに自己紹介した後に、キャメロンは鋭い質問を彼に投げかけた。


「ん〜?その顔は誰かの帰りを待っている顔だな〜?」


何で分かった!?というような顔をするクロウに対して、彼女は胸を撫で下ろす。


「図星みたいだね」


「隠さなくてもいいよ、彼女さんかなあ?」


「からかわないでくださいよ‼︎女なのは当たってますけど……」


「だからさっき必死になって探してたんだな、うんうん」


「何納得してるんですか…」


「別に恥ずかしいことじゃないよ、友達なんでしょ?その人」


「友達っていうか、恩人です」


「優しいんだね、その人」


「私もねー、昔親友が突然いなくなったから君の気持ちは分かるんだよ」


そんな話をしているうちに時間なんて忘れていた。

久しぶりに人と楽しく話せた気がする。



気がつくと、クロウはキャメロンとすっかり友達になっていた――。


そして、彼女はキャットを探す手掛かりとして一つの情報を差し出してきた。


「力になれるか分からないけど、取締役の1人がライムシティに居るって情報を掴んだの」


「え?」


彼女が教えてくれた情報。

それがユートピアの運命を加速させる事になるとはこの時、まだ知る由もなかった……。


















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