第1話 赤い法律と紫の国民
この国の人々はみんな笑わない。
この国の連中はみんな怒らない、泣くことも優しさもみんなしなくなった。
全ては八年前、ある法律が可決された時に始まった
西暦二千三十四年
平和そのものとまで言われ、国民達が幸せに暮らしていた国シャーレット
皆の日常と平和は保証されていると言っても過言ではない
当時、この国に住んでいた少年であるレヴィは十歳で妹が一人と両親がいた。
そして、その年は「感情規制法」と言われる法律が可決された年でもあった
レヴィはある週の日曜日に家族でショッピングに出かけた
車に乗って目的地に行く、街は無数に光っている。
外の人達と彼らは首に何かを巻いている。
移動中の車内では妹は眠っており、両親は何か話している様子だった。
内容は上手く聞き取れなかったが、レヴィは父が言ったこの言葉だけは覚えている。
「この前、この国デ……タ」
いったい何を言っていたのかは今でも不明のままだ
そんな話をしているうちに目的地にたどり着いた
レヴィは大きなショッピングモールにテンションが上がる。何故なら初めて来たからだ。
彼は今まで、両親と一緒にどこかへ出かけたという経験がなかった。
「見てよ、父さん母さん‼︎こんなでかいショッピング見たことない‼︎」
次の瞬間、光景が変わった……
周りの人達は彼を白い目で見続ける
そして、警報が辺りに鳴り響いた
「あの子、今笑ってたよ……」
「喜んでたよ……」
「おい、まずいぞ……」
「非国民だ……」
「あの子は非国民だーーーーー‼︎」
子供であるレヴィは何が起こったのか理解できなかった
「何だよ…マーゼって…」
そして、次々と警察もやってくる
気が付くと、彼は拘束されそうになっていた
警察は捕らえようとするが、両親がレヴィを庇った。
「待ってください‼︎うちの子はマーゼなんかじゃありません‼︎」
「私達の責任です、この子には今後感情を表に出さないように教育します‼︎
どうか、今回は見逃してください‼︎」
両親はレヴィを庇うのに必死だった。
そう、感情規制法というのはあらゆる感情を政府の許可なしに表に出してはいけない法律
つまり、政府に感情的になって庇った時点で両親もアウトだったのだ……
「お前たちの言いたいことはよく分かった、ではこうしよう」
政府の警察はそう言うとレヴィにスマートフォンを向けた
そして、電子音声が鳴り響く
「感情規制型情報機器端末、ラートフォン起動」
「対象者の測定を開始、レヴィ・ディアス。十歳」
「感情色の測定を開始……」
「パープル、非国民判定」
「対象者をロック、速やかに排除することを推奨します」
そう判定すると、スマートフォンは銃へと変形した。
彼は思っただろう。
『俺はもうここで死ぬのか、ショッピングモールの目の前で……』と
次の瞬間、銃声が鳴り響き、辺りは赤く染まった……
でもそれは、彼の血ではない。
両親の血液だ――。
二人はレヴィを庇って、前に出ればスマホの判定をごまかせると思ったんだろう
だが、さっきも言ったように人を庇う時に感情的になった時点でもうアウト
ごまかせるわけがない、欺けるわけがないのだ。
母は既に息絶えており、父は最期の力を振り絞ってレヴィに言った
「レヴィ、お前は逃げろ……」
「行きなさい……」
「絶対に逃げて生き延びろよ、この国で‼︎」
彼の中で政府に対する怒りが込み上げ、
その時は泣きながら逃げた、逃げて逃げて逃げまくった。
振り向かず、ただまっすぐ‼︎
レヴィは逃げている最中、茶髪でショートヘアの女性にぶつかった。
「っつーー」
「イタタタ」
「あれ?あなたって」
通報されて終わりか、そう思ったその時
「まあ、私もマーゼなんだけどね」
彼女は微かに涙を浮かべ、少し笑いながらそう言った
「生きたいなら私と一緒に来る?」
彼女はそう言うとレヴィに左手を差し出してくる。
レヴィには迷っている暇はなく、彼女の手を掴んで立ち上がった
「私はキャット、反感情規制組織ユートピアのリーダーよ」
これが、彼女との出会いだった