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掌編小説集3 (101話~150話)

トイレの怪

作者: 蹴沢缶九郎

夜、中年の男が公園のトイレにやってきた。あらためて見ると、やはり人気のない夜の公園のトイレは寂しく不気味である。トイレに入った男が便座に腰を下ろし、いざ用を足そうとしたその時、どこからか人の声が聞こえた気がした。


「・・・・れ。」


「ん? 何だ? 今誰かの声が聞こえた気がしたが、気のせいだろうか…。」


男はたいして気にも止めなかった。しかし、


「・・・くれ。」


と、それは気のせいではなく、今度ははっきりと男の耳にも聞こえたのだった。


「誰かが話しているな。隣の個室に入っていたのかな。」


どこからか聞こえてくる声は、男に語りかける様に話す。


「・・をくれ。」


「どうやら私に言っているようだ。すみません、隣にいらっしゃるんですか?」


男の問いかけには答えず、声は続ける。


「・みをくれ。」


「はい? 何ですか?」


相変わらず声は聞こえる。


「…かみをくれ。」


「紙ですか? 分かりました。」


男はトイレットペーパーを適当な長さでちぎると、「どうぞ」と、個室の下の隙間からペーパーを渡そうとした。しかし声は、


「その『かみ』じゃない…。こっちの『かみ』だぁーー!!」


と叫び、次の瞬間、突然男の座る便器の中から手が伸び、男の頭髪を掴み取ろうとした。だが、男はそれよりも早くトイレから伸びた腕を掴み、


「よし、今だ!!」


と、表に向かい合図を送った。男の合図を受けた仲間達はトイレに一斉になだれ込んでくると、トイレから伸びた腕に数本の注射器を突き刺し、血を抜き始めた。手は逃げようと暴れるが、(じき)に生気を失いぐったりとした。そんな様子を見ていた血液センターの所長である男は、


「どうせ人間の手ではないのだ。好きなだけ血を抜いてやれ。」


と、不敵な笑みを浮かべながら言った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 人間じゃない血液なんて採って何に使うんだよ
2016/04/05 08:24 退会済み
管理
[良い点] オチが予想の範囲内を大きく超えていました
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