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此処は何処?

異世界なんか行きたくなかった青年 第一話






「おいおい。目を開けたらそこは見知らぬ土地でしたなんて笑えねぇよ。」


そうぼやきながら俺は辺りを見回すが、視界に入ってくるのは360度木、木、木ばかりで、正直自分が今までに見た事が無い風景だ。ついでに地面が斜めに傾いている事により此処が山の中と言う可能性も出てくる。

帰り方も、此処が何処かも分からない。それプラス山の可能性あり。

俺の今の状況をちょっと現実逃避して可愛らしく言ったのなら迷子。現実を見つめて冷静に言ったのなら遭難だ。

正直俺の胸の中は、大きな不安と絶望でいっぱいだ。


此処で神を呪って泣き叫んでやろうと言う気持ちもあるが、それではいけないと自分を叱咤し、現状の打開策をテストで晩年平均点を、一夜漬けで獲得する脳をフル回転して考え始めた。


やはりまずは、状況の分析が大事だろう。

孫子も言っていたぞ? 彼れを知り己れを知らば、百戦して危うからず、とな。

では、さっそく己を知るとしよう……。


俺の今の状況、何処か分からない森の中で迷子=遭難。


俺の持ち物、殆ど無いペットボトルのお茶。思い出の落書き帳。交通安全のお守り。トランクス×2。


俺のモチベーション、最悪。


「……………どうしろと言うんじゃあぁぁ!! 無理だろ!? あきらかに戦う前から負けてるよこの状況!!」 


俺は涙を流しながらその場で地団太を踏んだ。此処まで完璧な敗北感を味わったのは久しぶりだ。昔の彼女から髪の毛がタワシみたいだから別れようと、言われた時みたいな敗北感だ。

しかし深呼吸して冷静に考えると、あの時と違い今回負けてしまったら命に関わる大問題なのだ。心の傷は時間が経てば、かさぶた程度まで治るが、命は失ったらそれで終わりだ。


「そうだ……。俺はまだ死ぬわけにはいかない。というかこんな所で死にたくない!」


俺は底辺まで落ち込んだ気持ちを無理やり持ち上げる為に、自分の頬を思いっきり叩いた。


口が切れた。


それでまたモチベーションが下がった。今日は厄日だ。細木数子に占ってもらったら間違いなく大殺界と言われるだろう。


「………兎も角、落ち着いて考えるか。確か山で遭難したときは……山頂を目指すんだったよな。」


俺は口から垂れた血を袖で拭い。過去に見たテレビの内容を思い出しながら現状の打開策を考えていく。

此処で下を目指して進むと、人里に出れればいいが、もし訳の分からない所に出てしまったら食料も水も無い自分は死んでしまう可能性が高くなる。それに対し山頂は一つしか無い。登りきってしまえば、もしかして登山道を見つけれるかもしれないし。運がよければ登山者に会えるかもしれない。もっとも今の自分の運の悪さでは登山者には会えないだろうが……。


「まあ、山頂目指すのが一番助かりそうなのが俺の考えだ。間違っているかも知れんが……賭けてみるか。」


キッと凛々しい表情で山頂があると思われる方向を睨みつけた俺は、ゆっくりとしかし力強く傾斜のある道を歩き始めた。


「そういえば……。」


歩きながら呟いた俺は空を見上げる。そこには眩い光を放つ太陽が輝いており、辺りを明るく照らしていた。


「もう少しで夜になりそうだったんだよな……此処に来る前まで…。」


太陽の眩しい光に目を細めながら俺は、また一つ新たな不安を発見した。


「まさか子午線は跨いでないよね? 此処は日本だよね?」


そして俺は、人生で一番答えを知りたい、それでいて知りたくない疑問を恐る恐る口にした。









まあ、想像つくと思うが、山登りは相当体力を使う。それが舗装されていない獣道なら尚更だ。故に俺は大粒の汗を流しながら、息も荒げにひたすら山頂を目指し歩き続けていた。だがそれなのに山頂へ着く気配は一向に無い。彼是一時間以上登り続けているのにだ。


「本格的にやばいかもな…。水はもう無いぞ。」


俺は喉の渇きを覚えながらも、如何する事も出来ない現状に段々と焦りを感じていた。なけなしのお茶は大分前に飲み干し、水分を摂取する方法は今の自分には無いのだ。


「木の根でも掘って噛むか? ある漫画の主人公がそれで、水分を摂取していたような気がするぞ。」


チラリと視線を木へと向ける。だが根っこを掘り起こすのに体力を消費しそうだし、そこまでしなくてもまだ大丈夫だろうという気持ちがあったので、その考えを却下。俺はともかく脚を動かす事だけに専念しようとした。


その時だった。俺の耳に水のはねる音がはっきりと聞こえたのだ。


だが、余りに突然で一瞬の出来事だったので、場所の特定が上手くできなかった。俺は先程まで呪ってやろうと思っていた神に今度は手の平を反して、もう一度音が聞こえますようにと祈りを捧げ始めた。

すると如何だろうか。水のはねる音がまた聞こえ、俺はついにその場所の方向を発見する事に成功したのだ。それだけでも喜ばしい出来事なのに、なんとその方向から人の声まで聞こえるではないか。


この瞬間俺は無事に家へ帰れたあかつきには、聖書と仏の像を買うと心に決めた。


「きたよきたよ〜。俺の時代! これで助かるぜ!!」


恐らく今の自分を鏡で見たら、気持ち悪いぐらいの笑顔だと自信を持って言える。それも声のする方向へ近づけば近づくほど気持ち悪くなる笑顔なのだ。また、それと比例して歩く速度も上がっていく。

このペースで行けば、もう直ぐ目的地に着くだろう。そう思うと口の両端が、更に吊り上げる。

それと近づいた所為か。声が女性のものと、男性とも女性ともとれない不思議な物の二つである事が分かった。ただ女性の方は「も〜、やめなさい。」とか「キャ、もう! 駄目でしょ。ほら濡れちゃうじゃない。あん!」とか非常にけしからん声をあげているのだ。その現場を想像するだけで鼻の下が伸びる。 


この瞬間俺は無事に家へ帰れたあかつきには、メッカに向かい頭を下げる事を心に決めた。


「いいぞ神よ! ここで最後の仕上げとしてポロリハプニングを俺にプレゼントしてくれ! そして乾いた俺の心を満たしてくれ!!」


俺は鼻息荒く、そう叫ぶと、アヴァロン(声のする方向)への道に立ちふさがる最後の壁(茂み)を勢い良く飛び越えた。




………で、俺の目に映ったのは背中に羽の生えた一人の美少女とロボットもビックリな二足歩行を実現した猫の姿だった。


「誰ニャ? お前?」


それもこの猫喋ったし……。


この瞬間俺は無事に家へ帰れたあかつきには、近くの神社の賽銭箱にゲーセンのコインを投げ入れる事を心に誓った。


主人公目線で書く小説は、はじめてなので可笑しな点もあるとおもいます。皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。

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