ゴキブリのうごきぶり!
例によってノープラン執筆です。ご容赦くださいませ。
朝、目が覚めたら衝撃的なモノを見てしまった。
それは、僕の日常を破壊する悪魔の化身「G」であった。
「……ん?」
カサコソ、カサコソと近くで何かの音がする。
あー、うっさいな。一体誰が何をしてるんだ。と、考え、そこではたと気づく。
ここは僕の部屋だ。当然、寝るときは僕以外には誰もいない。
家族の誰かが忍び込んできた?
ないない。そのために僕は、就寝するときに限り、部屋の扉をしっかりと施錠することにしているのだ。
というか……今さら気づいたのだが、これは人間が立てる音ではない。この小さく小刻みに動く感じ……生理的嫌悪を誘う、この気配。
――背筋が冷えた。
一気に目が覚める。音を立てずにベッドから上半身を起こし、周りの様子を窺う。相変わらずほとんど真っ暗な部屋。外もまだ暗く、陽は登っていない。
全身から冷や汗が噴出したような気分になったが、僕の体表は相変わらず乾いたままだった。クーラーとかいう文明の利器のせいで汗腺が死亡しているのだ。不健康な現代人の鑑である。
「……異物は排除する」
パチン、と部屋の電気を点ける。蛍光灯の強い光に一瞬網膜が焼かれるが、すぐに慣れる。
カサコソ、カサコソ。音は断続的だが、気配を探るには十分だ。部屋全体に注意を配りつつ、部屋の片隅に置いてあるスリッパを取って構える。
カサコソ。今、音がした。ここから近い。
「……まさか」
ベッドに両手をかけ、ちゃぶ台ひっくり返しの要領でひっくり返す。するとそこには、例の黒い奴が!
「だぁああああらっしゅあーッ!!」
スリッパを全力でGに振り下し、エクストリームアタック! しかし、その直後、黒いGがカサコソとスリッパの下から素早く這い出してくる。
「くそっ、逃がした!」
相変わらずGの動きぶりは恐ろしい。すぐさまもう一撃加えようとスリッパを構えるが、時すでに遅し。高速で移動するゴキブリは扉の隙間から部屋の外へと出て行ってしまった。
「ちっ、逃がした……」
本当は廊下まで追撃戦を行いたいところだが、それをすると僕が殺される。
誰に? もちろん家族全員にだ。
睡眠妨害は何にも勝る罪である。これは、家族のルールだ。
スリッパを裏返すと、ゴキブリの足の一本だけがへばりついていた。足をもぎ取られてもまだあの速度で動けるとは、さすがゴキブリである。
「さて、寝るか……」
スリッパの洗浄と消毒を済ませると、急に眠気に襲われ、ベッドに逆戻りした。ちなみに、寝る直前に時計を見ると、午前四時十二分だった。そりゃ眠たいわ。
そしてこれが、僕と、彼女の、最初の出会いだった。
数時間後、再び目を覚ました僕は、人生ではじめて、首がもぎ取られるほどの衝撃を受けることになる。
筆が乗れば続きます。