ep.27
冬休みに入ったのでテンション上がって書きました。
さぁ答え合わせです。合っていた人はいますかな?
~??? side~
数本の蝋燭が狭い部屋を照らす。
ゆらゆらと揺れる光に照らされているのは豪華な服を着た中年の男とこれまた豪華なドレスを纏った少女。
「そうか、勇者殿は協力してくれると」
「はい。魔物の大侵攻と魔王の話をしたらぜひ協力したいと」
魔物の大侵攻とは、ある種族が別の種族の領土に侵略を開始すると同時に侵略した種族の所にある魔巣から魔物がたくさん溢れ出してくるのだ。
過去に一度その大侵攻でほろんだ国があった。
……大侵攻を起こしたのは一度だけではないが。
「そんなに積極的なのか。………さては勇者殿に何かしたのではないのか」
疑問のようであるがほとんど確信している言葉に少女は怪しく微笑む。
「ふふふ、勇者様に対して直接何かするわけ無いではありませんか」
半分否定、半分肯定。
「そうかそうか。直接は何もしていないか…。では間接的には何をしたのだ?」
「秘密ですわ。…ただ勇者様はすごく純粋とだけ言っておきましょう」
「純粋、か…。……ふっ、お前もだいぶ母に似てきたな」
「あら?それは褒めていますの?」
「もちろん褒めているとも、だがまだまだ可愛いくらいだ。昔はあいつもお前のように可愛げがあったのにな………」
「ふふっ、そんなこと言ってよろしいですの?お母様に怒られますわよ」
「大丈夫だ、バレはしない」
「では私から言っておきましょう」
「!?、そ、それだけはやめてくれ」
「どうしましょうかな~………ふふっ、冗談ですよ半分。残り半分は言う意味がないってことですが」
「それはどういう―――」
中年の男の言葉を遮るように少女の後ろにあった扉が音を立ててゆっくりと開いていた。
その奥には今の会話を聞いていたであろう、般若が佇んでいた。
般若が少女と入れ替わりで部屋に入るとゆっくりと扉が閉ざされた。
バタンッ
出口は般若の後ろしかない。この部屋には他に扉も窓もない。
男の退路は断たれた。
男の断末魔が部屋中に響いた。幸いなのはこの部屋が他の部屋に比べて防音性が高い事だろう。
それなのに部屋の外で会話を聞き取る般若っていったい…………。
南無
~side out~
勇者の歓迎祭で大きく盛り上がりを見せる王都。
右を見ても左を見ても楽しそうに笑いあっている人たちがいる。
しかしそんな賑やかな雰囲気が届いていない場所があった。
修二のいる路上付近だ。
修二が出している店付近にはそれなりに人がいる。路上という道の途中なのだから通る人がいるのは当たり前だ。
しかしそんな人たちは皆微妙な顔をしている。
道の向こうから歩いてきた人が修二の出している商品を見るとすぐに表情が怪しげなものを見る時の顔に変わる。
この祭りでは一般参加ありのため色々な商品があり、その中によく分からないものがあったりすることは良くあることだ。
しかしここまで怪しく、それでいて値段が高いものはそうそうない。
〔明かりの点かないランプ〕15万IL(15万円)
〔どこででもドア〕5万IL(5万円)
〔逆回りの時計〕7万IL(7万円)
〔水が入らない水筒〕25万IL(25万円)
〔幸せの白い粉〕50万IL(50万円)
この中の半分くらいはほとんどの人が一度は目にしたことのある物である。
だからこそ、その値段はおかしいと思っているのだ。
それに名前を見る限りただの不良品にしか考えられない。
と周りが怪しみ、近づくのをためらっている中、一人の男が修二の店の前に来た。
「すみません。これらはなんでこんなに高いんですか?」
よくぞ聞いたーーー!
gj!!
とでも言いたげに周りの野次馬が親指を男に向けてたてていた。
フードを被って怪しい物を売るやつに声を掛けるということはそれだけすごい事なのだろう。
「そりゃぁ、それだけすごいものってことですよ」
「すごい…とは具体的にどうすごいのですか?」
要領の得ない答えに少しムッとしながらも質問を続ける。
「あ~、買ってくれたら説明します。若干ハズレもありますが性能は保証しますよ」
さすがにイラッときたのか怒鳴り声を上げる。
「そんなの詐欺だと言っているようなものじゃないか!売る気があるのか!まったく」
呆れて去っていく男。
これを見ていた野次馬もどんどん散っていった。
その後昼を過ぎても客は一人も来なかった。
ちなみにクーシィも来なかった。おそらく祭りを満喫しているのだろう。
修二が「今日はもう誰も来ないかな」と諦めているとき、近くでワイワイ盛り上がっている若者三人組がいた。おそらく恰好からして冒険者なのだろう。
「お、おい、マジでかよ」
「言ったろ、罰ゲームあるって。それに乗ってきたろ?」
「そうそう、大体賭けに負けたお前が悪い」
「うっ………わ、分かったよ。……ああ、オレの財布が軽くなる…」
「この前依頼で儲けたから平気だろ。はよ行け」
どうやら罰ゲームで修二の店のものを買わされるようだ。
何とも失礼な、そしてこんな高い物を罰ゲームで買わせるなんて何てえげつない。
「はぁ~、じゃあせっかく買うならまだまともそうなランプを買います」
何を基準にまともと判断したのかは本人にもきっと分からない。
渋々と財布から出した15万ILを修二に渡す。
「お買い上げありがとうございます。それでは商品の説明をします」
若者の、どうせ大したものじゃないだろうという視線を無視して説明を始める。
「え~と、この商品はランプの見た目をしていますが火が付きません。なのでこれを光源とすることはできません。しかし、実はこれ魔道具でして所持している人に暗視効果を持たせます。つまりこれさえあればどんな暗闇でも問題ないということです。使い方は正面に付いているスイッチを右にひねるだけ。動力源として魔力を使いますのでなくなったら底の所にある取り出し口から魔石を取り出して交換してください。一度の交換で3カ月はもつ仕様になっています。……何か質問はありますか?」
初め、ああやっぱりかと思っていた若者は今は口をポカンと開けて呆然としている。
魔力を動力源としたランプやライトがないわけではない。しかしそれは純粋に魔力で発光するというものであるし、燃費も悪い。
良くて一週間に一回、悪くて一日に一回は魔石を交換しなくてはいけないくらい燃費が悪い。
そう考えるとこのランプがどれだけ規格外か使っていなくてもよく分かる。
「す、すげえぇぇぇぇぇぇぇ!!ま、マジで使えんの?マジで?」
「マジですよマジ」
「うをぉおおお!……………………今すぐ試してくる」
「え?、ちょ、ま、待てよー!」
「お、おい何処行くんだよー!」
興奮から急に冷静になったかと思えばいきなり走り出した。
何処に向かうのかはわからないがきっと暗いところだろう。
その若者を追うように仲間の2人も走り出す。
これだけ騒いで注目されないはずがない。
修二の店に残った品を遠くから見る野次馬が増えた。
しかしまだ踏ん切りがつかないのか買いに来る者はいない。
暫くその状態が続いたがついに客が現れた。
その者は意外なことに周りよし少し身綺麗な服を着た中年の女性であった。
服装から金を持っていることがよく分かる。
「ではこの時計をいただこうかしら」
時計は手のひらサイズでベルトも無ければチェーンもない。
針の根本の下に数字があるのと、上のとこにスイッチのような突起物があるくらいで特徴のないただの時計である。
「お、当たりを引きましたね。…お買い上げありがとうございます。この時計は少々特殊でして、普通の時計として使用することはできません。これは使用者の時を戻す、つまり若返らせることが出来るのです。使い方はまず上のスイッチの所を左右に回して中心にある数字を変えます。その数字が若返らせる年数で、最高で10年若返らせることが出来ます。何年若返らせるか決まったらスイッチを押し込んで下さい。年数分の日にちを使ってゆっくりと若返っていきます。急激に体が変化すると負担がかかりますからこのようになっています。合計で10年分若返ったらその時計は消えてなくなります。使い捨てなので気を付けてください。……質問はありますか?」
「あ、ありませんわ。どうもありがとう」
説明の途中から時計をガン見して目を逸らさなかった女性。
返答もどこか上の空で返し、すぐに来た道へと戻っていった。
その女性を、……というより持っている時計をギラギラとした目で追っていた野次馬の女性群。
中年の女性が見えなくなると、買えばよかったと後悔して項垂れる者が多数。
しかし一部の者諦めきれず、まだ持っているんじゃないのかと修二を問い詰めている。
…先ほどまで不気味がって近づきすらしなかったのに………恐ろしいものである。
もう持っていないと何とか納得してもらうと、女性群は、ちっ使えんやつめ、と吐き捨てて野次馬へと戻っていく。…………本当に恐ろしい。
その後は修二の商品のすごいさに気が付いた客がドンドン押し寄せ、品を掛けた勝負に勝ったものが買っていった。
とは言っても値段が値段なので簡単に買える者は限られていたが。
〔どこででもドア〕
文字通りどこででも設置が出来るドア。普段はタブレットくらいの大きさだがドアノブをカチッと押すと一般的なドアの大きさになる。設置する場所に枠があればその大きさに自動調節される。
付属の鍵でこのドア以外のドアを閉めると鍵にリンクが登録され、その鍵でこのドアを開けるとリンクしたドアにつながる。
某猫型ロボットのようにどこにでも行ける訳では無いが転移技術の発展していないこの世界では十分にチート性能である。
〔水の入らない水筒〕
穴が開いている訳では無い。しかし水を入れてもすぐに出てきてしまう。何故なら常に水筒の中には水が入っているからだ。
所持者の魔力を微量吸い取り水を生み出す作りになっている。
吸い取る魔力は魔術とは無縁の脳筋ですら辛いとは感じない量で、高効率、低燃費である。
最後まで残ったのは白い粉であった。
値段が高いというのもあるが危ないという考えもあった。
この世界にも中毒性のある薬は存在する。
その薬を規制する法律も教育もあるため、いかにもな粉に手を出すのは気が引けていたのだ。
しかしこんな堂々と売っているはずがない、と使い道も分からないのに買った者がいた。
買った直後、小瓶に入れられた白い粉を見ながら不安顔になる。
「あの、これ大丈夫ですよね?ヤバい薬とかじゃないですよね」
「ああ、全然平気ですよ。それエリクサーを粉末状にしたものなんで」
「なんだ、なら大丈b―――――――え?」
「「「「「ええーーーーーー!?!?!?!?」」」」」
多くの人の心が一つになった瞬間だった。
エリクサーは超万能薬でどんな怪我、病気でも治しちゃうすごいやつ。
四肢の欠損も量が必要になるが治すことが出来る。
貴重な材料を使うことに加え、極僅かの薬師を極めたものだけがコンマ数パーセントの確率で作ることが出来るものであるため希少価値がものすごく高い。
昔は国宝にしている国があったくらいだ。
そのような物がなんでこんなところに、と驚き顔で白い粉を見ていた野次馬たちが修二を見ると、そこには先ほどまでいた修二が消えていた。
ただ一つ、「店じまいです」と書かれた紙を残して。
お読みいただきありがとうございます。
予想が当たったという人も意外といるかもしれませんね。
作者は発想力が乏しいですからww
今回は比較的早かったですが次回は分かりません。
期待しないでお待ちください。




