ep.30
お待たせしました。
GW思いっきりサボったLUCCです。
すみません。
迷宮
それは謎多き建造物のことを指す。
人工物なのか、はたまた自然にできたのか、それすらも解明されていない。
いくつもの説は説かれど、それらの1つとして証明できたものはない。
そして迷宮の一番の謎と言われているのが、『迷宮の魔物はどこから来て、どこに行くのか』である。
迷宮には様々な魔物が徘徊している。
力強い大きな魔物や素早い小さな魔物。
姿形や種類に差はあれど共通していえることは、なぜそこにいるのか。
迷宮が発見されてから多くの冒険者たちが迷宮へと足を運び魔物を倒していった。
迷宮が発見された当初は魔物の住処なのだろうと推測され、あまり気にする者はいなかった。
しかし、何度も何度も魔物を倒していくと嫌でも気づく。
迷宮にいる魔物の数が減っていない、ということに。
迷宮内には屋外であると錯覚してしまうくらい広く、解放的かつ自然あふれるフロアも存在する。
だが、そんなフロアでも魔物が繁殖したような痕跡は見られなかった。
無機質が広がる洞窟のようなフロアではなおさらだろう。
これとセットで謎とされているのが、死んだ魔物はどこに行くのか、である。
通常、迷宮の外で魔物、魔獣、動物に限らず生き物を殺すとその死体は残る。
しかし迷宮で魔物を殺すと、死体から淡い光を放ちながら消えてしまうのだ。
残るのは魔石とその魔物の種類ごとに違うドロップ品のみ。
ドロップ品は魔物の見た目から普通にはぎ取ったら採取できないだろうというものまで落とすので余計に混乱を極めている。
この現象は迷宮によるものなのか、迷宮にいる魔物だからなのかを検証しようとした学者がいた。
彼は迷宮の魔物を迷宮の外におびき出そうと試みたが、なぜか迷宮に入ってすぐの部屋に入ろうとしなかったのだ。
何度試しても、他の個体で試しても同じ結果で終わった。
彼の検証は失敗に終わったが得るものもあったようだ。
まず、魔物たちは自分のいる階層から移動できない。
そして、スタート地点には魔物が侵入しないということが判明したのだ。
そんなスタート地点にいるのは修二、クーシィ、ルンである。
彼らはいつまでもここに居たってしょうがないと目の前にある通路に足を進めた。
この迷宮の1階層は『石の人工的な通路』で地面、壁、天井に凹凸はなくまさに立体迷路と言った感じだ。
「う~ん、迷いそうだな。まあマッピングしてるから大丈夫だろうが」
修二はとくに紙やペンを持っている訳では無い。
当然のごとく魔法によるマッピングである。
自分の歩いた経路を頭に記憶、もしくはアイテムポーチ内の紙などに記録することが出来る魔法だ。
しばらく歩き続けていると前から魔物が1匹現れた。
エンカウントのSEは鳴らなかったが相手はどうやらすでに戦闘モードのようだ。
現れた魔物はお馴染みのゴブリンである。
緑色の体、右手に自身の腕の長さほどの棍棒、顔はお世辞にも良いとは言えない。
そんなテンプレートからコピペしたようなゴブリンだがテンプレとは違うところがあった。
それは着ている服だ。
なんとズボンはジーパンのような生地のものを履き、上は白地のTシャツに達筆な黒文字で『普通が一番』と書かれたものを着ている。
ちなみに靴は履いていない。下着は…………ご想像にお任せする。
「………………意味分からん」
「…ミスマッチング」
「きゅい? (・ω・? 」
さすがにこの光景には修二も一瞬唖然としてしまったがゴブリンがこちらに敵意を持って向かってくるのを見て正気に戻った。
「とりあえずアレは置いておくか。……よし、ルン!君に決めたっ!」
「きゅーーい \(`・ω・´ \) 」
某永遠の10歳の少年のような掛け声でルンを送り出す修二。
なぜか意図が通じたルンがゴブリンへと突っ込んでいく。
人が走る速さよりも速く跳んで、いや飛んでいきあっという間にゴブリンとの間を詰める。
ルンの攻撃。『たいあたり』。
目に見えない速度での体当たりを食らったゴブリンはトラックにでも跳ねられたかのように吹き飛び天井にぶつかる。
ドサッという音と共に落ちてきたゴブリンはそのまま動くことなく光となった。
ゴブリンを倒したルンは満足げに修二の元へ戻る。
「きゅきゅい ヽ(´ω`。)ノ 」
「おー、良くやった、えらいぞ」
「…いいこ、いいこ」
ルンの脅威の戦闘力に二人とも驚くことなく、ゴブリンを倒してきたルンを褒める。
ほんわか、のんびりとした空気のまま修二たちは先へと進んでいく。
時々行き止まりにぶつかりながらも着々と1階層のマップを埋めているとまた1匹のゴブリンに出くわした。
服装はやはり同じ現代風。
ただし書かれている文字は『孤独』。
正面に大きく描かれている。わざわざルビまでふって。
「……少しグサッときた」
修二が何故グサッときたのかは察してあげてください。
地味に精神攻撃を受けた修二の横からクーシィが一歩前に出る。
「…今度は私の番」
そういってゴブリンの正面に来ると右手を上に上げた。
ゴブリンがこちらに迫ってきて距離が10m程になった時、その右手を振り下ろした。
振り下ろした手からは斬撃が飛ぶ。
何も考えずただ突っ込んできたゴブリンにそれを避けることが出来る筈もなく、ゴブリンは斬撃に切り裂かれ光となった。
「…楽勝」
修二ほどじゃないにしてもそこいらにいる冒険者よりも断然強いクーシィには余裕の相手である。
魔石を回収し、また歩を進める。
大分マップが埋まってきたなという頃、宝箱がポツンと置かれている部屋を発見した。
宝箱があること以外何の変哲もない部屋。
仕掛けがあるとか、何かしかの模様や絵が描かれている訳でもない。
本当にただ部屋の中央に宝箱が置かれているだけだ。
「おお、宝箱発見だ」
「…ただし中身が宝だとは言っていない」
「ああそうか、魔物である可能性や中身があってもゴミかもしれないな」
変わり映えのない通路のマッピングに飽きてきた修二は思わず宝箱の発見にテンションを上げたが、クーシィの発言に冷静さを取り戻したようだ。
注意深く宝箱を見る。…何も変化は起きないし、おかしな所も見つからない。
宝箱の周辺も見てみるが異常は見られない。
「罠はなさそうだから平気だろう。さて、何が出るかな。…ごまだれ~」
伝説なSEと共に宝箱を開封。
中に入っているものを覗き見る。
中に入っていたのは白い布きれ。
まさかと呟きながら修二が箱から取り出すと、それはやはりゴブリンたちが着ていたようなTシャツであった。
書かれている文字は『これじゃない感』。
「せやな……。俺が期待してたのは本当にこれじゃねぇよ。…返品っ」
修二は取り出したTシャツを畳まずそのまま箱の中に投げ入れ、ふたを閉じた。
そんなことがあってからまた暫く通路の探索が続いた。
当然ゴブリンにも出会う。
『暇人』『健康重視』『焼肉定食』『俺の屍は埋めて行け』『真夏の日差しの強さ』『俺は人間をやめるぞ』 etc
統一性の欠片もない文字が修二たちを襲うが、チートの前には無力。
一撃のもとに屠られていく。
そしてついに修二たちは大きな扉の前にたどり着いた。
いかにもといった装飾のされた扉はこの先にボス的な存在がいることを暗示している。
修二がこの扉に手を置き少し力を入れると扉は自動で開いていく。
扉が開き切り、中の様子が見える。
そこには5体の影があった。
部屋の中へと進んでいく修二。
入る前は薄暗かった部屋も段々と明るくなってくる。
そして目にしたのは今まで(一方的に)戦ってきたゴブリンとは全く違うものだった。
お読みいただきありがとうございます。
ルンの顔文字について、「違う顔文字の方がいい」という方がおりましたら感想にてその顔文字を送ってください。参考にさせていただきます。
そして、やっと投稿できたんですが5月、6月は大変忙しく、次の投稿は早くても6月末になりそうです。
こんな月1ですら投稿できないような小説に評価、ブクマしていただきありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。




