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―太陽の翼― 1

「ただいまより、卒業証書授与式を――」「あ~お~げば、と~とし――」「続きまして…ピー、ガッ、あれ……」「くすくす」「くそウノリが、折角の雰囲気が台無しじゃねーか」


 まぁ、シンミリしてる雰囲気にあれは酷いな。


「君達は義務教育を終え、これからは――」「これからも頑張って頂きたい――」「皆さんとも今日でお別れですね。高校に――」

「じゃな、《正義の味方》。もっと――」「大地~、ばいば~い」「データワールドで会えたら――」


 おう、またな~。


「正義の先輩♪」


 よぅ、葉子。


「先輩は卒業しちゃうんですね」


 まぁ、卒業したからな。


「あ~ぁ、もう先輩で遊べないんですね~」


 てめぇ、オレで遊んでたのかよ。


「痛い~、痛いですよ~。先輩《正義の味方》じゃないんですか~」


 まったく……卒業式ぐらいシンミリしたらどうだ?


「卒業式らしく、ですか?あ!じゃ、第二ボタンください」


 おう、……ほれ。


「わ、本当にくれた」


 まぁ、オレの事が好きな奴なんかいないしな。じゃな、葉子。


「あ……先輩、ジリ私リリリきリリですリリリリ――」


 え?


「ジリリリリリリリリリリリリリリリリ!」




「え?」


 ベッドの上で、上半身だけ起こした姿で狩場大地はふと気が付いた。さっきまでは中学校にいたはずなのだが、なぜかベッドの上にいる。

 少しの混乱を、

 ジリリリリリリリリリリリリリリリリリ!

 という目覚まし時計のけたたましい音が冷静に導いてくれる。

 大地は呆とした表情でしばらく、目覚まし時計見つめた。

 しばらくして、


「夢か」


 その呟いた一言で夢だったと認識し、その内容を思い出そうとして失敗した。そんなにも重要な夢じゃないな、と思いながらベッドから身を起こし、真新しいパリッとした制服に袖を通す。新しいと言っても普通の学生服であって、中学校との違いと言えば詰襟の校章くらいのものだった。

 公立鳴所(なるしょ)高等学校(こうとうがっこう)……通称、鳴高(なるこう)は、偏差値が高いわけでも低いわけでもなく、特に目標もなく大学を目指す中学生たちが行き着く場である。特に厳しくもない校風に、生徒の評判もそれなりに悪くなく(少しばかりは、いわゆる不良と呼ばれる生徒もいる)、いたって普通の高校なのである。

 特にこれといった目標もない大地にはぴったりと合った高校であり、それなりの受験勉強で合格。今日から高校生となる大地であった。


「おはよー」

「はい、おはようさん」


 二階の部屋から降り、洗面所で顔を洗った大地はキッチンで朝ごはんを食べる母親に挨拶をした。母は朝のニュースを横目にトーストをかじりながらの挨拶。少しパンの屑がテーブルに飛んだ。


『ママさん、テーブルに落ちたよ』


 そこに第三者の声がする。人間の物ではないスピーカーを通したような声は、テーブルに置かれた円筒状の物から聞こえてきた。それには電源ケーブルとネットに繋ぐケーブルが二本伸びていた。円筒状の物体は片側には四角い窓の様な穴が開いており、その底と天井には光を出す小さなライト。ゴタゴタとした内装はよく見れば配線であったり基盤であったりするが、照らし出された全ての光が交差する所には丸い球体の映像が立体に映し出されていた。

『開発コードSAKI054』

これを大地が手に入れた当時、この円筒状の装置に付けられていた名前である。

XODの世界と擬似的にリンクできるこの装置に映し出されている球体は、非戦闘状態のブルーだ。装置の底部分のカード挿入口にXODの登録やゲーム開始時に使用するIDカードを挿入すれば、自分のパートナーが立体表示され、話すことが出来る装置である。


「ありがと、ブルーちゃん」


 母はテーブルに落ちたパンの屑をヒョイと掴むとそのまま口へと運んだ。


「もう、母さんは……また勝手にブルーを呼び出して」


 テーブルの端には、大地の財布がプライバシーの欠片もなく大口をあけて放置されていた。犯人は疑う余地なく母親。しかし、お小遣いを貰っている大地の立場からは財布のプライバシーを主張する事は出来ないのであった。


「いいでしょ、暇な主婦には有難い玩具だわ」

「別にいいけどさ、普通に買ったら十万はするんだよ」


 現在の狩場家にあるそれは、試作品且つ貰い物なのでタダなのだが、その完成品『クロス・リンク』は現在立派な玩具として店頭に並んでいる。

デザインはもっとスマートになり、基盤などはちゃんと見えないように収められている。それなりに売れてはいるのだが、値段が値段なだけに望むものは多いが手が出せないのが現状だったりする。いわゆる大人の玩具、とも呼ばれていた。


「知ってるわよ、何回も聞きました。母さんはまだまだボケてはいませんよ。はい、さっさと食べる」

『大地、早く食べないと遅刻するよ』

「OK、ブルー。午後に会おうぜ」

『OK』


 大地はブルーの立体映像が消えるのを確認すると素早くカードを抜き取り財布に収める。それから席に着いて母親より薄くカットされたトーストに噛り付いた。



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